キエフ北西で露軍が重囲に陥っており、今次戦争最大の捕虜が生ずる可能性ありと。

 Aaron Pluto 記者による2022-3-21記事「To stymie Russia and stabilize energy prices, US officials should bolster American energy production」。
   2014年にクリミアを武力併合したとき、なぜ周辺国は強硬に反撃しなかったかというと、黒海沿岸諸国は、ロシアのガスと石油に、需要の「五分の四」を依存していたので、逆らえなかったのである。

 これに味をしめたプー次郎はこんどはウクライナ全域の武力併合にとりかかった。その判断のベースには、西欧もロシア産のエネルギーに依存しまくっているから、また同じような有耶無耶反応におわるにちがいないという読みがあっただろう。

 もし「ノルドストリーム2」が運開していれば、そうなったかもしれない。しかし運開前だったので、米政権がドイツに「対露制裁としてノルドストリーム2事業を破棄しろ」と迫ることができ、それがドイツの新政権によって実行されたので、欧州の石油・ガス価格は暴騰したものの、欧州は屈服せず、逆にプー次郎体制の終わりが始まった。

 エネルギー価格は米国内でも高騰している。ロシアとOPECと米国が一斉に増産しないかぎり、値段が下がるわけがないのだ。ところが今次戦争でロシアのエネルギーは国際市場から排除される。OPECは増産にあまり乗り気でない。そしてバイデン政権は、米国内のエネルギー需給を緩和する切り札である「キーストーンXL」パイプラインの新規敷設に許可を与えないという愚かなコミットから転換できず、あいかわらず、グリーンエネルギーで海外エネルギーへの依存から抜けられるなどというフィクションを信じているフリを続けている。

 ※キーストーンXL、略してKXLは、カナダのアルバータ州のタールサンドを米南部テキサスの精油プラントまで大量に圧送するためのパイプラインである。計画は2008に浮上し、オバマ政権が2015にこれは環境に悪いとして葬り、トランプが復活させたのだが、バイデンは大統領就任の初日にその事業をまた禁じた。米国環境保護派は、タールサンドは最もダーティなエネルギーだと叫んでいる。

 ※これは、はるかず~っと前、どこかに書いて提案をしたと思うのだが、「サハリン2」などに投資するくらいなら、日本の商社連合が、アルバータ州(さらに将来的には米領アラスカ)から太平洋の海岸までのパイプラインと精油所と積み出し新港に大投資し、そこで生産された石油をタンカーで日本まで搬入するという流れを作る。それによって日本の中東石油依存を半減させる。これが、「国家戦略」というものだ。パナマ運河通航の必要もなく、北太平洋の大圏コースで最低輸送費で日本まで持って来られる。途中ルートは米海軍のナワバリであるから、戦時にも敵潜の妨害などほとんど考えられない。どうしてこういう発想が、日本の商社にはできないんだ?

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 Key Takeaways 記者による2022-3-22記事「Fossil fools: How Germany’s fear of nuclear power put Putin in charge of Europe」。

   ※この記事は、ドイツ人が原発を嫌うのは「技術恐怖症」だと言っているのだが、欧米マスコミも話がグリーンに及ぶと阿呆丸出しだ。ドイツでは昔から、原発敷地全体を「煙幕」で覆って、ソ連軍機が爆撃しようとしても照準ができないようにするという消極防禦システムを原発に付属させていたのである。つまりロシア人は有事になれば平気で原発を爆撃してくると、ドイツ人がいちばんよく分かっていたのだ。GPS時代になり、もはや煙幕では原発を防護できなくなったので、もし原発そのものを地下化できないのなら、原発を早めに廃炉しておくのが安全だというのが、プーチン登場直後からの彼らの結論だ。ドイツの地形がもし、岩盤山脈に富んでいたなら、また違った方途が模索されただろう。しかしドイツは平地で、標高も高くなく、地下原発を考える余地はないのである。

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 ワイヤードの2022-3-17記事「The Nuclear Reactors of the Future Have a Russia Problem」。
   「テラパワー」が採用する新方式原発には、旧来の「5%低濃縮ウラン」ではなく「20%高濃縮ウラン」が、専用の燃料として、必要である。※これで「安全」を標榜するのだから、笑止である。

 濃縮ウランは、ロシア国営のロスアトムの子会社「テネックス」から輸入するのが定番だ。
 テラパワーのライバルベンチャーの「Xエナジー」社も、そのつもりだったのである。

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 ストラテジーペイジの2022-3-22記事。
   ウクライナは2019年にイスラエルに対して、アイアンドームを売ってくれともちかけた。しかしイスラエルは謝絶した。
 理由は、シリアのロシア軍とイスラエル軍は、裏チャンネルで話をつけていて、そこでは、そこそこ、いい関係にあるのだ。この関係をキープするのがイスラエルの国益だと判断したのである。

 もしイスラエルがウクライナに高度な防空システムを売れば、ロシアは反発し、イヤガラセとして、シリア領内のイランのSSM倉庫を爆撃するために越境出撃してきたイスラエル軍機に対してSAMを発射するようになるだろう。(現状、それはしないという裏合意あり。)

 今後もイスラエルは、いかなる武器も、ウクライナへは売らない。だからと言って何もしないわけじゃない。すでに野戦病院一式を、ウクライナには援助済みである。

 ロシア語でロシアと話をつけられる環境が、イスラエルにはあり、それはフル活用されている。
 プーチンは2016にイスラエルのことを「無条件の同盟者」と呼んでいるほどだ。
 今次戦争でも、イスラエル政府は、表立ってプー助を罵っていない。対露批判を抑制している。ただし民間は別で、反露デモはやっている。

 イスラエル国民の15%は、もともと旧ソ連から脱出してきたユダヤ人。なかでもウクライナは多かった。
 1970年代に、ソ連は、国内ユダヤ人のイスラエル移住を自由化した。その「恩義」にも応えねばならない。

 2014のクリミア侵略を機に、イスラエルは、露軍のUAV技術への支援を停止した。※米国が、停止させた。

 イスラエルはアゼルバイジャンにはかなりの攻撃的兵器を売っていた。これでアルメニアは大敗し、ロシアは恥をかかされたが、トルコ製のバイラクタルだけがマスコミに取りざたされたおかげで、イスラエルがロシアの恨みを買うことは避けられた。

 2020のナゴルノカラバフ紛争のときは、ロシアからは「武器を売るな」という要求はなかった。今回は、あったようである。だから、売らない。

 イスラエルにとっての最大脅威は、イランである。イランのSSMをIDFが先制空爆する作戦に、ロシアは協力してくれている。この関係は破壊できない。破壊すれば、イスラエルの政権与党は、次の選挙で下野させられてしまうだろう。イスラエルの有権者には、国家の優先順位が、ちゃんと分かっている。

 ※ベルギーは、5.56ミリ化する前の7.62ミリNATO弾仕様の古いFNアサルトライフル〔FALではない〕を3000梃ばかりウクライナへ贈ったようである。日本でいうならこれは「六四式」に相当する。64式の在庫は、予備役用として、たくさんあるはずだ。だが64式小銃を使ったことのある者で、これをウクライナへやればいいと思う者はおるまい。あれをちゃんと機能させられるのは古い自衛官だけに違いない。戦前、「〔大正〕十一年式軽機関銃」をシナ兵が鹵獲しても使いようがなかったのと、同じことになると思う。

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 雑報。
 ポーランドとウクライナの間を連絡する、国境越えの鉄道路線(単線)は、ながらく廃線だったのだが、この鉄路を、援助用に復活させるべく、枕木と路盤の改修補強工事が、今、人力で進められている。

 ※まちがいなく露軍の巡航ミサイルの的になるわけだが、はたして現代の巡航ミサイルは、WWIIのスツーカやヤーボと比べて、鉄道寸断力がどれほどあるのか、まもなく、われわれは貴重なデータを貰えることになるだろう。