艪 =Japanese scull を Windmill に応用した、metronome往復運動型の power generator は、なぜ有望か。

 艪[ろ]の英訳が無いということは、欧米ではこの着想を抱いたメーカーもたぶん存在しないということだろう。

 3枚翅を回転させる、もっか一般的な風力タービンは、いわば、paddle =櫂 の変形である。

 このタイプの弱点は、回転面が広大であるために「発電タワー」を「密植」できぬこと。

 また、回転軸もギヤボックスもジェネレーターも地上数十mの高所にあることから、単にその重さを強風に抗せしめて下から支えてやるだけでも巨大な mass のマテリアルを必要とし、その製造だけでもエコでない上に、設置や、故障時の交換作業が甚だ厄介で、落下事故の危険が必然的に伴ってしまう。

 設置と交換作業が大手間だということは、山間僻地での設置工事費とメンテナンスコストが余計にかかるということだ。これはわが国の地勢においては非常に不利で、あまり普及しないのはとうぜんであった。たとえば、里山の稜線に、気軽に設置工事する—というわけにいかないのだ。

 艪のメカニズムは、こうだ。

 漕ぎ手がハンドル部を押し引きして作り出す小さな往復運動が、「艪臍」を支点にすることで、艪の尾端部において大きな往復運動として、逆転的に反映される。
 その尾端部で発生した「揚力」が、「艪臍」を前へ推す力に転換される。

 これを、風力発電装置に応用するには、舟における艪の尾端部を中空へ持ち上げる。「艪臍」は地表面に位置する。そしてハンドル部は地下に位置せしめる如くする。

 力点は、艪とはぎゃくに、ロッド/タワーの上端「翼面」だ。
 ロッドが左もしくは右に振り切ったところで、そのつど、「翼面」の舵角はメカニカルに反転せねばならない。

 作用点は地下部で、その部分のレシプロカル運動から電磁誘導発電させる。

 地上露出部分の動きの外観は、天地逆さの振り子(inverted pendulum rod)たる「メトロノーム」に似る。
 が、metronome のロッドが固定された1平面しかなぞらないのに対し、艪式発電タワーは、自然風の風向に応じてワイプ面が垂直に交差する如く、装置自身を調節する。

 さらに、尋常でない強風時には、タワーを自動的に風下へ斜めに傾けて、破壊的な応力を受け流すような安全(防護)機構を付加してもよい。

 この、直立艪式発電塔は、1基の起電力は大したことがないが、システム重量が旧来の風車塔にくらべて格段に軽く、設置工事は地表と地下だけの作業となるので場所選定の自由度が高く、レンタルが必要な重機類は普通のグレードで済み、メンテナンス工事にも危険要素が少ない。そうなると、オーナーとしては、1基の起電力の小ささを、多数基の設置によってカバーするのに、心理的抵抗が少なくなる。

 密植の弊害は、ほぼ無いと考えられる。