「単装軌(single track)」は、進化論的な「ヴァーチャル分岐」の起点になる。

 アマゾンの「おまけコラム」の《革命的兵器と進化論》は、もうお読みくださいましたでしょうか?

 新刊の205ページに写真で紹介いたしましたカナダ製の「MTT-136」は、今でも製造と改良が続いていますようで、ベンチャー応援団の私としては、目出度い。ユーチューブの複数の動画で確認ができます。さいきんは、歩兵がつきそっての、近侍リモコン操縦も、できるようにしたようですな。「電動」の強みでしょう。

 ある兵器システム(たとえばMBT)が、進化の袋小路に達してしまったら、それをさらに洗練・改良・強化しようと努力しても、ほぼ無駄です。それはとっくに収穫逓減モードに入ってしまっているのです。

 それよりも、その兵器がそもそも誕生した基点よりもさらに一、二段、原始的なレベルにまで、システムをいったん退化させた姿を、脳内で想像してみてください。

 それを「進化の《ポッシブルでレトロな》新分岐点」として、これまでのMBTとは、まるで異なった方向へ「再進化」させることを考えるのが、革命的兵器を作り出すコツであります。

 おそらく、ひとまわり大型化した単装軌の新概念オフロード車両(APC)は、前後二重連接式にタンデム結合することによって、異次元の不整地走破性能を発揮してくれると思う。

 スノーモビルが沼地にハマれば、絶体絶命ですけれども、タンデム重連の車両は、後退脱出がかならずできます。前車が左右に傾き出したら、後車が踏ん張って、引きずり戻せる。

 さらに、モノトラックの前後重連のスタイルで、上陸用舟艇ができるはずなのです。全体を浮航させるか、それとも、全体を思い切って沈めてしまって、水底から這い上がるようにする。電動は、これができるから。

 AAV7でもとりつくことが不可能な、荒れ磯に、自在に上陸できるようになると思います。

 次。
 Jonathan Panter and Johnathan Falcone 記者による2021-12-28記事「The Unplanned Costs of an Unmanned Fleet」。
    LCSの15年間の運用経験は、さんざんだった。が、これも良いデータだといえる。

 人を減らせるというのが謳い文句だったが、人が少なくなるということは、それじたい、このサイズの水上軍艦としては致命的であることがわかった。
 なぜかというと、何か軍艦に問題が起きかかったときに、それを発見してくれるのは、乗員なのである。
 その乗員がいないということは、不具合や危険が生じ始めている、その最初の兆候の発見が、遅れてしまうということなのだ。
 これでは実戦では、もっと狡猾な敵の奇策にしてやられてしまいかねない。

 従前の『オリバー・ハザード・ペリー』級のフリゲートには176人が乗っていたのを、LCSでは40人に削減しようとした。これは、無理すぎた。

 人が減らされるなら、そのかわりに、機械が機械をチェックできるようにしておかなければならない。そのための機械(ハイテク)投資は、天井知らずのコストUPを招いた。それを開発するのも「人」だからだ。

 さらに、そのハイテク機械にもまたメンテナンスは必要である。そのメンテナンスと修繕のコストは、普通ではなく高くなった。

 機械を操作する人員を減らさむと欲さば、結果として、その機械を最初に設計してやる部門が大量の人を雇わねばならぬ。人はトータルでは減らない。部署が移動しただけとも言える。したがって箆棒な初期人件費が機械コストに反映されるから、取得費用を含めたシステム全体のライフサイクルトータルコストはちっとも安くならぬ。

 ※ぜんぜん関係ないが、「9Gag」の投稿によれば、1974年に北朝鮮はVolvo社から乗用車を1000台買い付け、その輸入代金を未だに支払っていないのだそうだ。これが史上最大の自動車詐欺事件だそうである。



亡びゆく中国の最期の悪あがきから日本をどう守るか 国防秘策としてのプロスペクト理論

おまけ兵頭コラム『革命的兵器と「進化論」』がもらえる『亡びゆく中国の最期の悪あがきから日本をどう守るか』Amazonキャンペーン特典のページ

兵頭二十八  note
https://note.com/187326mg/