「標的」を設ければ、誘導技術など無いないことがバレてしまう。だから誰も見ていない、何も存在しない海面に落とす。

 John Vandiver 記者による2021-11-24記事「German tax collectors continue to target US airman after he returns to America」。
    米国の国税庁のことをIRSというが、それのドイツ政府版が、退役した米空軍の下士官がドイツ駐留中の所得税をドイツ政府に納めていなかったとして、執拗に罰金追徴をかけようと迫っている。いまはフロリダで家族と暮らしているマシュー・ラーソン元曹長。求められている支払い総額は30万ドルを超えるとか。

 これに対して米国務省は異論を唱える。NATOの合意によって、ドイツ政府はNATO軍将兵たる米兵やDoD職員に所得税や追徴罰金をかけられないはずだと。この退役曹長のケースは、独米政府間の揉め事になっている。

 ラーソン曹長は7月に空軍を除隊。彼はラムステイン空軍基地からフロリダに引っ越した。

 だがドイツ税務署は追いかけてくる。11月8日にクセル・ラントシュトゥル(基地所在の地)の税務署からの手紙が届いた。2019年にラムステインの基地外に住んでいたのに所得税を納めていない。だから罰金200ユーロを納付しなさいと。

 ドイツの税務署は、給与だけでなく、基地外住宅を手当てされたこと、米兵特権として安いガス料金を適用されていたこと、基地内売店の特権、米軍関係者が通学する学校の学費が無料であったこと、なども課税対象だとする。それらを合計するとラーソンがドイツ税務署に納付すべき金額は30万ドルという。

 どうしてラーソンだけこんなことになっているのか。彼がドイツ女性と結婚したことと関係はあるだろう。

 米政府の見解。「ミリタリー・ヴィザ」を発給されている米軍軍人や軍属は、その給与所得に関して、海外の現地税務当局から課税の対象とはされない。

 しかしドイツの税務署は言う。NATO合意の「アーティクルX」に明記されているじゃないかと。すなわち、その米軍軍人が、純然、軍務のために来独しているのならば、ドイツ地方政庁は彼らに課税しない。けれども、このラーソン君の場合、純然軍務ばかりしていたとは看做せないのだ、と。

 ドイツ市民と婚姻したこと、ドイツ国内を旅行したこと、不動産を購入したこと、自動車を私有したこと、ドイツの学校に子どもを通学させたこと。ドイツ当局は、これらを軍務だとは認めない。

 なお、ドイツ以外の米兵駐留国(大きなところでは、日本、韓国、英国、イタリア、スペイン)では、米軍関係者の誰も、現地の地方税務当局からこんなイチャモンはつけられたためしがない。

 ラーセン以外に、ドイツには3万2000人以上の米軍将兵と数千人の軍属が居るはずだが、彼の他にも、地元の税務署とやりあっているケースがあるのかどうかは、米国側では把握していない。が、クセル・ランドシュトゥル税務署によると、400件くらいもあるそうだ。

 次。
 Nathan Picarsic & Emily de La Bruyere 記者による2021-11-23記事「How China Is Trying to Turn the U.S. against Itself」。
   2015年に習近平がはじめて訪米したとき、彼はまずシアトルに立ち寄った。そこでは中共と合衆国による第三回の「知事会」が開催されていた。

 中共は、全米の大小の地方自治体、地場産業、ローカル企業等に広範に地下工作を浸透させることによって、最終的に米国を転覆できると考えている。その活動のロードマップまであるのだ。

 地方のトップ3企業の経営陣、米中友好を標榜する地方の諸団体、メディア、NPO、そして知事や市長以下の地方公務員を篭絡する。この活動を、全米の規模――津々浦々で、展開するのだ。

 ようするに、強大な米国の連邦政府を打倒しようと思ったなら、まず「馬」から射て行くのが、遠回りなようでも、早道である。

 なべて地方レベルの人士は、「国防」はじぶんの問題ではないと思っているから、御し易いのである。

 この中共の仕掛ける大戦略に対抗するためには、米連邦政府はもっと積極的に地方の出来事を監視し口出しをして啓蒙しなければならないし、また地方の人士も、今ローカルに展開しつつある中共発の工作が、国家レベルの安全保障を脅かす目的に基づいているという危険意識を正しく持たねばならない。

 中共国内各地のソーラー関連企業が、めいめい、巨額の投資をチラつかせて、合衆国各地のメーカーと提携するケースが相次いでいる。とうぜんながら、これもローカルのビジネスの話ではない。地方政治を牛耳ることによって、中央政府が何もできないようにしてやれる。米国内に「米国政府の敵」を扶植して行く、大戦略なのだ。

 2015年に習近平が、ワシントンDCを訪れる前に西海岸で多数の地方要人と面談を重ねた行為は、かんぜんに、外交プロトコル違反であった。これを許認したのは、当時の国務長官のジョン・ケリーである。そして6年後にバレた事実。ケリーは、ウイグル人を奴隷労働させてソーラーパネルの低価格を実現して米国市場を席捲しようとしている中共の試みを阻止する法案に、反対するロビー活動をしている。

 ケリーは11月にインタビューで言い放った。ウイグル人などどうでもいい。俺とは関係ねえ。ソーラーの方が大事なんだ。

 このように中共は、米国務長官を取り込むこともできるのである。「地球温暖化」のようなテーマ設定にからめとられている西側の政治活動家に、そのテーマで協力しますよと申し出れば、敵は転ぶのだ。

 次。
 ストラテジーペイジの2021-11-24記事。
  タリバンの新アフガン(IEAと称す)政府が、先週から、エッセンシャルな公務員たちに対する給与の支払いを始めた。※ちなみに崩壊した旧政権はIRAと略される。

 この国庫の財源は、麻薬事業である。いまや数十億ドルは使えるはずだ。ちなみに銀行システムはパキスタンのものを使える。

 米陸軍は、解隊していた「第56砲兵コマンド」を復活させた。
 このコマンドは、射程500kmから5500kmまでの地対地ミサイルを差配する司令部だったのであるが、米ソINF禁止条約が批准されたことから、お役御免になっていたのである。
 しかし2019に米国はINFを離脱したので、昔に戻った。

 米陸軍は、2023年までに、三種類の新型地対地ミサイルを揃える計画だ。すなわち、レンジ500km級の「プレシジョンストライクミサイル」。レンジ1600km級の「ミッドレンジストライクミサイル」。レンジ2700km級の「ロングレンジハイパーソニックミサイル」。

 長射程を手早く得るために、米陸軍は、海軍の「SM-6」や「トマホーク」の既存コンポーネントも利用する。