赤外線前方警戒装置に表示される「UFO」の正体

 Alex Hollings 記者による2021-6-21記事「Can this Navy patent explain away many UAP sightings?」。
    米軍が航空機に搭載させようとしている、レーザーを使った欺騙装置。これを作動させることにより、敵の防空システムのセンサーは混乱してしまい、こっちが複数の飛行物体であるかのように錯視するのだという。

 米海軍が登記した特許によって、その存在があきらかになった。
 じつは何年も昔からこの実験はしていたのだ。それがUFO騒ぎにもなった。

 低周波のレーダーを使うと、敵のステルス機がやってくるのを探知することはできる。しかしトラッキング精度が悪いので、そのステルス機を撃墜しようとするミサイルの最後の誘導には使えない。

 そこで防空者の側としては、初期誘導を低周波レーダーを頼りに行なって、終末誘導はSAMの弾頭重量の赤外線シーカーに引き継ぐのが、対ステルス空襲に対しての、合理解である。

 これに対して空襲者の側は、熱源欺騙用のフレアを放出することができるが、無限に放出し続けられるものではない。
 それでどうするかというと、事前に防御側のレーダー配置とSAM配置を調べておいて、できるだけそれらの覆域内を飛ばないで済むように飛行経路を綿密に計画し、フレアを使わねばならぬ時間を、局限するべく工夫するしかない。

 このフレア放出を無限化できるのが、新しい特許である。航空機から発射するレーザーパルスによって、附近の大気をプラズマ化させると、その箇所がフレアと同じ赤外線をしばらく輻射し続ける。
 その空中の空虚な輻射熱源に、敵SAMのIRシーカーがひっかかり、本体のステルス機は逃れ去るという寸法だ。

 プラズマ・ボールは、対テロ部隊が屋内に投げ込む「フラッシュ手榴弾」の光と音が、かなりの秒時、持続するものだと想像してもよい。光だけでなく音圧も、しばらく持続するのである。

 公開された特許によると、軍用機(ステルス機)の尾部にこの欺騙用レーザーを装置し、飛行中、機体の後方、数百mほど離れた空間に、プラズマボールを形成させる。

 欺騙用レーザーの数を増すと、同時に複数のプラズマボールを空中に現出させることができる。
 そのすべてが、熱的なデコイになってくれる。
 複数のデコイは、ミサイルと飛行機の中間に不透明スクリーンを構成し、ミサイルの弾頭シーカーはその不透明スクリーンの向こう側の飛行機を見失う。

 プラズマボールから発生させる光の波長は、任意に付与することができるという。

 さいきんのIRホーミング・ミサイルのセンサー回路は、フレア対策として、赤外線の他に紫外線もチェックするようにしている。しかしプラズマボールは、赤外線に加えて紫外線も自在に放出できるので、敵ミサイルは完全に幻惑されてしまう。

 フレアは重力によって落下していくが、プラズマボールはずっと同じ高度にとどまってくれる。
 フレアはあらゆる高度で使えるわけではないが、プラズマボールは、使用高度を選ばない。

 おそらく将来、このプラズマボールデコイは艦載もされる。すると、敵の「対艦弾道弾」も、IRを頼りに終末誘導することができなくなる。

 ※むしろ戦車の自己防衛用APSに使えるのではないか? 可視光線を出せばいい。スモークディスチャージャーの代わりに、プラズマボールを前方へ出し続ける。そのスクリーンに膚接して戦車小隊が敵陣地へ突入できるではないか。

 次。
 Vincent Wroble 記者による『プロシーディングズ』2021-6月号記事「Build USVs Abroad」。
    米国は艦船建造のための工業基盤を縮小させつつある。
 2019年に世界で建造された全船舶のうち、中共は35%を建造し、米国は0.2%であった(重量ベース)。

 もっとわかりやすく説明すると、中共の艦船建造能力は、いまや、米国の100倍なのである。

 ※その能力がありながら、なぜ「ショアtoショア」の高速上陸舟艇を1万隻ばかり建造してサッサと台湾に陸軍(数的に敵を圧倒できるアドバンテージがある唯一の戦力)を送り込まないのかという背景事情を、よ~く考えることだ。

 フネの他に、まずいことになっている工業分野が、誘導ミサイルの製造。2020年の推計では、中共のミサイル生産能力は米国の188%だという。

 げんざい、連邦法の「10 U.S.C. § 8679」によって、米軍のための軍艦や軍艦用枢要パーツを外国に発注することはできない。ただし、国家安全保障の要請があれば大統領はこの法令を無視できるとも同法は規定する。
 過去、1920年代から30年代、米海軍は、上海の造船所に数隻の警備船艇(揚子江用)を発注したことがある。※喫水線がきょくたんに浅くないと河用には向かない。ところが浅吃水のフネには航洋性がない。だから太平洋を横断できない。それで地元で調達することにした。

 USV(無人水上船艇)を日本と韓国に発注して建造させ、それを米海軍がシナ沿岸に展開するようにしたらどうか。

 搭載する兵装は米国製なので、投入する予算の多くは米国内のメーカーの儲けになるだろう。