《note》 https://note.com/187326mg/  の最新号は、 ★《続・読書余論》 ポーランドの防衛問題・軍事史 摘録集 です。

 Fehim Tastekin 記者による2022-1-24記事「Why Turkey wants to mediate in Ukraine crisis」。
    トルコの苦悩。
 それは1936モントルー条約。
 黒海の沿岸国ではない国の軍艦は、ボスポラス&ダーダネルス海峡を自由勝手に通航できないようにする仕組みだ。
 トルコがNATOから抜ければこんな条約はロシアには強制できなくなる。
 だからNATOの東方拡大にトルコは賛成するしかない。しかしそうするとロシアとの対決必至。
 ウクライナの次に、露軍の攻略対象にされてしまう。

 というわけでエルドアンは、外見的には「トルコは中立」と見せるしかない。

 エルドアンは2月にキエフを訪れ、その足でモスクワに向かい、緊張緩和をなんとか斡旋したい。

 ※TB2が大活躍してしまうとプーチンからエルドアンが恨まれるので、予防線を張るのにてんてこまいという感じだ。ところで北海道にやってくる最大の猛禽である「オオワシ」は、体重が9kgある。これは、「手投げ式自爆UAV」を新規に設計するときの、標準の目安になるのではないかと思う。最大離陸重量を9kgとして、そこになんとか4~5kgのサーモバリック爆薬(この分量ならばMBTにも有効)を充填し、ごく低速で飛翔させて、250mくらい先の目標を襲撃させる。レンジを欲張らなければ、じゅうぶんに安く大量生産ができるはずだ。市街戦の場合、敢えて「誘導させない」という選択もあるはずだ。

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 ストラテジーペイジの2022-1-26記事。
   イスラエルはUAEとは2020に外交関係を正常化した。それいらいイスラエルの軍事メーカーがUAE内に支社を置いているのだが、エルビットのUAE現地法人であるESELは昨年末、でかい商談を成立させた。

 UAEの保有するエアバスA330機、とくにそのタンカー型(正確には「マルチロール・タンカー・輸送機」MRTT)の、消極自衛装置一式だ。

 敵ミサイルの飛来を赤外線パッシブセンサーで探知して自動的に敵ミサイルを幻惑させる。

 すなわちフレアを投下するとともに、ターレット式の赤外線レーザー銃によって、飛来する敵ミサイルのIRシーカーを塗り付け、盲目化させるのだ。

 じつは欧州各国では、民航機がフレアをバラ撒くことを禁じている。下界の民家に火事を起こしてしまう可能性があるからだ。

 エルビット製の、ロボット式IRレーザー砲塔は、この問題をクリアする。

 センサーの構成だが、2個から6個の機外カメラによって、接近する敵ミサイルをパッシヴに探知する。脅威度を判定するのはAIである。そして、球形ターレットで首振りするレーザー銃を指向せしめる。

 ※おなじようなシステムを今では韓国メーカーも国外市場へ売り込んでいる。誰も解説しないのが不気味なのだが、スターウォーズの「R2D2」もどきといえるボール型レーザー砲塔(銃身は外には突き出さない。ドームの内側で動くだけ)は、赤外線波長を可視光線波長に変えれば、そのまんま、敵戦闘機のパイロットを目潰ししてやれる兵器になる。WWI中の「複座戦闘機」のリバイバルだ。ここにも進化論の大原則があてはまっている。いったん、進化の階梯を何段階かあともどりさせ、そこからあらためて別分岐の進化をやりなおさせることで、革命的システムを入手できるのである。

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 Andrew Eversden 記者による2022-1-25記事「Oshkosh Defense announces first hybrid electric JLTV」。
   オシュコシュ社は、自主的な社内投資として、JLTVを30分だけ、電池&モーターだけで走らせられるようなレトロフィットキットを開発した。

 静かな偵察が、短時間だけ、可能になるわけ。

 JLTVはすでに米陸軍と海兵隊に計1万5000両以上、納品されている。

 このためのバッテリー容量は「30キロワット・アワー」。
 しかもこの改造をほどこしたあとは、JLTVじたいが「発電車」になることができるので、外部に115キロワットアワーの電力を給電してやることもできる。

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 Joseph Trevithick 記者による2022-1-26記事「Here’s What Those ‘Bunker-Defeat’ Rockets The U.S. Sent To Ukraine Are Actually Capable Of」。
    米国はウクライナに、大量の「M141 バンカー破壊弾」を供給している。歩兵1名で携行して発射できる、使い捨て式の万能ロケット弾である。

 米空軍が公表した写真によると、1月22日に、デラウェア州のドーヴァー空軍基地から、「M141」をボーイング747貨物機に満載して、キエフに空輸したようである。
 この機体は「ナショナル・エアライン」が運用する。

 今日、この兵器はBDMと略称される。「SMAW」(Mk153 肩射ち多目的アサルト火器)という既存の使い捨てロケット弾から派生させたものゆえ、当初は「SMAW-D」と呼んでいた。ちなみにSMAWは使い捨て型ではなかった。
 1990年の開発当時は、この火器の使用目的は、敵の、コンクリートで強化された塹壕であった。

 もっとさかのぼると、イスラエルに「B-300」という歩兵用のロケット火器があり、SMAWはそれをベースにマクダネルダグラス社が改良したのである。海兵隊用に。1980年代の話。

 最新のBDMは、二重機能高威力炸裂弾頭(HEDP)を発射する。
 SMAWが500m飛翔したのに比してBDMは250mに抑制。

 ものすごく簡単に説明すると、BDMは、「M72 LAW(軽量対戦車弾薬)」の現代版なのだ。

 市街戦でビル壁の向こう側の敵兵を殺傷するのに役立つ。
 しかしMICVくらいのAFVなら、そのアーマーも破壊できる。

 ※キエフやハリコフで、近代軍が苦手とする市街戦が、延々と続くぞ、という「悪いプロスペクト」を露軍の参謀本部作戦課員に持たせようという「軍to軍」の心理戦である。政治家がBDMと聞いても、その意味までは分からないが、それでいいのだ。敵軍の参謀が分かっていれば。

 ※SMAWについては拙著『尖閣諸島を自衛隊はどう防衛するか』の pp.174~177 にいささか概説してありますので、どうかご参照ください。

 ※ところで先日クビになったドイツ海軍の制服の長だが、あいつはわざと辞任したくて、計算ずくであんな発言をしたのではあるまいか。ということは、穿って考えると、米海軍は今、黒海で、所在の露艦艇を全滅させてやるつもりで準備を進めているのではないか? 《クリミア砲撃にドイツ海軍もNATOとして加われ》と迫られたら、とても困ってしまう。バルト海に飛び火するからだ。それで、ノイローゼになり、わざとクビになる道を選んだのではないか?


★《続・読書余論》 ポーランドの防衛問題・軍事史 摘録集


尖閣諸島を自衛隊はどう防衛するか 他国軍の教訓に学ぶ兵器と戦法