米空母を南シナ海から遠ざけたかったら、LEO周回する衛星コンステレーションから「対艦誘導爆弾」を落下させるしかない。財政的にも技術的にも可能であるが、習近平の技術無知が、その実現を阻んでいる。

 もちろん宇宙条約違反だが、北京には最初からそんなもの関係ねえ。

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 indomilitary の2021-9-28記事「China Shows Up Close Wuzhen (WZ-8) ? The Hypersonic Reconnaissance Drone That Could Make the US Terrible」。
    珠海航空見本市は9-28から10-3開催である。そこに「WZ-8」が出展された。WZはWuzhenの短縮である。

 これは2019-10-1の七〇周年軍事パレードでは「WZ-18」としてトレーラーの上に載せてカメラの前を通過しただけだった。

 宣伝では、マッハ5で飛翔する、ハイパーソニックの無人偵察機である。DR-8とも呼ぶようだ。
 WZ-8は角度によってはRS-71に似ている。

 宣伝ではすでに中共軍の「東部軍」によって作戦使用できる状態だと。
 もしマッハ6以上で動くのなら、艦上戦闘機からAAMを発射しても追随できず、当てられない。

 ゆえに米空母との「触接」に使える。刻々の座標情報を陸地の「東風21D」部隊に通報して、地対艦弾道弾を指向させられる。

 宣伝によるとエンジンは「ラムジェット」で、巡航高度は3万500mであると。

 ※これで嘘まみれがバレてしまう。3万mならスーパーソニック高度であってハイパーソニック高度ではない。それに「ラムジェット」ならマッハ5までいかない。そもそも、エンジン始動前にブースト速度を与えるロケットを添えず、それについての説明すら無い点で、どうしようもないだろう。

 宣伝によると航続力は4830km以上であると。
 WZ-8はウイングスパンが6m、全長が11m。

  ※SR-71はエンジンだけでもこの全長よりも長いだろう。それが2基ついていて、ようやくマッハ3.2を実現できたのである。そして航続距離5400kmを達成するための燃料。それがどうやって11mに収められる? いかに法螺の度が過ぎているか。

 米軍は偵察衛星の撮像によってこのUAVが2015から開発されていることを探知している。初飛行が2018であったことも把握している。

 ※SR-71と類似の形状で、SR-71の2倍の速度を、SR-71と同じ高度3万mで実現できるわけがない(空気抵抗で機体が溶けてしまう)と外国人から疑われるのではないか――との直感が働かないか、そう思われてもかまわないのだと判断したのであるならば、この宣伝を指揮している者の頭の中が謎である。技術を誇る展覧会なのに、技術の「相場値」を無視するのだから。ほとんど、ガッチャマンのエリアルール無視の大型飛行機がマッハ20、とか漫画雑誌に書いてあるのと、違いがない。メーカーの内部の者もこれでは恥ずかしいと思っているはずで、こんな宣伝をされては、じぶんたちが世界に顔出しデビューできないじゃないかと、落ち込んでいるだろう。それでも敢えて宣伝を強行させている背景の事情があるはずである。それは、理工系の素養のない習近平派の幹部が、中共党の上から下まで、主流の権力を握りつつあるということではないのか。なんとしても米空母をシナ沿岸から遠ざけろ、という親玉習近平の異常なこだわりが忖度され、そのさい、東條英機並に兵器技術に無知なのは見透かされてしまっているのだろう。

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 Brian O’Rourke and Joseph Trevithick 記者による2021-9-27記事「DARPA Reveals Successful Hypersonic Cruise Missile Flight Test Has Occurred」。
   げんざい米軍はスクラムジェットのハイパーソニック巡航ミサイルを2系統、開発させているが、そのうちのひとつ、レイセオン+ノースロップグラマンの試作品「HAWC」が、先週、フリー・フライト・テストの段階に進み、成功した。DARPAによる発表。

 いま、たしかめているのは、発射のシークェンス中の、最適のタイミングである。母機から安全にリリースするための諸問題、リリース後、何秒でブースターに点火するのがよいのか、ブースターから弾頭(HCM)を分りするタイミング、分離後にHCMのエンジンを始動させるタイミング……etc.

 今回、搭載されていたスクラムジェットエンジンは、2010年代に飛行テストされた「X-51 ウェーヴライダー」のエンジンの半分の重さだという。

 X-51Aは、2013-5-1に、短時間だがハイパーソニック域での動力飛行をしてみせている。
 しかしその後、報道されている限りでは、ハイパーソニック動力飛行はいちどもなく、ひたすら研究開発が続いていたのである。
 そして今回、ひさびさに、ハイパーソニック動力飛行が成功したと公表された。

 これとはぜんぜん別に空軍は、空対地のHGVである「AGM-183A ARRW」を過去に2回試射しているが、失敗におわっていて、続報がない。こちらは、ブースターから分離したあとは無動力で滑翔するだけ。
 それでも、ハイパーソニック飛行は、簡単には成功せぬのである。