★《続・読書余論》の最新Upは、「経済制裁関係」と「食糧備蓄関係」です。

  https://note.com/187326mg/  の《note》で、お確かめください!

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 Mark B. Schneider 記者による2022-2-14記事「Putin’s Arms Control Gambit: Arms Control Without Russian Compliance」。
   2022-2-2にロシアは、ジャーナリストを経由して《半公式》に対米脅迫宣伝をさせた。すなわち、地上機動式のICBM「ヤルス」を、2個発射師団分、常駐の基地の外に「演習」で展開させた、というのである。ICBM演習を真冬にやることは普通ではない。

 テーブルの上に銃を置きつつ、ロシアは「交渉しよう」と言っている。
 だが米政府はうそつきとの交渉は得意ではない。

 米政府(オバマ政権)はロシアがINF条約に背いていることを2011年に知ったのにもかかわらず、その違反行為(9M729のことだが、オバマ政権は名指しせず)について2014年まで公表をしなかった。結局米国(トランプ政権)はINFから2019に脱退する。

 スペイン・メディアの『エル・パイス』が2-2にリークした、おどろきの秘密文書。米国とNATOはロシアに対して約束した。われわれは東欧諸国には、攻撃兵器・核兵器を常駐配備しない、と。

 現状、東欧正面では露軍の通常兵力と戦術核戦力が圧倒的に優越しているのだから、これでは対露抑止など成り立つわけがない。

 プーチンは「安保確約条約」を米国とNATOによびかけている。その厚顔無恥な要求条文も、全文が公表されている。

 たとえば、こんな条項が並ぶ。
 《米国は、非核武装機であっても、重爆撃機を、米国の領空外では、飛行させない。ロシアも同様とする》
 《米国はロシア国内に届くミサイルは短距離のものであってもロシア周辺に配備しない》
 《米英仏露のSSBNは、それぞれ自国の領海内から出ないこととする》
 《米国は米国外にある核兵器をすべて撤収し、その貯蔵施設は破壊する》
 《米英仏は、非核国の外国軍民に、核兵器運用にも使える兵器の訓練を施さない》

 もしロシア提案の新条約を呑むとしたら、米軍の駆逐艦は射程900マイルのトマホークを運用できるのだから、ロシア領海から900マイル離れた場所にしか所在できないことになる。「航海の自由」はなくなる。

 ロシアは北極海の大陸棚について領有権を主張しているので、北極海のどこが公海なのかについての合意も、そもそもできない。

 ロシアは、「バックファイアー」は《重爆撃機》には含まれないという立場だ。「New START」条約ではバックファイアは非核爆撃機だと定義された。しかし誰が見てもバックファイアは核兵器を運用できる。
 ロシアの国営メディアも、射程4500kmの核弾頭装備可能な巡航ミサイルをバックファイアが運用できるというロシア国防省の自慢を報道しているのである。

 「START」条約では、空中発射式でレンジ600km以上の弾道ミサイルは禁止されたのだが、「New START」ではその禁止が撤廃されている。だからレンジ2000km以上の「キンジャル」弾道ミサイルを、露軍の単座戦闘機が運用できるのである。これには核弾頭を装置できる。
 2022-1にはロシア国防省は、ミグ31の1個飛行連隊がキンジャルを運用可能になったと発表し、さらにTASSがそれに追加して、キンジャルをバックファイアにも搭載させると報じている。

 9M728は、初期には「R-500巡航ミサイル」と報じられた。500というのはレンジ500kmを強調するのだが、じつは1000kmの試射をやっていたことが Pavel Felgenhauer 記者の2014年のスッパ抜き等で隠せなくなり、さらに燃料タンクの工夫次第でレンジは3000kmにも伸びると推定されたのである。

 ロシアは「New START」でまんまとせしめたこと、すなわちロシア側だけが条約違反をやりほうだいにできるつごうのよい新環境を、いわば「ニュー INF」として、また再演したいもののようである。

 ロシアは自国製のミサイルの真の射程をごまかす。それがINF破りの常套策であった。同じことが「新条約」で繰り返されるだろう。ロシア側は長距離核ミサイルを堂々と国境と領海に配備できる。

 ロシアがチートできるチャンスは、100%である。
 2016年、ロシアは、アラスカから86マイルの場所に、核ミサイルを配備しおえた。ところがその事実をモスクワは絶対に認めようとしないのである。

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 Sandra Erwin 記者による2022-2-13記事「Lockheed Martin terminates agreement to acquire Aerojet Rocketdyne」。
   ロッキードマーチン社は決定した。米国最後の独立系のロケットエンジンメーカーであるアエロジェット・ロケダイン社を44億ドルで買収する話は、止めたと。

 この買収話については連邦通商委員会が2020-12に、独禁法違反で提訴する意向を表明していた。

 さらに先月には、4対0で、差止め命令の準備に入ることを決めていた。そのような合併がなされれば、他のロケット部品メーカーはもはや経営が成り立たなくなり、国防強化に必要なミサイルの競争試作が将来、ありえなくなるから。

 現在、アエロジェット・ロケダイン社は、ロックマートに対してだけでなく、他の兵器メーカーに対しても、推進装置部品等を納入している。


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