地対地ミサイルによる「インフラ破壊」こそが、最高に効率的だということを露軍は実証した。受け太刀一方だと、禦ぎようがないのだ。

 Mattia Nelles 記者による2022-4-11記事「Russia is trying to destroy Ukraine’s energy sector」。
   露軍は意図的にウクライナのエネルギー・インフラを狙ってミサイルを撃ち込んでいる。

 これがものすごく有効で、中距離地対地ロケット弾を潤沢に保有した軍隊による最新の侵略戦争術の見本を世界に提示しつつある。中共軍も研究中だろう。

 一試算では、開戦いらいウクライナの物損は630億ドルに達した。
 12箇所あった飛行場も念入りに破壊されている。138箇所の病院も。

 ※病院破壊は、対市民の心理戦を重視していたから。ショックですぐに抗戦意思をなくすと期待していた。その期待が、ぜんぜん外れた。

 なかんずく、電気、ガス、液体燃料のインフラを破壊することは、間接的に、上水と下水の機能も停止させてしまうことにつながるし、全産業を止めることができる。だから露軍は、いまや積極的に狙って破壊している。

 ガス供給網は「ソユーズ系統線」を中心に破壊されており、現在、ウクライナ国内の30万世帯はガス無しである。

 また150万世帯は、電力供給されなくなっている。

 4-3にはウクライナ最大の石油精製プラントが大破させられ、同日、オデッサ港の石油受け入れ施設もミサイルで炎上させられた。
 ※これを初盤に実行しなかったのは、まさかこんなに長期戦になると思わなかったから。4月になってから、長期戦の肚を括って、ターゲットリストに慌てて入れたのだ。

 タンカーが港に接岸できない情況なので、いまやウクライナの油脂輸入ルートは、EU経由の鉄道とトラックしかない。

 ロシアはもちろんそこに気付いているので、次は鉄道を狙ってくるはず。

 このままでは民生用はもちろん、ウクライナ軍の車両用の燃料も不自由になるだろう。

 ※まさに今、日本や台湾にとっての、一大戦訓が得られているのである。一国の、石油・ガス・電力のインフラ(ターミナルや結節点)に落下する1200発のミサイルを、阻止する方法はないのだ。中共は台湾の対岸に一千数百基のSSMを並べているが、いま、火箭軍内部では、そのターゲティング・リストを変更する見直し作業で、大忙しだろう。都市に落としても対象国民の戦意は低下せず、したがって戦略的に無意味なのだ。しかし、インフラをピンポイントで破壊してやれば、敵国の後方を長期的に無力化でき、敵国の全産業を即時に麻痺させ、戦略的な効果も満点になると、ついに気付いてしまったはずである。

 ※日本の「石油備蓄基地」は、今のように巨大なものを数箇所に集中させておいてはいけない。小規模なものを極力全国に分散して整備しなおさなくてはならない。できれば、タンカーそのままで、離島や僻地に繋留することである。そしてもっと理想的には、流通と消費の全中間段階で、常時「ダブつかせ」ておくことが、究極のミサイル空襲対策になる。すなわち、石油関係の「在庫」には、いっさい税金をかけないようにすればいいのである。

 ※ウクライナは、そこが攻撃されると前々からわかっていても、予算がなくて、すべての変電施設を地下化するわけにはいかなかったわけだが、戦後の再建にさいしては、発電所も変電所も病院も劇場も駅ホームも、極力、地下化されることになるだろう(劇場は地上がピラミッド状の立体駐車場となり、地下部分が本体で、それは「木の根」状の構成になるだろう)。ミサイルでさんざんにぶっこわされてしまったおかげで、こういうふんぎりがつけやすくなったはずだ。

 次。
 The Maritime Executive の2022-4-10記事「Russian Navy Fires on Turkish-Owned Bulker Near Mariupol」。
   2-24の開戦いらい七回目の、ロシア軍による民間商船への攻撃である。
 ロシア国防省が認めた。

 アゾフ海で、ロシアの警備艇が、ばら積み貨物船の『Apache』に発砲した。

 『Apache』はトルコを3月に出てドン河河口のロストフに4-2入港。4-8出港。過去、何度もやっている航海であった。

 黒海に出るにはマリウポリから20海里内を通航するしかない。しかし露助兵衛は、それはゆるさんと言い出しているわけだ。

 そして砲撃の言い訳として、『Apache』がアゾフ大隊の指揮官をエバキュエートしようとしていた、などと、いつもながらの口から出任せの嘘を、国防省のスポークスマンは語った。

 『Apache』のオーナーはトルコの会社。登録船籍はマルタである。

 先週、ロシアの狂犬艦隊は、ドミニカ国旗を掲げていた商船『Azburg』を、やはりマリウポリ沖で砲撃しながら、その砲撃をしたのはウクライナ軍だと言い張っている。

 また最近の報道では、マリウポリ港に繋留していた商船にロシア兵が乗り込んできて、乗っていた海員全員を拉致し去ったという。
 これはマリウポリ周辺からの数千人の住民誘拐と軌を一にしている。

 ロシアは誘拐した家族をバラバラにして収容所に監禁中。

 次。
 ドイツ新聞の英文記事「Russian nickel, palladium, chromium exports a headache for Germany」。

   ドイツが困っているもうひとつのこと。ニッケル、パラジウム、銅、クロムといった鉱物も、いままでロシア産に依存し過ぎていたのだ。それらが調達できなくなった。

 ニッケルは旧来はステンレス鋼の添加物だったが、今日ではリチウムイオン電池の素材として、なくてはならない物質だ。
 パラジウムは、自動車の排気管の途中のフィルター内の触媒に必要で、これがないと排ガス規制をクリアできない。

 2020年の統計によれば、ドイツはニッケル鉱石の39%、パラジウムの25%を、それぞれロシアから輸入していた。クロムとカドミウムも、15~20%はロシアから買っていた。精錬銅の11%、プラチナの10.9%、鉄鉱石の8.5%も、これからは他の産地に切り替えねばならない。

 ニッケルにはグレードがある。そのうち電動自動車が需要するのは「クラス1」のニッケル。ロシアは世界の「クラス1」ニッケルの20%を供給してきた。

 今次戦争がなくても「クラス1」ニッケルの国際市価は過去2年間で2倍に上昇していた。今後、一層需給は逼迫し、値段は暴騰するだろう。

 フォルクスワーゲン社は、中共の鉱山会社とJVで、インドネシアにあるコバルトとニッケルを採掘する合意をしたばかりである。

 金曜日、EUは、ロシアからは石炭、キャビア、木材、ゴム、セメント、ウォッカは買ってはならぬと決めた。
 ※ロシアで生ゴムは採れないはずだから、これは合成ゴムか。