もしウクライナ戦域で本格戦争が始まれば、南シナ海でも米支戦争になる可能性が高い。しかし米イラン戦争は起きないだろう。

 プーチン老人は民衆に飴をしゃぶらせるかわりに、また戦争を起こして、それによって人心を一本化させる(反政府心理を抑圧する)道を選択しつつあるように見える。

 今の米政府はアジアよりも欧州重視だから、この戦争を中共は好機と見るはず。南シナ海で一層の権益域拡張行動を始めるだろう。

 いずれの事態が起こっても、東京五輪への不参加国がますます増えるはずだ。北京五輪もなくなるだろう。

 次。
 ストラテジーペイジの2021-4-10記事。
    戦場上空通信ノード=BACNは、航空機に搭載した無線中継装置。米空軍は36億ドルもこれに突っ込んでいる。
 2020年前半、アフガンでそれを積んだ1機(E-11A)がクラッシュランディングで喪われてしまったので、米議会は代替機の予算をつけてくれた。

 ※尖閣でUAVをフルに作戦させたくば、空中無線中継機も充実させないとね。下手な買い物をしてしまったグロホの偵察器材はおろしてしまって、国内開発の無線中継機(日本版BACN)を積んだらよい。対AAM自衛用の、めくらましレーザー銃もね。出力は小さくてかまわない。

 現用のE-11Aの外見だが、これは双発のビジネスジェットを転用している。今のところは、「BD700」が用いられている。機体重量44トン。
 中に積んでいる器材がすごい。軍用通信衛星と同じ通信環境を提供できるのだ。

 アフガンはとにかく山地なので、地上部隊の無線の通じが悪くなってしまう。どうしても頭上(上空)に中継局が必要なのである。

 E-11Aが常に上空にあることによって、インターネットとほぼ変わらない通信を、谷底の末端歩兵部隊が、他の陸上ユニットや、CASユニットとの間で維持可能になるのである。

 いま米軍が運用しているBACN機は6機。うち3機がE-11Aで、3機はEQ-4B(グローバルホークベース)である。
 1日24時間、週7日、とぎれなく、必ず1機以上のBACN機はアフガン上空を飛んでいなくてはならない。そのくらい必須の戦場インフラである。

 対空連絡員(エアーコントローラー、無線火力誘導員)は、この飛行機を通じてCASを要請する。

 空軍が改良しようとしているBACNは、C-130を母機にする。装置はコンテナパレット化されており、地上でその調整をすませて、パレットをC-130に積み込んでやる。あとは全自動。そのC-130が離陸しさえすれば、もう、空中無線中継所としてフルに機能してくれるのだ。オペレーターが同乗する必要もない。通信ノードの半無人化だ。

 BACNのそもそもの開発は2001以降にスタートした。すなわちアフガン介入直後だった。
 2005にさいしょの試作機がアフガンに持ち込まれた。
 2008に、最初の実用「E-11A」が作戦飛行開始。翌年、UAVバージョンもできた。搭載している器材は、まったく同じだという。
 2011には、専用部隊として確立された。

 2008年には、1年の98%の時間、アフガン上空でBACNが稼動した。

 衛星の通信回線には限りがあり、アフガニスタン作戦が常態化するとすぐにパンクしてしまった。そこをBACN機がおぎなってくれた。

 E-11Aは1ソーティで連続10時間以上、滞空できる。EQ-4Bだと滞空時間はその2倍強なのでコストを抑制できる。
 巡航高度はどちらも1万2900m=4万フィートだ。

 BACNの器材は2003年時点では重量220ポンドにできたので、空中給油機のKC-135に追加搭載してもいいじゃないかと考えられた。
 このシステムを、臨時搭載式見通し圏外通信装置=ROBEと称す。最初の20セットは、単価90万ドルであった。改良型が2017年にできている。
 タンカーの巡航高度は2万フィート=6700mと低いが、「リンク16」の逓送に特に問題はないという。
 ただしアフガンの場合、山岳標高がやたら大きいので、それでは不足。

 ※フランスのテレビ局が2019に制作した、イランのザグロス山脈の東麓と西麓を毎年いったりきたりしている最後の遊牧者集団の旅に密着したドキュメントが、すばらしかった。なんで米国がイランとの戦争に踏み切れないか、あの映像だけで理解できてしまう。地皺のスケールが、水平にも垂直にも、アフガンの2倍の規模なのだ。しかも不毛地じゃなくて、植生も水もある。兵隊を何十万人投入したって、どうにもなるもんじゃない。もうひとつの感動。数千年続いた、徒歩のみの「遊牧」は、あと10年でノウハウがこの世から消える。遊牧も、山岳での25km~500kmくらいの距離の転地にはトラックをレンタルしたほうが早い時代なので、息子世代が、あとを継ぎたがらないのだ。



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