拾う神あり。

 Stephen Chen 記者による2021-10-21記事「Chinese scientists build anti-satellite weapon that can cause explosion inside exhaust」。
   中共の湘潭市にある湖南防衛工科大学の教授らが、雑誌『電子技術とソフトウェアエンジニアリング』に先月寄稿して公表している話。

 周回衛星に備え付けの小型推力ノズルの中に「秘密の仕掛け」をほどこす。そのノズル内で、ダンパーに包んだ小爆発を起こし、自己衛星本体は損壊することなく、熔融金属を発射して、敵国の衛星を破壊してしまう。外見的には、ノズル内で何か不具合が起きたようにごまかすことができるので、中共にとって都合がよい。すでに試作品を地上で実験している段階だそうである。

 研究資金は軍から出されており、名目はロケット兵器の新弾頭の開発、だという。

 2007年の廃衛星大爆破デモンストレーションで世界の大顰蹙を買ってしまった中共は、あまり「デブリ」を発生させないようなASATの技法を各大学に模索させていた。

 地上基地に展開する、対宇宙のレーザー高射砲もその一貫である。

 しかしレーザーによる攻撃は、敵の目からもまる分かりである。これがまずい。こっちが攻撃を仕掛けたのかどうか、判然としないような技法が、中共軍としては、一層、好ましい。

 こんかい案出された、爆発装置の重さは3.5kgである。しかしそれを、ラヴァールノズル(中間部狭窄ラッパ管)内に隠すことにより、擬態。たいがいの人工衛星が、軌道の維持・変更や姿勢制御のために備えているノズルなので、あやしまれない。しかしこのノズルからは普通のスラスターガスはでてこない。攻撃専用のハリボテである。

 ちなみに「グスタフ・デ・ラヴァル」は19世紀のスウェーデンの技師だった。

 このラヴァル管の最奥部のチャンバー内で小爆発を起こさせることにより、生成破片(おそらく熔融ジェットメタル)は四方八方へは飛散せず、ノズルが偶然に向いていた敵衛星の方向にだけ、指向的に飛び出すようにできる。外見的には、スラスター機構の内部でたまたま何か不具合が起きたかのように、偽装することができるのである。

 どうやら自己鍛造弾頭であるらしい。しかし開発主任教授にいわせると、その技術は多段式ロケットの「分離」のための装置としてずっと使われれているのだと。

 ※おそろしいことだがこの教授は自己鍛造弾と成形炸薬(ただし銅板の逆コーンは貼らないもの)とを混同しているように見える。導爆線や「爆発ボルト」は決して自己鍛造弾ではない。

 中共は2016年の「神舟17」にロボットアームをとりつけて、敵の衛星を捕獲する研究までやっている。

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 Thomas Newdick 記者による2021-10-20記事「Unwanted Global Hawk Drones Are Being Transformed To Support Hypersonic Missile Tests」。
    空軍が退役させた4機の「RQ-4 グローバルホーク(ブロック20)」をノースロップグラマン社が「レンジ・ホーク」という空中実験観測機に改造する。
 これを使って、HCMである「ARROW」のハイパーソニック動力飛翔実験を観測させるつもり。

 ふつうのグロホは、地上を下向きに監視するものだが、レンジホークは成層圏を巡航しながら、センサーはすべて上向きに取り付け、たとえばHCVのテレメトリを拾う。レーザーレーダー、マルチスペクトルの光学センサーも、飛翔体を追う。

 拾ったテレメトリは、搭載するデータリンクですぐに地上へ転送。