自転車に400kgのウェイトを載せてクロカン周回を競うレースがあってもいい。

 ベトナム戦争中、便衣の北ベトナム兵は、自転車のフレームに400kgの軍需品を吊るしてラオスの密林内の小径を腕で押して夜間に長距離機動し、南ベトナム領内の友軍(ゲリラ)に補給をつけた。

 現代ではこの事実は、脱炭素にしてエコロジカルな未来輸送について考える好資料である。

 近代オリンピック競技には、動物に荷車や橇を輓曳させる種目はない。おそらくその理由は、どうしても見た目が動物虐待にしか映らないからである。

 「人力車」(リキシャ)もまた、種目となる見込みはない。こちらは、どうしても見た目が「古代奴隷制」「近代のアジア人の屈辱」を想起させるからだ。ちなみに中共は、1949の権力掌握後、国内での人力車の運用を全面的に禁止した。民族の恥だというので。(この禁制がいつ、とれたのか、知りたいものである。)

 冬季ノルディックにも、アキオを牽引する距離競技は、無かったはずだ。たぶん、競り合いになったときにトラブルが生じやすいのだと想像する。

 そういった問題のある競技とは違って、ウェイトを吊るした自転車を人間が押して進む姿は、神々しいものである。近代スポーツに仕立てるのに、何の不都合もないであろう。

 さてこれが競技化されると、「運搬車」仕様なのに本体が超軽量の自転車を製造できるハイテク先進国が有利になってしまうだろう。
 その不公平を、いかにして解消するか。
 自転車の標準自重をルールで制定して、事前に計量してそれよりも軽かった場合は、本来のウェイト(400kgとするかもっと軽くするかには考慮の余地がある。試行後に見直して行けばよいだろう)に、差分の重量も追加するようにすれば、まず公平化できるのではないか。

 軽量な運搬用自転車の研究開発は、それじたい、人類のエコ生活に貢献するものであるから、各国の各メーカーが性能を競うようにすることが、とうぜんに望ましい。

 この競技のための断郊コースは、距離は長くてもよいが、急坂や段差を設けず比較的にゆるやかにし、かつ全コースについて十分な道幅を確保し、以て、転倒時の巻き添えの負傷の危険を、減らすべきであろう。400kgに不意に押しつぶされては、かなわないからだ。