自転車ロードレースのキーゼンホファー選手。抜け出しを仕掛けるタイミングは予めカロリー計算で求めることができるという仮説を立ててみずから立証したのか。カルテシアンの鑑だ。

 Stephen Chen 記者による2021-7-21記事「China military scientists work on laser to improve hypersonic speeds」。
    マッハ5以上で飛ぶハイパーソニック飛翔体の、空気抵抗を低減する方法として、中共の技術者たちは、尖頭部分にレーザー発射機構を取り付けるのが有望だと考えている。
 つまり前路の虚空に向かってレーザーを発射すると、薄い大気が「涙滴形」にプラズマ化する。直後にその「プラズマ雲」を通り抜ける本体が受ける空気抵抗は、減るのだ。

 前路大気をプラズマ化させなければ、ハイパーソニック弾は普通のショックウェイヴを作り出す。これは大きな抵抗だ。しかし前路大気をプラズマ化させてやれば、この衝撃波の構造がガラリと変わるのだという。

 この研究は中共の学術誌『レーザーと赤外線』に今月、公表された。
   ※公表された理由は、実用化までは前途遼遠だと思われたからだろう。

 レーザーが作り出す涙滴形のプラズマ雲は、発生の直後に2つに分離するという。
 小さい方の雲は、後ろ向きにスピンする。それによって空気を前方へ押す。そこに機体本体が突っ込んで行く。

 英誌『ネイチャー』に7-21に発表された論文によれば、上海の研究チームはこれとは別に、世界最小の「自由電子レーザー」を作ったという。
 これまではいくら小さくこしらえても1kg以上になっていたが、彼らは重さをその百分の一にしたという。さらに小型軽量化することも見込めると。

 次。
 ストラテジーペイジの2021-7-26記事。
   英陸軍がげんざい、新型装軌式装甲偵察車「エイジャックス」をテスト中なのだが、内部の振動が大きすぎるという難問題に直面して大弱り。

 後部のお客さん室内に響き渡る騒音もデカすぎて困っているところ。
 この問題を修正するため、開発試験は中止されている。

 ※おそらく英軍もナゴルノカラバフの実例を見て、APC/MICVは進化の行き止まりに達したと判断したはず。別概念が必要になる。エイジャックスはこのまま廃案ではないか?

 装軌式MICVの歩兵戦闘室内の振動、ノイズ、狭苦しさ、有色有毒ガスのたちこめ、外界視野がないために歩兵が下車する前に方向感覚を失うこと、などの問題は1960年代のBMPからずっとあり、解決されていない。

 特に振動は、電子機材にとって、すこぶる有害。それで、多くの軍隊が、装輪式を選択するようになっているのである。
 英軍は、装軌式の「ウォリアー」の後継として、ドイツ設計の8×8装輪式「ボクサー」を発注している。

 だがそれだけではダメかもと思ってエイジャックスも開発を続けてきた。重さ38トン。40ミリ自動砲の実包は、新案の、弾丸が薬莢内に埋め込まれているという野心的なもの。

 英軍はエイジャックスを500両以上調達する気でいたのだが、振動問題のため試験が2020に中断されたまま。

 ボクサーの値段は、2019年に500両を発注したときの総額が、米ドルにして33億5000万ドル。

 ボクサーは、1999から独英合同で開発し、2001からはオランダも一枚噛む。
 2003に英国はボクサーから手を引いたが、げんざい、独、リトアニア、オーストラリアも使用中。
 ドイツはアフガンに5両を持ち込み、無傷で撤収している。
 豪州軍の発注台数は、211両である。

 乗員3+お客8のボクサーは、重さが用途によって25トンから36.5トンのあいだで変動する。
 モジュラー・アーマーを後から自在に着脱できる。つまり重装甲にも軽装甲にもなるのだ。
 基本タイプでも、正面装甲は、敵の30ミリ機関砲弾を止められる。
 12.7ミリ機関銃弾に対しては、全周、止められる。

 シャシの底板部分は三重。IED対策だ。
 エンジンは750馬力ディーゼル。
 航続力はだいたい1000kmという。

 別な話題。
 米軍が導入を開始している最新暗視装置のうち、ENVG-Bは双眼鏡タイプで、単眼鏡タイプより2割重いのだが、兵隊たちの感想としては、重くともENVG-Bの方が好まれているそうだ。

 とくに、増光されたイメージに「輪郭線」を描き加えて表示してくれる画像処理ソフトが、すばらしいという。