AIには「ガッカリするのは厭だ」という感情が無い。

 なぜ人は大量に録画した映画やドラマを次々と早回しで擬似視聴しようとするのか。ガッカリしたくないから。消費した時間に見合った満足感でないとガッカリするので。

 なぜ庶民は、有名人が大失敗したニュースが好きなのか。それを詳しく聞くことによってじぶんがガッカリする要素がひとつもないから。それが、詳しく聞く前から確実であるから。

 10年以上前。人を緊張させ疲れさせるタイプの他人が社会の中に増えてきた。そのようなタイプの外見の人は、じぶんをガッカリさせる存在であろう、と庶民は意識下で予想して身構えてしまうようになった。それが漫才コンビのツッコミ方であったならば、忌避したくなるかもしれない。ところが、案に相違して外見とは反対に、穏当な常識人でした、というオチがつくことが、あらかじめ約束されたとしたら? 人気出るよね。

 人は、ガッカリしたくない。格安携帯プロバイダが客を集めたければ、プロスペクト理論の出発点に戻ることだ。「いつでも抜けられます。コストゼロ、手間ゼロで」と分かったときに、客はやってくる。「契約に縛り付けられて馬鹿を見ることだけはない」という安心を消費者は欲している。今日の消費者は、通信会社やハードウェアメーカーからは、ガッカリさせられ続けているので。「契約の返品」約定が、必要なのだ。

 次。
 ストラテジーペイジの2021-4-12記事。
    露軍がシリアに、民間機に偽装した双発プロペラ機「DA-42」を持ち込んでいる。
 この飛行機はオーストリア設計だが、カナダ、ロシア、中共でもライセンス生産されている。2004年からある、4人乗り旅客機だ。

 エンジンは、ターボ・ディーゼル。燃料はジェット燃料でOK。

 巡航速度は326km/時。最高速力はその12%増し。
 航続距離は2250km。
 ペイロードが軽ければ12時間、重ければ6時間、滞空できる。
 上昇限度は5500m。副操縦士は必要ない。
 機首部にかなり広い荷物室がある。

 DA42はそもそも多発機パイロットの練習用に開発されたのだが、いろんな機器を搭載できるので、各国軍はそれを電子偵察や光学偵察、国境監視活動などに役立てている。

 イスラエル企業は2008年にこの機体を無人化し、400kgのペイロードで28時間飛行してくれる「ドミネーター2」を完成させた。国境を見張らせるのに適している。与圧の必要のない無人機だから、高度9400mを飛ばしてもよくなった。

 ロシアはDA42を無人化するとともにレーザー誘導ミサイルを搭載させた。2016年からこれまで55機が、露軍によって発注されている。ほとんどは練習用だという。単価は1000万ドル。

 FSBもDA42を2機、発注している。シリアに運び込まれたのは、このFSBバージョンだろう。飛行場の周囲を監視飛行し、ゲリラの接近を見張りたいのだろう。

 2016にできた中共軍バージョンは「CSA-003 スカウト」という。エリント機で、ついでに写真撮影もできる。滞空5時間可能。受信アンテナは機首内部にある。胴体下にはさまざまなセンサー・ポッドを吊るせる。

 次。
 CHAD GARLAND 記者による2021-4-12記事「Gone in 65 seconds: Pilot error led to $6 million loss in military drone crash」。
   2020-6-25発生の事故。空軍州兵が、コントロールパネルのレバーを間違えてリーパーをクラッシュさせてしまった。600万ドルの損害。

 フラップの出し入れを操作するレバーと、エンジンへの燃料供給をカットしてプロペラ回転を止める「コンディション・レバー」が、1インチの間隔で並んでおり、それを間違えてもうた。

 リーパーのフラップは、離陸のときは15度にする。レバーを中間のニュートラルにすると、フラップはゼロ度になる。

 「コンディション・レバー」は、前いっぱいに倒しているのがノーマル。中間点にすると燃料供給をカット。さらに手前いっぱいに引くとプロペラを停止させる。

 ふたつのレバーハンドルは色も同じ黒色で、視覚的に差異がなかった。
 コンディションレバーには、安全カバーがついていなかった。

 ※案外、人間工学が軽視されていたことに驚く。無人機操縦には士官でなく兵隊クラスも動員される時代なのであるから、視覚直観が可能なスイッチデザインでなくてはならない。フラップ操作レバーなら、フラップを横から観たときの形にしておくべきなのである。燃料カットレバーは水道栓に似せ、プロペラ停止スイッチは、そのレバーのすぐ上かすぐ下に、別個の赤ボタン・スイッチとして並べ、ふたつは蛍光カラーの太枠で囲んでおく。操作者に余計な頭を使わせるようではダメだ。1秒の遅れで、大事故になってしまうのだから。

 次。
 Caitlin O’Kane 記者による2021-4-10記事「Why wasn’t Prince Philip called king?」。
    プリンス・フィリップ=フィリップ殿下は、エリザベス2世がクウィーンとなる5年前の1947に婚姻した。しかし1957に先代王ジョージ6世が崩御してエリザベスが新君主となったとき、フィリップの称号が「キング」に変わることはなかった。なぜか?

 フィリップ殿下はもともとデンマークおよびギリシャのプリンスであった。英国王室の直系ではなかったので。

 1957年2月22日までのフィリップの正式タイトルは、「デューク・オブ・エディンバラ」である。
 22日に新女王から発表があって、こんごはフィリップの尊号は「プリンス・オブ・ユナイテド・キングダム・オブ・グレート・ブリテン・アンド・ノーザン・アイルランド」であると宣せられた。

 英国の「キング」と婚姻している者は自動的に「クウィーン」と呼ばれる。しかし英国君主と婚姻している男子が自動的に「キング」と呼ばれることはない。要件がある。すなわち、先代君主の継承者である男子であった場合のみ、「キング」とされるのだ。

 もしエリザベス2世が崩御または退位すれば、いまの「プリンス・オブ・ウェイルズ」であるチャールズが、自動的に「キング」になる。そして、いまの「プリンセス・アン」「プリンス・アンドリュー」「プリンス・エドワード」は、いずれもそのタイトルを維持する。

 「プリンス・チャールズ」の息子であり且つ現クウィーンの孫にあたる「プリンス・ウィリアム」は、「キング」のタイトルをチャールズの次に継承すべき順位にある。その次の順位は、ウィリアムの長男の「プリンス・ジョージ」である。すなわち直系原則。

 1960年に、エリザベス2世とフィリップ殿下は、過去の伝統を変えることにした。すなわち、エリザベスおよびフィリップのファーストネームに、ハイフンでつなげた領地添え名として「マウントバッテン-ウィンザー」を付けることにしたのだ。マウントバッテンは、フィリップの母方の祖父の称号である。
 ※欧州の君主が「姓」を名乗るという、伝統破り。ちなみに儒教圏の皇帝や王には姓がある。日本の天皇には姓は無い。

 そしてウィンザーの称号保持を望んだのはエリザベス本人。

 このときフィリップはこう語ったという。イギリスの中で、じぶんの子どもにじぶんの姓をつけてやれぬ男は余だけである。アメーバかよ!

 かくして、エリザベス2世の子孫たちは爾後、必要とあらば、「マウントバッテン-ウィンザー」の姓を名乗れるのである。
 しかし王室メンバーにはただでさえ、長い称号が付随している。たとえばプリンス・ウィリアムの場合は、「デューク・オブ・ケムブリッヂ」である。それにさらに何か付け加えたくなるようなシーンは、あまりないであろう。



尖閣諸島を自衛隊はどう防衛するか 他国軍の教訓に学ぶ兵器と戦法