あれほど高速で推進してきた米軍将兵に対するワクチン接種。強制命令も出ているにもかかわらず最後の詰めができず、フィニッシュできぬ情況。

 Holmes Liao(廖宏祥)記者による2021-10-8記事「China’s Development of Hypersonic Missiles and Thought on Hypersonic Defense」。
   中共のHGVである「DF-17」は、そのブースター部分を「DF-ZF」という。
 また中共は「Starry Sky(星空)-2」というHCMを開発途中である。
 ちなみに「ハイパーソニック」をシナ語で書けば「高超声速」である。

 CAS=中国科学院のIMECH=力学研究所が「激波風洞」(衝撃波風洞)を建設しはじめたのは2008年である。
 この風洞は2012に完成した。

 2020-4のCAS公刊誌によれば、この「JF-12」風洞は「星空」HGVの開発用に供されている。
 『サウスチャイナモーニングポスト』紙の2018-8-6記事によれば、星空2はマッハ6で巡航し、核弾頭を搭載する。

 JF-12風洞は、マッハ5からマッハ9の風を、130ミリセコンドの間、再現できる。データをとるにはこれで十分である。

 高度条件は25kmから50kmを再現できる。
 ショックトンネルがないと、スクラムジェットの燃焼が熱的に継続できるかどうかは、分からない。

 ハイパーソニック風洞は、JF-12の他に、四川省の綿陽市にあるCARDC=中国空気動力研究与発展中心(アエロダイナミクスのリサーチ&デベロップメント・センター)も複数、持っている。こちらは中共軍が直接に管理運用している。

 しかしIMECHのショックトンネルが、性能においてそれらを凌ぐと考えられる。

 IMECHレベルのショックトンネルは、NASAは1980年代から持っている。それに2010年代で追いついたということ。

 中共は130ミリセコの持続が世界記録だと誇っているのだが、例によって偽ニュース発信にすぎない。NASAはX-43Aの実験でもっと長い時間、ハイパーソニック環境をテストできている。

 2018-3からIMECHは、JF-22という別な風洞の建設に着手した。
 こちらは、デトネーションドリヴン=爆発駆動 による 超高速およびハイ・エンタルピーを再現する激波風洞であるという。

 この新風洞の場所は北京市の懐柔区。2020-12には、米軍における「PRR(プロダクションレディネス評価)」および「SVR(システムヴェリフィケイション評価)」に相当するステップを通過した。

 米国は愚かにもハイパーソニック研究の成果をオープンな学術会議で発表するものだから、シナ人はそこから最新情報を得まくりであった。
 たとえばNASAのグレン研究センターは、CFD=コンピュータを駆使した流体力学 のさきがけだが、そのアルゴリズムをおおやけの場で教えてやっていた。

 JF-12とJF-22の主務担当者である姜宗林は、2016年にAIAA=米国航空宇宙研究所から、地上試験部門の「賞」を貰っている。CFD業界では、体制を越えた交流が深いわけである。

 ハイパーソニック研究にはCFDの応用が欠かせない。中共はその智恵を米国人から取得できた。

 これは『ワシントンポスト』紙が2021-4-9に報じていることだが、CFDの前提がスパコンである。そのスパコンには米国で設計されたGPU、CPU、メモリーチップが必要で、中共はながらくGPUなど国産していなかったのである。そしてそれらを駆使してCFDを実行させるアルゴリズムも、米国人が考えたものだった。米国はこれらの知見を只でシナ人にくれてやった。

 このような技術知見の流出は、国家安全保障上のセイフガード発動の対象とされるべきなのに、現行の連邦法、たとえば「エコノミック・エスピオナージ法」によっては、規制はされないのである。

 CASIC=中国航天科工防御技術研究院 が、米軍のハイパーソニック兵器を阻止する防空兵器もつくらなければならないと提言したのは2012年である。

 まずは、800kmから1000km先からハイパーソニック弾の飛来を探知できるセンサー網の構築が必要だとCASICは指摘した。

 次に、リアルタイム迎撃のために、センサーが送ってくる膨大なデータを高速で処理し、ノイズを取り除き、敵のECMを妨害を凌駕できる、情報センターが必要である。

 次に、探知から迎撃判断、迎撃命令の下令から実行までの流れを最高に効率的に遂行できるように、政府と軍の組織図の洗練がなされなくてはならない。

 次に、大気圏内滞在型、および、大気圏外滞在型の、インターセプターを持つ必要がある。

 具体的にはCASICは、空対空ミサイルを、2012年時点では、考えていた。ただし、ハイパーソニック弾の高度から考えて、第一段階の「探知」すら難問であり、CASICにも見込みがある成案はなさそうである。

 中共には「中国空空尋弾研究院」という、空対空ミサイルの専門の開発機関がある。この研究院でも、2016に、対ハイパーソニック専用の衝突型AAMや、航空機搭載型のエネルギービーム砲を提案している。

 中共軍の中のSSF=「戦略支援部隊」の支配下にある「航天工程大学」は、既存の早期警戒機と地上レーダーもハイパーソニック防空の役に立つと言っている。
 それに加えて、高出力で高分解能のフェイズドアレイレーダーを陸上と軍艦に据えるべきであるとも。

 SSF内の複数の技師は、赤外線利用のセンサーは三次元の精密な標的追尾が難しいが、早期警戒の役には立つと言っている。それを宇宙に展開すべしと。

 旧第二砲兵の工学部大学校であった、現「火箭軍工程大学」は、ハイパーソニックの迎撃を、四段階で考えている。

 ファースト・ステージでは、敵のハイパーソニック兵器の発射を宇宙から衛星コンステレーションによって探知し、追尾すると同時に速報する。

 セカンド・ステージでは、衛星から知らされた標的を地上の早期警戒レーダーで捕捉する。
 サード・ステージでは、真標的とデコイとを識別し、指揮統制センターに知らせる。

 第四ステージでは、指揮センターが防空部隊に迎撃命令を出す。

 情報と命令の流れが「長鎖」を成していてはハイパーソニック迎撃には間に合わないので、組織を極限までフラットにして、リスポンス・タイムを最短化しなければならぬ――とも、中共軍の専門家は指摘している。

 AVIC=中国航空工業集団公司は、ハイパーソニック迎撃には、航空機に搭載したレーザー砲がいちばん有望だと推奨する。
 しかし航空機の振動が大問題となる。またハイパーソニック弾の頭部はセラミックで耐熱化されているので、レーザーの熱にも耐えてしまうかもしれない。

 ハイパーソニック弾の弱点は、その滑翔中、あるいは巡航中に、針路を多少変えられるといっても、航空機なみの旋回は不可能なことで、したがって、空対空兵器による迎撃に、最もチャンスがあるのである。複数の中共軍研究者は、無人機をプラットフォームとするのが合理的になると提唱する。

 中共の空軍工程大学では、無人機を海の上空、高々度に散開させて、長時間ロイタリングさせることによって、シナ本土に飛来するハイパーソニック弾を阻止することができないか、研究している。

 この無人機群は、センサー役と発射役とに分ける。センサー役には兵装を搭載しない。そして発射役には、重いセンサーは積まない。

 発射役の無人機は、1発の重さが250kgで射程200kmのAAMを各6発、抱えて飛ぶ。そんな構想。

 中共はMTCRに賛同していない。中共がハイパーソニック兵器を完成したら、それは、パキスタン、イラン、サウジアラビア、シリアにも売られるだろう――と米海軍協会ニュースは2021-5-18日付で予想している。

 中共をMTCRに加入させるためには、ぎゃくに、米国がMTCRの自主規制を脱し、台湾、日本、豪州に、長距離地対地ミサイルの技術を移転してやることが、有効かもしれない。もちろん併行して米軍も、長距離地対地ミサイルを中共領土周辺に展開する。そうでもしないと中共のコースは変わりはしないのだ。

 ※ここに「韓国」の名が挙げられていないのは要注目だろう。

 レーガン政権の国務長官ジョージ・シュルツは、米軍が中距離未満の核ミサイルを西欧に配備したからこそソ連はINFに合意したのだと言っている。同じことである。