リチウム電池のもうひとつのネック。

 Matthew Cappucci 記者による2021-11-27記事「New Earth observing-satellite beams back first images」。
    9月27日にヴァンデンバーグから打ち上げられた最新の地球観測&資源探査衛星「ランドサット9」が稼動開始し、その映像が公開された。

 「ランドサット」事業は1972に資源探査目的でスタートし、先代の「ランドサット8」は2013に軌道投入されて、まだ稼動している。企画と運営は、NASAと米国地理調査局USGSの合同。

 「ランドサット6」は軌道投入に失敗したので欠番だ。
 1999に稼動開始した「ランドサット7」も、まだ生きている。「ランドサット5」から前は死んでいる。

 何が見えるのか。陸水の利用状況。山火事の影響。珊瑚礁の劣化。氷河・氷棚の後退具合。熱帯雨林の伐採。
 80年代、中共が毛沢東路線からトウ小平路線に切り替えたことは、シナ全土の都市開発の模様を経時的に観察すれば確認ができた。

 ランドサットの周回高度は400マイル。解像度は30m。
 センサーのひとつは、可視光から赤外線まで、9つの波長帯に分けてイメージを受光する。
 もうひとつのセンサーは、輻射熱の相違を検知する専用の赤外線センサー。

 「ランドサット9」の軌道は、「ランドサット8」がスキャンしたところを正確に5日後になぞる。高度は「ランドサット8」より6マイル低い。

 したがって、まず「ランドサット8」で気になった場所を、「ランドサット9」で改めて精査することが容易にできる。5日間の変化量も把握できる。

 この軌道の微調整のためにNASAにはまだ時間が必要で、その仕事は2022-1に終わる。そのあとはUSGSに運用を任せてしまう。

 次。
 AFPの2021-11-25記事「Russia launches classified military satellite」。
    ロシアは早期警戒衛星を打ち上げた。火曜日にプレセツク宇宙基地から。

 おそらく「ツンドラ」衛星を放出したのだろう。
 「ツンドラ」は2015年、17年、19年に、計3機、投入されてきたもの。それに加えた。

 ロシアの衛星による弾道弾飛来警戒網は「Kupol」という。キューポラ=天蓋 の意味。

 次。
 ワイヤードの2021-11-2記事「Cars Are Going Electric. What Happens to the Used Batteries?」。
    この夏、オクラホマで「シヴォレー・ボルト」を所有するスピアーズ氏はニュースに注目した。メーカーからリコールがかかったのだ。理由は、そこに使っている韓国LG製のリチウム電池が、夜間充電中に発火するおそれがあるからだという。

 GMが米国内外で2017から販売した「ボルト」は14万1000台にもなる。

 搭載されているリチウム電池のセル1個はトースターオーブンの大きさだが、それが車両の床一面に並べられていて、総重量は960ポンドだ。

 これら多数のバッテリーを取り外すときには細心の注意が必要である。もしうっかり短絡させてしまうと、有毒煙が立ち昇り、さらには火災になる。

 スピアーズは11年前、GMの技術開発部長をつかまえて質問攻めにした。電気自動車のバッテリーが故障したり、寿命になったら、どうする気なのかと。
 そこで掴んだ。GMには特に計画がない。これは商機だと考えて「スピアーズニューテクノロジーズ」社を起業した。米国内で売られる、テスラ社以外の全メーカーの、廃バッテリーや中古バッテリーを扱うショップだ。
 劣化したバッテリーをユーザーから引き取り、状態を調べ、可能ならば分解修理し、再生する。

 再使用不可能な廃電池も、社有地内に於いてリサイクルする。
 こうして、いまやオクラホマシティにあるメインの倉庫には、電気自動車用の中古バッテリーが、地上から30フィートの高さにまで積み上げられている。資源回収技術の進歩を待っているうちに、これが資産になるかもしれない。
 だがおそろしいことに、リチウム電池火災には「放水」は厳禁であるはずなのに、この倉庫の天井には消火水の配管が配列されている。

 GMのボルトのリコールにより、このようなストックはいっそう増えるはずだ。

 国際エネルギー機構IEAの試算では、2020年代末には、1億4800万台~2億3000万台の電池駆動自動車が世界を走っているはずであると。すなわち全世界の自動車の12%が電池式だろうと。

 EPAのしらべによると、昨年、全米の市町村営のごみ集積場ですくなくも65件の、蓄電池が原因の火災が発生している。ただし、そのほとんどはスマホやラップトップPC用の小型のリチウムイオン電池であった由。

 リチウム電池の中にはリチウムやコバルトが使われている。これらの地下資源は海外で採掘・精錬されている。そのさいに、好ましくない労働力が駆使され、第三世界で余っているわけではない水が大量に消費され、二酸化炭素が放出される。つまり先進国がグリーンになる代わりに、レアアースの輸出地域は汚染を増す。

 だから、使用済みバッテリーから希少元素を回収して再利用する工程が、これから求められる。

 この目的で設立・運営されている企業がすでに複数ある。そのひとつはテスラ社の元重役がスタートしたものだ。

 カリフォルニア大学の環境工学の教授氏いわく。2040年までの新品バッテリーが必要とするコバルトとリチウムとニッケルの半分以上は、古いバッテリーのリサイクルによってまかなえるはずだ、と。

 従前の鉛硫酸バッテリーは、英国では95%がリサイクルされている。しかしリチウムイオンは複雑すぎて、そうはいかない。しかも電圧が高い。鉛バッテリーで感電死することはないが、リチウムだと致死的になり得るのだ。

 EVの電池から希少元素を取り出すための作業は難かしく、したがってコストがかかる。

 砕片化が必要である。そのためには、発熱と化学物質の放散を、封じ込めてしまえる本格施設が要る。

 リサイクル事業のコストの4割は、輸送費だ。死んだバッテリーをどうやって、再生設備の整った工場まで集めるのか?

 車両から取り外したリチウム電池(重さ約1000ポンド)は、安全上の問題から、長距離輸送を規制されるはずである。安全対策された特殊な仕様の輸送車でなくては運べない。だったら、事故で壊れたクルマまるごと、すなわち4000ポンドの大荷物を運んだ方が、話が早くなる。これでコストが低く収まるはずがない。

 それだけの費用をかけて、廃電池から抽出したわずかな量の希少金属が、第三世界で採掘・精錬される希少金属の値段より安くなることはない。現状、コバルトだけが、リサイクルしても採算に乗るのだそうである。

 ガソリン車でもディーゼル社でも、米国内で走れなくなると、廃中古車として海外に転売される。米国で売られた内燃機関自動車の4割以上が、最後は国外へ海送される。EVもそうなる。すでに、日産がまだ直接に輸出していない「リーフ」の中古車がウクライナを走っている。これは止められない。

 EUは、バッテリーと自動車のメーカーに、最後にバッテリーの回収とリサイクルを義務付けたがっている。昨年、それを提言した。その最終所有者が誰になるかに関係なく。また、あたらしく製造するバッテリーの中に使われるレアメタルの何割かはリサイクルされたものにしなくてはならない、という規制も考えている。

 ※ソース不明だが、米国のガテン系の時給ランキングは次の如くであるという。いちばん稼げるのが配管工で、時給27ドルから45ドル。以下、クレーン技師、ウインドタービン技師、商業トラックドライバー(25から37ドル)、重機オペレーター、空調工事(HVAC Tech)技師、自動車の鈑金工(22ドルから34ドル)、溶接工、大工(16から52ドルと幅が大きい)、自動車修理工(22ドルから32ドル/時)であると。すなわち単に人並み以上の生活がしたいのであれば、いまや、敢えて普通の大学には行かずにこれらの職種の修行を開始した方がずっと悧巧かもしれないのである。