人命を使わず、頭を使え。

 Defense Express の2022-6-9記事「Russians Blow Themselves Up Trying to Thwart Ukraine’s Offensive With 70-Year-Old Mines ? Ukraine’s Intelligence」。

 ヘルソン方面で反転攻勢に転じたウクライナ軍の前進を押しとどめるべく、露軍は対戦車地雷をロストフ軍区のあらゆる倉庫からかき集めている。

 ところが新品地雷が帳簿通りには揃っていないことがままあり、その穴埋めとして、廃棄予定であった1950年代の古い対戦車地雷がリサイクルされて前線へ補給されてきているという。

 それを埋設しようとした工兵は、不良火工品のために仕掛けた瞬間に吹っ飛んでしまうという。
 そんな事故が1件だけでなく、複数件、頻発しているという。

 しかもこのような事故は戦時なのであるから戦死扱いされるのが至当なのにもかかわらず、部下の戦死者が多いと当該BTG長の考果表のマイナス点となるために、死んだ工兵は平時の事故死扱いされてしまい、特別な遺族年金が支払われないという。

 ※PT-76の主砲は径76.2ミリの「D-56T」だ。この中古の軽戦車を引っ張り出したのは、渡河作戦をさせたいためではなくて、古い76.2ミリ砲弾が国内各地の弾薬庫に大量に死蔵されているので、それをせめて間接照準で発射させる「移動式の野砲砲台」としたいのだろう。

 T-62Mの主砲から発射する115ミリ砲弾はロシア国内の各地の倉庫にまだ大量にストックされているはず。しかも北朝鮮など複数の国ではその砲弾の製造が今日でも続いているはず。比較的に潤沢な資源であるこの115ミリ砲弾をフルに活用するために、それを発射できる唯一のプラットフォームとしてT-62は引っ張りだされた。斜堤を利用して仰角を45度にすれば、やはり、「自走榴弾砲」の代わりになる。

 最も豊富な資源である「砲弾」をフル動員するために露軍は主戦場を、太い鉄道がつながっているウクライナ東部と南部に定めた。

 この鉄道を破壊できる射程がある、終末誘導式の地対地ロケット弾、もしくは大型UAVを平時から準備していなかった努力不足が、もっかのウクライナ軍を甚だしく不利にしている。これはすべての西側諸国軍の教訓でなくてはならない。

 豊富な砲弾資源を擁する敵軍の砲撃間合いに自軍の歩兵やAFVを出してはならない。
 爆撃も可能な大型のUAVがないのなら、小型UAVで敵部隊や敵デポの偵察・標定だけさせて、そこにこっちから長距離砲を撃ちかけるしかない。

 そのレーザー照準用の小型~中型UAVを、敵SAMから守るにはどうするか。

 半導体飢饉がこれから永続するロシアにとって、UAVを撃墜するためのSAMの消費が、じつはいちばん痛い筈。

 それをとことん促してやるのがよい。
 それには、h=5000m以上を巡航できる中型のUAVから、アルミ蒸着した「紙ヒコーキ」を放出するように工夫することだ。チャフよりも滞空時間が長く、しかも無数にバラ撒かれれば、その挙動はホンモノのUAVと区別できなくなる。

 旧ソ連軍は、地対地ロケット弾にとりつける特殊な弾頭のひとつとして、「伝単」(宣伝文を印刷した紙シート)を詰め込んだ物を準備していた。こんどのウクライナ戦争でも、勝利直前の勧降用に使うつもりだったようだ。
 旧ソ連軍がふつうに装備していたということは、ウクライナ軍人の古株だってその仕組みは覚えているはずである。
 この「伝単」の代わりに、アルミ蒸着紙飛行機を放出させてもいいはずだ。ウクライナ軍の220ミリMLRSの1発に混ぜておけばいいのだ。

 露軍の152ミリ砲弾がいつ、どこで涸渇するのかが、これからの関心事だ。
 115ミリの榴弾や、76.2ミリの野砲弾は、152ミリ~155ミリ榴弾ほどの破壊力は無いので、たとえばこっちが「M1」クラスの戦車を持っていれば、それを敵の「臨時野砲」間合い内に出しても、さしつかえはなくなる。敵に152ミリ砲弾がなくなったのならば。

 南部戦区には、鉄道補給線が長い(切られ易い)関係で、それが起こる可能性があるのではないか?