豪雪山塊はすべて、発電所に変えられるはずである。

 Eliot A. Cohen 記者による2022-1-27記事「Putin’s No Chess Master」。
   ※記者は元国務省顧問で、近著には《ソフトパワーなんて無力。巨棒だけが意味がある》というものあり。

 プーチンが恐れているのはウクライナがNATOに加盟することではない。ソ連から切り離されて30年にして、民主主義化の流れが定着しようとしている、そんな見本にウクライナがなっていることなのだ。この見本を破壊してやりたいのである。その口実は何でもアリなのである。

 アゼルバイジャンのような、他の「旧ソ連諸邦」もウクライナの道を支持している。プーチンは知っているのだ。ソ連はもう再建できない。

 これと似ているのは、1956年にエジプトに侵攻した英仏政府。とっくに「帝国主義」の時代は終わっているのに、それにあらがって、世界じゅうから袋だたきされ、何も得る物がなかった。

 プーチンはNATOにすごい贈り物をくれた。ソ連崩壊後に軍事同盟は必要なのかという庶民の疑念に、あまりにも明白な答えが投げ込まれてきた。ロシアある限り、それは必要なのである。いまやスウェーデンとフィンランドも、NATO加盟を真剣に考慮中だ。

 今のロシア軍は赤軍当時から「三つの基本」が改善されていない。すなわち、装備のメンテナンス、兵隊の士気、そして指揮官のイニシアチヴだ。

 世界のどの国においても、陸軍は、その国家国民の姿をそのままに反映する。ロシアの場合は、陋劣な保健衛生、天然資源の輸出で外貨を稼ぐという経済構造の原始性、腐敗し私益を追い求める指導者層……。

 サイバー戦線に関しては、西側が遠慮して攻撃を控えていたから、ロシアがプレイヤーとして目立ったのだが、もしサイバー反撃を受ければ、ロシアこそがひとたまりもない。

 1864年5月、ロバート・E・リーは、南軍の最後の力をふりしぼり、北部に反撃しようとしていた。北軍の司令官ユリシーズ・グラントは、しかしこの「ウィルダネスの戦い」で南部の力が尽きることを知っていた。

 ところがグラントの帷幕外の将官たちときたら誰も彼も、「私はリーをよく知っています。リーは全力で我が軍の左翼(もしくは右翼、もしくは後方、もしくは中央)に、とつぜん現れて我々を孤立化させ、撃砕するでしょう。危機です!」と、うろたえまくった注進ばかりするので、グラントはうんざりしてしまった。

 今、「プーチンはリスペクトを欲している」などと得々と精神分析している論筆家たちの蔟生と、グラントほどの総合判断力をもっていなかった南北戦争当時の凡庸な将官たちの姿は、重なって見えるのである。

 次。2022-1-27記事「A leap forward for terahertz lasers」。
   テラヘルツ・レーザーに技術的な躍進。0.25テラヘルツから1.3テラヘルツまで、120段階に周波数を切り替えることに成功。しかも、低温ではなく、室温で。装置も、十分に小型になった。

 このレーザーを使えば、皮膚癌や乳がんをスキャンによって発見できる。
 薬物の探知にも重宝。
 また、このレーザーを光ファイバーに通すと、情報伝送量が爆増する。

 テラヘルツ帯は、電磁波と赤外線の中間領域。これまでは低温で巨大装置を作動させないと、そのレーザーを作り出せなかった。

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 「U.S. DOE Provides $25 Million for R&D and Demonstration of Wave Energy」という記事。
    米エネルギー省が、波力発電装置の開発のために2500万ドルを支援につぎ込む。

 全米で8つの開発プロジェクトがあるので、それらを後援する。

 ※わが国では2021年以降、経産省等が重要データをあきらかにしてくれている。英国と比べた場合、日本領土の水際には、水深30mより浅い海面の面積が「八分の一」しかない。つまり海がすぐに深くなっているために、「着床式」で風力タワーを建てられる場所はごく限定されてしまう。着床式でないとすれば「浮体式」になるが、それは工費等が嵩んでしまい、価格競争力がない。しかも欧州の北海の平均年間風速が、10m/秒あるのに比し、日本の東北~北海道は、7.7m/秒。すなわち欧州のマネはできないということが、事業の前からもう分かっているのである。既存のタワー形式の風力は、ダメだ。

 ※そこで提案したい。日本の雪は重い。それは位置エネルギーである。これは利用できるはずだ。巨大な「ししおどし」を作ればいい。冬から春先にかけて発電し、夏にメンテナンスする。北国は冬に電力を使うから、それで助かるはずだ。

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 indomilitary の2022-1-26記事「Inspired by the success of Bayraktar TB2, Turkey plans to build a mini-submarine fleet」。
   トルコはこんどは、小型潜水艦の国産に挑む。『STM-500』と称している。造船所はSTM社。

 同社は2021年8月に、デザインを公表している。
 重量540トン。浮航時の排水量は485トン。
 全長42m。
 ディーゼルとリチウムイオン電池の併用。輸出バージョンは、オプションでAIPも。

 乗員は18名。それに加えて6名のフロッグマンを便乗させる。
 深度は250mまで安全。
 無補給で30日間、活動できる。

 魚雷発射管は4基だが、魚雷は8本積んで出港する。

 ※西側の艦隊および商船による北極海プレゼンスを増やすには、北極海用の救難船を充実させておく必要がある。しかし日本は原子力砕氷船は造れない。ならばどうすればいいか。特殊形状の「潜水艇母艦」を使う方法が考えられる。『しらせ』級の救難艦に、小型の「氷上救助用潜水艇」を搭載する。それは母艦の舷側または船尾から垂直に泛水させ、且つ、揚収するのだ。

 ※このコンセプトで知見を積んだら、それが、将来の「無人潜水艦隊」の実現に直結する。大型の有人潜水艦を建造したことのないトルコでも、小型の潜水艦ならば建造できる。とすれば、国内建造にこだわる豪州だって、この「大型母船+小型潜水艇」の流儀で、南シナ海の水中作戦能力を充実させられるはずではないか。