「輸8」のASWバージョンが墜ちた。南シナ海に。

 indomilitary の2022-3-10記事「Britain is Ready to Send MANPADS Starstreak Missiles to Ukraine, Missiles That Are Also Mainstays Of The Indonesian Armed Forces Arhanud」。
   英国はすでに3615発もの「NLAW」対戦車ロケット弾をウクライナ軍に供与したが、それに続けて、「スターストリーク」地対空ミサイルも送ることになった。

 ウクライナ軍はすでにNATO諸国から900発以上のMANPADを受け取っている。

 スターストリークは、別名HVM(高速ミサイル)という。世界のどのMANPADSよりも、飛翔体は高速なのである。他のMANPADは一段モーターだが、スターストリークは二段燃焼になっていて、二段目が燃え終わった瞬間には、スピードがマッハ4に達する。

 ちなみにインドネシア陸軍は、スターストリークを、ランドローバーの「ディフェンダー」に装載して使っている。

 スターストリークのミサイルはチューブに入った状態で15年間、品質が保たれる。

 射手がレーザー式照準装置を敵機に向けると、スターストリークが自動的に最適な発射方位角と仰角を計算して飛翔体が飛び出す。400m先でミサイルは音速を超える。そして1段モーターだけでミサイルはマッハ3.5まで加速され、3本のダーツを、榴霰弾式に前方へ放出する。ダーツは長さ396ミリ、径22ミリ。タングステン合金のダーツ1本の重さは900グラムである。

 ダーツの先端には炸薬450グラムが充填されていて、これは遅延信管で作動する。つまり、近接信管ではなくて、ダイレクトヒットで撃墜するのだ。

 最大レンジは7000m。最大射高は5000m。

 ※やっと真打登場だ! 今次戦役で浮かび上がったのは、MANPADで固定翼戦闘機を落とせないわけじゃないがなかなかそれは難しいという、前から予想されていた現実(スティンガーがスホイを落としたのはさすがというしかないが……)。他方でウクライナ兵レベルのずんだれた軍隊が、複雑な通信連携が必要な西側製の「短SAM」をポンと供与されたところで、うまく使いこなせるとは、とても思えなかった。だから、肩SAMと短SAMの中間性能の、歩兵2名ほどにて人力ポータブルな、基筒支持発射式のSAMシステムが、必要だったのだ。それがついにキエフへ送り込まれる。

 次。
 Thomas Newdick 記者による2022-3-9記事「After An Abysmal Start, Here Is How Russia’s Application Of Airpower In Ukraine Could Evolve」。
    おそらくVKS(露空軍)は、各航空基地レベルにおいては、直前まで開戦計画を知らされていなかった。だから、混乱した開戦スタイルになってしまった。

 ○月○日に開戦するとわかっていれば、たとえばメンテナンス計画を調整して初日の稼動機を増やし、兵装搭載も事前に済ませておくことができるが、急に実戦飛行命令が下達されたので、おっとり刀のさみだれ式出撃となってしまった。

 大きな謎。開戦から数日間、ウクライナ空軍所属のミグ29とスホイ27が、各地の都市の上空を低空飛行し、国民の士気を鼓舞した。
 どうしてこれらの戦闘攻撃機は、開戦劈頭の夜間ミサイル奇襲によって地上で破壊されなかったのか?

 ※記者は踏み込まないが、これは米国とNATOがウクライナ空軍にリアルタイムで開戦警報&襲来予報を与えていたことを示唆する。

 VKSはCASが低調である。対して、ウクライナ空軍のスホイ25は活動している。

 おそらく露軍のSAM部隊は、敵味方の識別がうまくできていない。味方に撃たれて撃墜されたVKS機がまじっているはずだ。CASが低調なのは、味方の対空ミサイルが怖いからだろう。

 味方空軍のジェット戦闘機は見境なく撃墜してしまうのに、低速なプロペラ推進の無人攻撃機TB2は発見もできず、墜とせない。ぎゃくに車載SAMがTB2から何両も撃破されている。

 露軍地上部隊は味方のエアカバーなしの侵攻を余儀なくされている。

 開戦劈頭に空軍機から「Kh-31P」ミサイルが、ウクライナの防空レーダー制圧のために発射されたことは残骸証拠があって間違いない。しかしそのあとは、精密誘導兵装の使用が見られなくなり、無誘導兵装による空襲ばかりだ。

 露軍は、ウクライナ機が高空を飛べば、長射程SAMを国境越しに発射して撃墜することができるし、ミグ31を向わせることもできる。だからウクライナ軍機は今、低空だけを飛んでいる。戦闘機が低空を飛ぶ場合、そのシチュエーションアウェアネス(周辺警戒力)は低下する。

 ※この記者はどうしてここで解説を止めてしまうのか? NATOのAWACSからウクライナ軍の地上管制局経由で露軍機の出没情報を逐一教えてもらえるのなら、高空を飛ぶ必要はぜんぜんないのである。またおそらくSAM陣地の位置情報もすべて教えてもらっているはず。

 ロシア国防省は3月7日、スホイ35Sが、対レーダーホーミングミサイルである「Kh-31P」などをフル搭載している映像を公開した。この宣伝の意味が何なのか、西側は悩んでいる。

 ※米軍のAWACSを撃墜するぞという脅しのつもりなのかもしれない。「電波源に勝手にホーミングしたので」といういいわけをする下準備だ。逆に見るなら、それほどNATOの与える「情報協力」がおそろしく「効いている」のだろう。

 露軍の地上部隊にはFAC(最前線航空調整将校)が不同伴であることも確認できている。したがってCASの能率が非常に低い。CASを実施するなら、直協機が低空を飛んでパイロットが目視で地上目標を探すしかない。それではMANPADの餌食になりやすい。※しかも友軍誤爆の危険が大。車種が同じなんだから。

 ※別記事によれば、ウクライナ軍が装備する「S-300」と「Buk-M1」は、露軍のスホイ25×4機と、ヘリ×2機を撃墜した。また、露軍の巡航ミサイルも2発、撃墜している。ウクライナ空軍機は全滅しておらず、CAS任務で作戦し続けている。

 ※すばらしいのは、ウクライナ軍の現在位置や移動情報を暴露するが如きSNS投稿は自粛されていること。「語るな軍機」という戦時スローガンが、何の罰則もないのに、守られている。

 ※おなじみのロシア式宣伝がまた始まった。《ウクライナが野鳥を生物兵器に感染させて放っている》と、何の証拠も挙げずに非難し始めた。こういうときはロシア側でNBCの使用準備を進めているのである。

 次。
 寄付金付きのリクエストがあったのでお答えしましょう。
 今後のわが国の原発政策についてです。

 新式原発ではなく、現有原発の再稼動&フル稼働でエネルギーをやりくりするしかないでしょう。

 新式原発のことはなぜ忘れるべきかというと、新式原発には「新型燃料」が伴うものですが、その「新型燃料」の安全性データをとるのに何十年もかかるのです。今(2022年)から2024年くらいまでのエネルギー危機に、とても間に合う話ではない。

 現有原発はいまさら「引越し」できません。地下化もできないし、「舶載化」もできません。そういう空想も、今は忘れましょう。

 日本の政治がつきつけられる、現実的な課題は、原発の「防備」です。

 三菱重工系の加圧水型ならば燃料取扱棟が半地下にあるので、あるていど、敵からのミサイル攻撃にも抗堪力があるのですが、旧役所系(戦前の統制官僚が仕切っていた電力業の流れ)の「沸騰水型」原発は、最新の改善型であっても、「建屋」の壁と天井が「無装甲」であるうえ、よりによって建屋の最上階部分に設けてある燃料棒貯蔵プールに、小型機関砲弾を1発でもくらったなら、即座に「フクイチ」の再現になってしまいます。基本的に、戦乱に弱い、ダメ設計なのです。

 しかし今から原発建物の設計変更(たとえば建屋の装甲化や地下化等)をさせると、その審査にまた数十年もかかってしまい、工事にはさらに10年を要し、2024年までのエネルギー危機から国民生活を救済できないのです。

 ですから、建物に防弾力や耐爆力を付与することは諦めて、原発敷地内の、リアクターや建屋の近傍に「フラックタワー」を建てて、それによって「拠点防衛」を図るしかありません。

 この原発を攻撃から防禦するためのフラックタワーについては、過去の旧著でイラスト付きで提案してありますので、それをご参照ください。(ちょっと手元を探したのですが、どの本だったのか、書いた本人が想い出せず、あい済みませんです。)

 原発やダムを攻撃することは戦時国際法で、タテマエとして禁止されています。が、実戦になったらロシアも中共も韓国もそういうことを平気でやるだろうなという予想は、みんな、内心でしていました。それは遂に証明されたと思います。これで前例もできてしまったので、敷居はますます下がりました。

 もし敵国が日本国内の原発を攻撃したなら、こちらからはソリッド弾頭仕様のSSMによって復仇(同害報復)することあるべしというドクトリンを平時から明瞭に公表しておくことも、必要になるでしょう。その手段についての具体的な提案は「BOOTH」でしていますので、もうお読みくださっていると思います。

 そういう力量がある政治家しか、これからの永田町には、必要ではありません。


BOOTH
くだらぬ議論は止めよ! 敵地攻撃力はこうすればいい!