中共の「一帯一路」は「アフガン横断パイプライン」を建設することで真に完成する。

 おそらく先月末、天津によびつけたタリバン代表団には、多額の「人民元」が手渡されたであろう。
 アフガンに対して最も有利なポジションにあるのは中共である。

 旧ソ連は、アフガンから逆にイスラムゲリラが北上してくる危険におびえなければならなかった。
 ところが、ワヒリ峠(Wakhjir Pass)/ワハン回廊(Wakhan Corridor)からシナ領へイスラムゲリラが浸透してくる可能性はゼロなのだ。この超絶不毛高原は、道路敷設者が完全に通交をコントロールできるのだ。

 従来、シナからイランまで道路やパイプラインをつなげるためには、パキスタンとインドと中共が三つ巴で領土係争中のカラコルム山地内を通すしかなかった。それではいつインドから爆撃を受けるかわからないしパキスタンだって不快に思う可能性が大。

 ところが、ワハン回廊を使えるならば、そこをインドが空爆できる名目などないのである。またパキスタンも、ワハンがアフガン領土であることについてはまったく異論が無い。

 そしてパキスタンは、今でも中共の助けによってインドと拮抗していられる立場だから、アフガニスタンが支那殖民地化されることに反対も唱えられない。それどころか、パキ北部のパシュトゥーン分離独立運動の抑制になるので、歓迎する。

 こうして中共とイランの経済は、アフガンルートによって直結される。

 米国もこれには反対できない。米国もロシアも、心の中では、中共が全アフガンを「新疆化」してくれればいいと思っているだろうからだ。

 中共もこれから陸軍の過剰人員を整理しなくてはならない。中共版の民間軍事会社(すでに複数ある)が失業軍人を吸収してくれればありがたい。道路建設現場をガードする武装会社員の需要が、アフガン内には多いであろう。

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 Corey Dickstein 記者による2021-8-16記事「Pentagon deploys more troops to Afghanistan, working to stabilize airport evacuation efforts in Kabul」。
   緊急派遣される空港警固部隊として、第82空挺師団が指名された。月曜日に。
 カブールの「ハミド・カルザイ国際空港」である。

 これをあわせると、総勢6000人で警固することになる。

 空港では米軍がすでにアフガン人7人を射殺した。乱入してきたので。「自衛だった」と広報されている。あきらかに、タリバンとは無関係の武装者。

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 Susannah George 記者による2021-8-15記事「Afghanistan’s military collapse: Illicit deals and mass desertions」。
    アフガニスタン政府軍は、これまで何をやっていたか。タリバンのリーダーたちにカネを渡して、タリバンから武器を買い取る。そんなことをやっていたのである。
 米国納税者の税金が、最終的にタリバンに流れて、どんどんタリバンを強大にさせていた。

 タリバンは戦闘によって北部の諸行政区を陥落させたのではない。諸行政区のボスたちとはちょっと前から話がついており、すべて、無血開城だったのである。首都カブールも、まったく同じノリで、攻防戦は皆無の入城だった。

 2020-2にドーハでタリバンと米軍と反タリバンのアフガニスタン武装部族の代表が、米軍の撤退スケジュールについて合意した。このとき非パシュトゥーンの部族の代表たちは、米軍からCASが得られなくなる以上、対タリバンのまじめな戦闘などムダであり、あとはカネだけが重要だと、頭を切り替えた。その場にいた米特殊部隊コマンドの幹部は、ハッキリと悟った。こいつらはすぐにカネで転ぶと。それが現実になったのだ。

 そしてこのドーハ会談をさかいめにして、アフガニスタン政府軍警の幹部も、自己一身の蓄財だけを考えるようになった。部下に給料を渡さずにピンハネするようになったのだ。したがって今回、部下の兵隊たちがまじめに戦うわけなどもなかったのである。

 ※ミル8輸送ヘリのパイロットがさっそくタリバンを乗せて飛んだ。こいつも給料を貰ってなかったのであろう。

 カンダハルで、抗戦する気満々であった、アフガン政府軍の特殊部隊員は、上級部隊からの命令により、一発も発砲してはならぬ、武器を捨ててタリバンに投降しろと命じられた。しょうがなく、便衣に着替えて逃げるしかなかったという。

 タリバンは、政府軍将兵が投降すれば150ドルくれるそうだ。半年から9ヶ月も給料をもらってない兵隊が、その話に乗らない手があるか。まじめに抗戦しようとしても、政府軍の腐敗した上層幹部が、そいつをタリバンに売り渡すだけ。

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 Daniel Rey 記者による2021-8-3記事「What was the point of the war in Afghanistan?」。
   バイデンの優先順位とは何か。それは先月の演説で明示されている。武漢肺炎対策が第一。それに、サイバー安全保障、気象対策、対支戦略が続く。
 アフガンなどにかまけていたら、いつまでも対支戦争準備は整わない。だから、切り替えていく。