軍隊だと最初に空砲のブラストで空き缶に風穴が開くデモンストレーションを新兵は見せ付けられるのだが……。

 アレック・ボールドウィンは1958年生まれなので1972年時点でも14歳。ベトナム徴兵とは無縁の世代だから、理解してなかったわけか。

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 Tristin Hopper 記者による2021-10-22記事「The guns on movie sets are real: That’s why they can kill people」。
     芝居の小道具のことをプロパティと通称する。それを縮めてプロップ。日本でいうところのステージガンは、ハリウッドでは「プロップ・ガン」となる。
 アレック・ボールドウィンは木曜日、プロップ銃を人に向けて引き金を引いてしまったようだ。

 じつは、米国の映画やテレビでわれわれがよく見せられる小道具銃は、「ホンモノ+空砲」の組み合わせでしかない場合が多いのである。オモチャ銃ではないのだ。だから実弾も装填できてしまうし発射もできてしまう。

 ゴム製の精巧なレプリカ銃も、もちろんある。おそらく『プライベート・ライアン』のエキストラたちはそういう安全なプロップ銃を持たされていた。

 玩具の「エアーソフト・ガン」を選好する映像製作人たちもいる。そこから飛び出すBB弾には人体貫通力はないが、本物そっくりなので、一瞬だけ人をおどかすのには向いている。犯罪の手入れで麻薬と一緒にエアソフトガンが押収されることがあるのはそのためだ。

 ただ、発砲シーンの撮影となったら、実銃にまさる小道具はない。

 トロントにあるMAG社は映画用の武器を貸し出すカナダ最大のサービス企業である。製作会社から注文を受けると、元警察官もしくは元軍人のスタッフが、その小道具を届ける。すべてホンモノで、実弾を装填すれば、実弾が発射される。

 もしその映画に発砲のシーンがないのであれば、「撃針」を最初から除去して貸し出される。

 カナダのブリティッシュコロンビア州で2009年に、こうした映画用の小道具提供会社から犯罪組織に小火器が密売されているとして問題になったことあり。

 空砲といえども、フィルムに映えるレベルの薬量だと、その膨張ガスには、銃口の近くにいる人を殺傷する威力がある。

 米軍の訓練中の空砲による死亡事故についてまとめた2009年の文書によると、頭部や胸部が特に危ない。

 1984にジョン・エリック・ヘクサムというTV俳優が、冗談で自分の頭を空砲入りの拳銃で撃ち、頭蓋骨の破片が脳にめり込んだために、脳死した。

 装填してあるのが空砲でも、その銃の銃身内に異物を詰めたりすれば、その異物が弾丸の代わりになってしまう。

 1993に『ザ・クロウ』の撮影中にブランクで射殺されたブランドン・リー(ブルース・リーの息子)のケースは、特異であった。さいしょに、ダミーカートリッヂの弾頭部分が薬莢から外れて銃身内にそのまま残ってしまっていることに気づかず、そのあとから装填された空砲のガスによって、それが射出されてしまったのである。

 擬製弾=ダミーカートリッヂと、空砲=ブランクカートリッヂは違う。
 たとえば映画のシーンで弾倉に実包をこめる、あるいは銃の薬室に初弾を装填するという動きのクロースアップを撮影するとしたら、ブランクカートリッヂではよくない。さいしょから弾頭部分が欠損しているので、見るからにおかしいわけである。そこで弾丸と薬莢が一体となった実包のように見える擬製弾が用いられるのだが、その雷管(に見える部分)にも、その薬莢(に見える部分)内にも火薬はいっさい入っていないので、誤って発射の操作がなされたとしてもダミーカートリッヂが発火するおそれはない。

 ※軍隊で教育用に使う擬製弾は弾丸部分と薬莢部分が構造上一体なので物理的に分離できない。『ザ・クロウ』で使ったというダミーカートリッヂは、沖縄のみやげ物屋で売られているような、本物の発射済み薬莢にホンモノの未使用弾丸をねじこみ、薬莢の側面に識別用の小穴を空けただけの安価な急造品だったのだろう。だとすれば銃身のライフリングに弾丸のジャケット(被銅)が食い込んでしまうから、チャンバーから抽出するときに弾丸だけ残ってしまいやすいのは理の当然である。そんなもの映画で使うんじゃねえという話。

 プロップガンの銃身からモノが飛び出さぬように「蓋」がされることもある。その状態でもし実包または空砲を装填して発砲してしまうと、銃身が漫画表現のようにチューリップ状に裂けることもある。

 実銃を扱う射場では、第一原則として、すべての銃は実弾が装填されている危険があると考える習慣を全員が身につけねばならない。
 だが映画の撮影中はこの注意原則は徹底しにくい。悪役が主役の口の中に銃口を突っ込み脅すなどというシーンがあるのだ。

 撮影現場に臨場する「武器係(アーマラー)」は、本番撮影の前に、すべての小道具銃の銃身内をLED付きの内視鏡で点検して、異物が入っていないか、確かめる。

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 indomilitary の2021-10-23記事「Turkey Selects Two South Korean Companies to Supply Altay MBT Machinery」。
    トルコが国産しようとしている主力戦車「アルタイ」(ヒュンダイ製の「K2」のライセンス生産)は2016に試作車までできたのだが、2018年にドイツが対トルコに対するエンジン供与の規制に踏み切ったので進展が止まってしまっている。シリア(元トルコ帝国版図)へのトルコ軍のかかわりが問題視された。

 この戦車、エンジンは韓国製ではなくドイツのMTU製の1500馬力ディーゼルなのである。トランスミッションもドイツのレンク社製。
 現在、プロトタイプが10両だけ製造されている。ドイツのパワーパックが載っている。

 トルコの企業である「BMCパワー」が「バトゥー」というV12気筒の1500馬力エンジンを開発しようとしたのだがうまくいってない。
 そこでこのたび、ソウルのADEX2021にて、韓国の「Doosan」社および「S&T Dynamics」社が、BMCの1500馬力エンジンとトランスミッションの開発に協力するという話がまとまった。

 120ミリ滑腔砲は、MKEK社が分担する。

 これで、2023年から、最終的には1000両の「アルタイ」がトルコ陸軍に納品される見通し。
 4人乗りで、65トン。