並木書房の新刊『サムライ先生、日本語を教える――あなたの知らない日本語学校』

 奥付を見ると2021年7月15日発行だ。
 著者の山下知緒[ともお]氏は存じ上げないが、本書のために挿絵マンガを描いていらっしゃる小松直之さんが居たことのある「文学座」に、山下氏もいらしたらしい。

 「日本語学校」にもピンからキリまであるはずである。本書は、「適性校」の指定を取り消されてしまう異次元レベルの日本語学校の世界を、じつに生々しく教えてくれる。

 すでにわが国では、中国人や朝鮮人が「日本語学校」を開設し、運営し、教授できるようになっている。とっくにそういう段階なのだ。

 生徒たちの出身国も、ウズベキスタン、ネパール、スリランカ、ベトナム……と多彩化している。それぞれの宗教的なキャラクターも本書によってよく分かる。

 問題が多すぎる上司、頼りにならない同僚先生たちの間で、いずれ劣らぬ特濃キャラの生徒たちを相手に孤軍奮闘する熱血武術家教師の五百日……。誰しも現代版の『坊ちやん』を読む思いがするであろう。

 「労働移民」をこれからどうするのか、みんなで考えなくてはならない今の日本に、好適な参考書が提供された。



サムライ先生、日本語を教える