《note》 https://note.com/187326mg/  にUpした最新《続・読書余論》は、スラヴィンスキー著『千島占領 一九四五年夏』1993年訳刊 です。

 スターリンが、沖縄の嘉手納基地のような米軍の航空基地を択捉島に置かれることを早くからどれほどに嫌がっていたかを、ふりかえって確かめておくことには、意味があります。
 非常に興味深いことに、1993年当時の著者スラヴィンスキー氏すら、この点を軽視しており、四島まとめて返還できるなどと考えていたこと。

 日本側は、道東の釧路以北に、三沢基地並の(すなわち択捉島の飛行場など霞むくらいの)一大空自基地を整備して、対抗不能性を誇示し、その上で「3島」を落としどころに平和条約(日露終戦条約)を呼びかけることだけが、唯一の可能性でしたが、外務省周辺にも誰もその地政学を理解できる者がおらず、チャンスはむざむざうしなわれて、プーチン時代に移ってしまいました。

 かつて「シナ通」を誇った者が対支政策を根本的に誤ったように、「ロシア通」を自認する者たちがこの問題の解決の芽を摘んだのです。

 ソ連軍による択捉島への侵攻が、まず「カタリナ」を使ってなされようとしていたことも、あまり認知されていないでしょう。それほど、飛行場の制圧には高い優先順位を置いていた。

 また、海岸防御には大量の地雷と機雷を使うのがとうぜんであったロシア軍の目には、日本軍の千島防衛にそれらがまったく使われていないことが、いかにも奇異に映ったことも、『千島占領』はよく伝えています。

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 SOFREP 2022-2-6記事「Blow The Man Down: Same Sex Marriage Was Practiced By Pirates?」。
    18世紀に西インド諸島海域で有名になった海賊「黒ひげ」は実在の人物で、英国ブリストル生まれ。
 彼は、どのくらいの期間、暴れていたか。たったの2年である。そう、海賊は長生きができぬ商売だ。

 海賊船は小型で快速だった。商船を見つけたら砲撃などしない。乗り移って、船まるごと、捕獲する。
 その商船が予想外に重武装だったり、乗員が戦意満々だったりすれば、海賊はあっけなく殺されてしまう。出たとこ勝負だから、寿命が短いのもとうぜんだ。

 海賊の世界では、捕獲財の分け前は、親分とその副官が最初にいちばん多く取るのだが、その余は、全ての子分のあいだで平等に分けた。

 この慣行、仲間がひとり死ねばじぶんの取り分が増えることを意味する。
 ということは、仲間同士の殺し合いも、いつ始まるかわからない。
 そこで、仲間の所有物をめぐる殺し合いを抑制する方策として、17~18世紀の海賊のあいだでは「マテロタージュ」という同性擬制婚が自然に発達した。

 語源はフランス語。というのも最初にフランスのバッカニアが創始し、それが全海賊に普及したものだからだ。

 すなわち男2名の間で収益は共有することにし、互いにピンチを救い合い、もしどちらかが死亡したときはその財産をかたわれが正当に引き継ぐという契約をかわしたのである。
 この関係は、プラトニックではないことが多かった。

 17~18世紀の欧州ではホモは絞首刑なので、それを嫌って海賊に身を投じた男もいたという。

 そんな海賊同士の婚姻契約にさいしては、海賊キャプテンや海賊司祭が立ち会って式を主宰。指輪が交換されたという。

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 Nathan Jeffay 記者による2022-2-7記事「Israeli lab-made spinal cords get paralyzed mice walking; human trial in 3 years」。
  イスラエルで、ねずみの脊髄治療実験、大成功。長い間、麻痺していた15匹のうち12匹が、普通に歩けるまでに復活した。
 3年後には人間による臨床試験が始まるとのこと。

 やったのはテルアビブ大学。
 ヒト由来の脊髄細胞を、マウスに移植してみた。

 人間に適用するときは、本人の細胞をもとにする予定である。さすれば、拒絶反応抑制のための、好ましくない投薬は必要なくなるから。

 世界中で、幹細胞を使った、脊髄損傷患者の治療研究がなされているが、これまで成功報告はひとつもない。
 テルアビブ大は、ヒトの腹部の生検を遺伝子改造して脊髄細胞に育てた。
 そしてこれが、短期麻痺マウスだけでなく、長期麻痺マウスにも有効だと確かめられたのだ。

 長期麻痺マウスで80%が四肢機能復活。短期麻痺マウスなら100%が完治したというからすごい。

 2年半後に臨床にもっていきたい。もともとヒト生検だから、確認のステップが最初から早いのだ。

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 Sandra Erwin 記者による2022-2-6記事「Space Development Agency, General Atomics eye options after setback in laser comms experiment」。
    
 昨年の6月30日に軌道に投入した、2機のキューブサット同士で、赤外線レーザーを使って衛星通信ができるかどうかの実験が、うまくいってない。
 請け負っているのは、ジェネラルアトミクス社の電磁システム部門。

 発注者の宇宙開発局によると、衛星が不羈旋転してしまっているようだ。そうなった原因は、軌道に投入したロケット「スペースX」にあった。

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 Kristin Huang 記者による2022-2-6記事「Why China’s J-20 Mighty Dragon may lack the firepower to use laser weapons」。
    中共の「殲20」戦闘機に有力なレーザー兵器を積めないでいる原因は、国産エンジンが非力で、必要な電力を作り出せないため。

 また、機速が超音速域に近づくと、衝撃波が形成されるために、それがレーザー光線を攪乱して、威力をなくしてしまう。この問題にも直面している。


★《続・読書余論》スラヴィンスキー著『千島占領 一九四五年夏』1993年訳刊