グレーゾーンのグラデーションで攻めてくる相手に対してレッドラインを設定しようとするのは、広場に門番を立たせて透明人間を見張るようなもの。

 ストラテジーペイジの2021-12-8記事。
    なぜプーチンは2022年の1月か2月、すなわちよりによって厳冬期に、ウクライナで戦争を起こすだろうと見られているのか?
 それは、ウクライナ市民が生活の頼りとしている燃料である、天然ガスのパイプラインをカットするのに、とても都合がよいシーズンだからである。

 以前であったら、ウクライナ行きのガスを止めると、その先の西欧へもガスは行かなくなり、西欧諸国をまとめて敵に回してしまうおそれがあった。

 しかしこのたび、北海海底パイプラインが完成したことから、プーチンは、ドイツへのガス供給は継続したまま、ウクライナに対してだけ、ガス供給を止めてやることが可能になったのである。

 露軍の侵攻は、50個の大隊(諸兵科連合の独立作戦単位)により、国境の各所から一斉になされるであろう。 ただし攻勢は3日しか続かない。それ以上の補給力を、今のロシア陸軍は、持っていないのだ。

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 Barry Strauss 記者による2014-12-7記事「Another Date Which Will Live in Infamy」。
    FDRは1941-12-7に演説した。「この12月7日という日付は、これからずっと、恥知らず(infamy)の日として想起され続ける」と。

 キケロは紀元前43年の12月7日に、自殺を強制されている。FDRはそれを意識しているかもしれない。

 その2年前の紀元前45年の12月7日、キケロはナポリ湾に面した自邸に短期滞在していた。

 その1年前、キケロが信頼していたディオニシウスという奴隷が、キケロにとって最も貴重な哲学の書物複数を持ち逃げする事件が起きていた。噂ではディオニシウスは今、ローマ属領のイリュリクム(今日のクロアチア)に居るそうだ。それで、キケロはイリュリクムの総督2名に何通もの手紙を書いて、ディオニシウスと貴重書籍を見つけ出してくれるように頼んでいた。

 もっかの総督は、ワティニウスという男だった。ワティニウスは、そいつをとっつかまえてやる代わりに返礼をくれ、と露骨にキケロに要求した。
 ワティニウスが渇望していたのは、軍事的な名誉であった。それで、キケロがローマ最高の権力者であるガイウス・ユリウス・カエサルに対して口利き工作をしてくれることを頼んで来た。

 ワティニウスの弁明によれば、彼はローマのために新しい領土を占領したのであったが、悪い天候のために、彼の軍団はそこから退却するしかなかったのである、と。
 しかしカエサルは、ワティニウスが無能であるために敗北したのだと判断したはずで、そのためワティニウスの軍事的な出世や顕彰は、もはや望み薄であった。
 このカエサルの不興を、キケロがローマに行って解いてくれないかというわけだ。

 カエサルの権力は当時、絶大であった。彼の軍団が広大なガリア地域を征服したことを本国の貴族どもが妬み、カエサルを排除しようとしたことから、カエサルは軍団を率いたままイタリア本国になだれ込み〔これは国法違反だった〕、内戦を開始し、それに最終勝利して、有力な政敵は駆逐されていた。

 ローマは建前では「共和政体」のはずであった。が、いまやカエサルの権力が大きすぎて、帝政と変わりがなくなっている。キケロは共和制の支持者である。

 共和制ローマには貧富階層間の激しい闘争が何代も繰り広げられてきたという歴史があり、そこにはかなりな野蛮さも見られるものの、概してその社会はオープンで、市民には自由があった。

 しかし今のローマは専制政治にすっかり支配されている。カエサルは終身独裁を敷くつもりだろう。
 キケロにはそれは残念至極の世相であった。
 しかし、公人としてのキケロは、カエサルとの対立を避けて、静かに生き延びていた。

 もちろんキケロにはカエサルに対する影響力をいささか持っていた。
 キケロは法廷演説家として名を成し、哲学者でもあり、内戦後に残っている数少ないローマ政界の巨人だった。

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 Joseph Trevithick 記者による2021-12-7記事「The Wreck Of A Crashed British F-35 Has Been Pulled Out Of The Mediterranean」。
  英国国防省発表。地中海に転落したF-35Bは、無事、引き揚げられた。

 ※なんか函館空港にF-35Aが2機着陸したそうなんですけど、当方、私有車を売り払ってしまっておりまして、タクシー代5000円もかけて飛行場まで往復できなかったのは残念であります。敷地外から撮影できる良いスポットがあるんですけどね。おそらく空港ビルの屋上からでも俯瞰できたと思いますよ。コンパクトな飛行場なんで……。あと、航空基地としてはほとんど使われていない八雲基地で、先月くらいに有事の「分散基地化」訓練をやってたみたいですね。『朝雲新聞』を見るまで、知りませんでした。