ホンダワラの実は食えるのだろうか?

 Ashifa Kassam 記者による2021-4-9記事「The rice of the sea: how a tiny grain could change the way humanity eats」。
   アンゲル・レオンはカディス湾の近くで育った。海で泳ぐと、海底にはマコモが密生しているのだった。
 数十年後、レオンはスペインで知られたシーフードレストランのシェフになっていた。

 彼は、マコモの実を食材にできないか、研究所に調べてもらった。すると、コメより蛋白質が50%豊富で、育つためには真水も肥料も不要であり、二酸化炭素の吸収に関しては熱帯雨林よりも35倍も高速であると判明した。
 だったら、これこそが、スーパー・フードではないか。

 マコモの全体を食べるわけではない。マコモには実がなるのである。ごく小さい粒だが、それを大量に集めるのだ。その実が、栄養豊富なのである。

 カリフォルニア湾に面したメキシコの原住民「セリ」族が、マコモの実を食べていた。それが、1973年に発行された雑誌『サイエンス』には紹介されている。

 レオンは、カデス湾の海中で育てられる多年生の海草を探した。
 カデス大学や地域行政府の協力も得て、塩水湿地を三分の一ヘクタール借りて、実験畑とした。マリン・ガーデンと称する。

 植えて18ヶ月にして、実の収穫ができるようになった。
 レオンは、この素材を、粉にしてパンに焼いたり、パスタにしたり、はたまた香料に浸してライスの代用とする。
 鞘ごと食べればライス風になる。鞘を取り除けば、もうそれが海のものだとは誰も分らない。

 海底のうち海草が生い茂っている面積は0.2%しかない。にもかかわらず、海草は、海のカーボンの10%を吸収している。

 実験でわかってきたこと。ポテンシャルとして、1ヘクタールのマリンガーデンからは、3.5トンの食べられる実を毎年収穫できそうである。

 これは陸上の水田とくらべたら三分の一の反収でしかないが、海の畑には肥料も何も要らないというところがポイントだ。

 彼らは次の段階の実験を5ヘクタールの塩水性湿地で、やってみるつもりだ。
 水温や塩分濃度と、収量との相関を掴みたい。

 ※働かなくても食える方法を、誰も利用しない塩水湿地に求めた人物が、スペインにいたとは、頼もしい限りじゃないか。技法が確立されれば、いずれは、サハラ砂漠沿岸部や、アラビア半島沿岸部を、一大食料生産基地になし得よう。



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