スエズ事故のメカニズムが判明。舵の故障でもパイロットの怠慢でもなかった。

 Brendan Crowley 記者による2021-4-9記事「Here’s the Minute-by-Minute Breakdown of the Ever Given’s Crash」。
   現地時間の3-23の深夜、『エバーギブン』はスエズ運河の南側に到着し、待機開始。
 早朝5時49分、エジプトさしまわしのタグボートが位置についた。

 座礁はそれから1時間53分後に起きる。

 数日前からエジプトの気象台は、「カマセーン」という乾燥熱風が襲来することを警告していた。これが来ると気温は急上昇し、砂で視界はなくなる。

 SCAのパイロット2名を運んできた小船がエバーギブンから離れたのが5時53分。
 この2名は、中間点のイスマイリアにて、別な2名と交替することになっていた。

 パイロットが乗り込んできてから7分後の午前6時ちょうど、コンボイが北上開始。先頭船はマーシャル諸島の船。二番手は香港の船。三番手がエバーギブン。以下、数隻。

 エバーギブンが運河に突入したのは7時18分。タグボートの随伴は無し。
 スエズでは、パイロットの同乗は規則で義務づけられていたが、タグボートの随伴は不可欠ではない。
  ※これからは、全長200m以上の船舶にはタグボート1~2隻の私費雇いが義務付けられるかもしれない。特にサイドスラスターがついていない貨物船の場合には。

 7時22分の時点で、エバーギブンはSCAが定めた上限速度8.6ノットを上回っていた。
 7時29分の時点で、13.7ノットだった。

 横からの強風が予見される場合、それに押し流されてしまわないように、船の脚をあらかじめ速くし、かつ、船首をじゃっかん風上方向へ向けておく。これはよくやること。パイロットの指示で、船長は加速したのである。

 風はアフリカ側から吹いてくる。西風である。だから船首をやや西に向けた。
 7時23分、13ノットで北上。

 しかし7時39分、運河の西岸に寄りすぎてしまったので、針路を中正に戻す。

 巨船が西の護岸に寄りすぎたことで、「吸い込み現象」が発生した。すなわち、岸と船体の間の水が押し上げられ、それが船の後方へ勢いよく流れ去ることにより、負圧が生まれ、それが船尾を岸へ吸い寄せる。「バンク・エフェクト」という。

 この吸引力により、船尾が時計回りに回転したことで、左舷船首も前からの水抵抗を受けることになって、行き脚のついている船体全体が時計回りのモーメントに支配され、制御不能になった。

 おそらく船長は舵を西に切って座礁を逃れようとしたはずだが、船尾と護岸との間に余地がなく、船尾の下も浅すぎて、舵は効かなかった。
 船尾の下に十分な量の水が存在しないと、プロペラも舵も、反作用を期待することはできないのである。

 7時42分、エバーギブンは座礁した。すなわちバルバスバウが東岸に突っ込んだ。1分後、船尾が西護岸に当たって止まった。

 次。
 Clea Skopeliti 記者による記事「Nine killed in China trying to destroy old explosives」。
   河北省で水曜日に爆発事故。炭坑で古い発破を処分しようとして。9人が死亡。

 貯蔵されていた古い鉱山用爆薬が、劣化して不安定になっていたので、廃棄しようとした。北京に本社がある炭坑にて。
  ※燃やして捨てようとしたのか。

 1月にも、山東省で、貯蔵されていた鉱山用発破薬が爆発して10人の鉱夫が死亡した。そのさい別の11人が地下坑道に閉じ込められ、2週間後に救出された。

 ※こうしたニュースで分ることは、対テロの取り締まりが厳しいはずの中共で、鉱山用爆薬の保管は相当にルーズらしいということ。だったら爆弾テロの余地は大アリじゃないか。アンホやダイナマイトを持ち出すまでもない。鉱業用の雷管やその点火用の導爆線に価値がある。それを可燃性物質に組み付ければ、素人がIEDを構成するためのネックはないのだ。



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