またもウクライナに新兵器投入。PHOLOSという縦長の垂直発進式ミニドローンだ。

 イスラエル製の似たようなのがあるが、それとは別だということだ。
 二重反転ローターにより、45分間の滞空が可能な、ロイタリングミュニション。おそらくは対人専用で、対車両の破壊威力までは無いはず。

 次。
 Kamil Galeev 記者による2022-5-28記事「Why Russia is more fragile than you think」。
   ゴルバチョフとエリツィンは同い年だった。ともに1931年生まれなのである。
 そして彼らの前任の権力者群は、20歳年長だった。1982から85にかけ、ソ連トップの老人が3人、続けざまに病死したことを覚えているだろう。

 なぜ指導者層の世代間隔が20年もあいてしまうのかというと、ロシア=ソ連ではリーダーは誰も、歳の近い後継者を育てるつもりなどないからだ。むしろ後継者が存在しないように気をつけているのだ。

 この結果、体制全体は、継承ギャップを孕み、動揺するが、誰にもどうにもできない。

 指導者が生きて粘っている間は、誰も指導者に逆らえない。その指導者が死ぬかひきずりおろされると、すべてが雪崩れのように変わる。

 指導者が生きて粘っている間は、すべてが昔のままであり、システムは磐石であるかのように見える。しかしそれは、汗をかく小改革・小改善を、すべて先送りしているためなので、ある日、指導者が退場するゆ、それまでの汗のツケを一度に血液で支払わねばならなくなる。社会は瀕死のダメージを負わされる。

 プーチンはじぶんで雪崩れの道を選んだ。
 まず2013に指導部の定年を60歳から70歳に延長。
 ついで2022に定年撤廃。

 軍隊も同様にしている。
 まず2014に大将の定年が60歳から65歳へ。
 2021には、上級大将の定年が70歳になった。

 警察も同様にしている。
 2019に警察最高幹部の定年を60歳から65歳に。
 2021に刑務監の最高幹部の定年を60歳から65歳に。

 大学も同様にしている。
 2019にモスクワ大学とサンクトペテルスブルグ大学の学長の定年を事実上撤廃した。
 2020には他の大学の学長定年を70歳にした。

 つまりプーチンは、重要な機関の長ほど、若返りは認めない方針。徹底しているのだ。
 プーチンはロシアを、特権長老支配体制にするつもり。

 中枢側近は全員、じじいばかりということになるだろう。

 しかし地方政庁では、若い有能者の出世を邪魔しない。その結果、今のロシアでは、地方に平均51歳のやり手がひしめいている。中央にはゾンビしかいない。

 今のウクライナ戦争は、「じじいの国」対「わかい国」の年代対決でもあるのだ。

 次。
 Kamil Galeev 記者による2022-5-29記事。
   サンクトペテルスブルグの宮殿広場で、通行人相手に、軍が入隊勧誘のキャンペーンをしている。
 この大都市で兵隊を募るようになったら、いよいよ露軍はマンパワーが尽きかかっている。

 宮殿広場は、「冬宮」と、参謀本部司令部の中間に位置している。

 プーチンは5-9に総動員令を発令しなかった。ロシア各地の徴兵拠点に反戦的な二等兵ばかり何十万人も溜まるようになったら、ロシア革命のときと同じ反政府暴発が起きるからである。

 そのかわり、地方で集めた新兵を連隊所在地などに滞留させることなく、すぐさま最前線へ送ってしまうという、目立たない動員をかけている。

 今次戦争前の地方人の収入は、ブリヤートのような超田舎では、こんな感じだった。
 電設工の月給が、1万5000から2万ルーブル。教師の月給が7000ルーブル。それに対して、二等兵になると4万から5万ルーブルである。
 超田舎では、軍隊の方が、稼げるのだ。家族を養えるということでもある。

 現在は戦時であるから、志願兵は、諸手当てコミで20万から30万ルーブルを毎月貰えている。

 ロシアはカネで兵隊を集めている。国内には戦争熱気はない。ダゲスタンでは誰も志願しないので、路上で通行人を拉致して強制的に入隊させている(これを英語でプレスギャングという。帆船時代の英海軍の水兵はこのようにして集められていた)。ただしおおっぴらではない。報道されるのは困るからだ。

 ダゲスタンは、プーチンにとっては昔から、兵隊集めの一大基地であった。そこが厭戦的になっているのは、見逃せない兆候だ。

 記者のみるところ、ロシアで最も徴兵に抵抗する集団は、中央アジアの住民だろう。

 ロシア警察は伝統的に、迷宮入りしそうな事件があると、中央アジア人をとっつかまえて、自白を強要して犯人に仕立てるというダーティな仕事をしてきた。迷宮入り事件の存在は、幹部の出世に響くからだ。

 こんな政府を中央アジア人が1ミリでも信用するはずがどうしてあろうか。

 モスクワ市民はどうか。彼らは志願もしないし徴兵にも応じない。やはり政府をまったく信用しなくなっているのである。

 政府が信用されなくなってしまったら、どうして総力戦ができようか。月に30万ルーブルをくれるといっても、モスクワっ子は誰も軍隊なんかに入らない。政府は嘘しかつかないと予見しているのだ。