政府は、敵からの攻撃に脆弱すぎる「沸騰水型」原発の全廃を急ぐ責任がある。「改善型」も含めてだ。加圧水型であるザポリッジア原発が、これから頼もしい「戦時抗堪性」を証明する流れになるだろう。

 ストラテジーペイジの2022-8-28記事。
   米国は、ウクライナ政府が新戦場から地雷や不発弾等を撤去する作業の費用援助として8900万ドルを渡す。

 ※SNSによると現地の畑で不発弾を掘っていた農民が、WWII中のドイツ軍が発射したロケット弾(不発)を発掘した。牽引式のシリンダー状の多連装から発射されたもの。

 狂犬国家が相手の戦争では、問題は不発弾にとどまらない。露兵は退却するときにはかならず、IET(即席爆発罠=improvised explosive traps)を、至る所に仕掛けて立ち去るのを常とする。これを除去しないと、住民がじぶんの家屋内に入ることもできないのだ。

 特に、兵隊や住民の死骸の下にIETを仕掛けておく「ボディ・トラップ爆弾」が悪質である。

 不発弾のことはUXO(UneXplOded munitions)と言いならわす。ウクライナ軍が発射した砲弾よりも、ロシア軍が発射した砲弾の方が、UXOになりやすいという現地統計が得られている。

 面白い事実が分かっている。露軍が発射する砲弾はメチャ古いストック品ばかりなのだが、露軍がウクライナで使用している地雷は、ほとんどが「新品」なのだ。そして、このロシア製の現用の地雷は、とても探知がし易い。だから、不発弾処理班としては、地雷処理がいちばん楽勝である。

 もうひとつ観察されていること。退却の前にこれほど地雷やIETを仕掛けまくるということは、二度とその占領地に戻ってくるつもりはないことをも意味するのであろう。

 ヘルソン~クリミア方面では、露軍は、ロケット弾によって対人&対戦車地雷をバラ撒いている。
 もう、クリミア半島は抛棄する覚悟を決めたのだろう。

 タジキスタンには地雷が多い。これはソ連から分離した直後に内戦が始まって、双方が地雷を敷設したのと、その後、アフガニスタンからヘロインが密輸されないように、国境を地雷だらけにしたからである。また、ロシアとの国境沿いにも、念のために多数の地雷が埋められている。

 ロシアは、おれたちは「スマート地雷」を使っているから期限が来ればすべて自動で無力化する――等と宣伝しているが、もちろん嘘である。チェチェンに仕掛けたロシア製地雷は、いまだに生きている。

 無線のリモコンでON/OFFできると称する地雷が西側メーカーによって宣伝されることがあるが、やはり軍人は信用をしていない。1991湾岸戦争のさい、それを信じて味方の地雷原を通過した部隊が、酷い目に遭っている。

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 Dan Lamothe 記者による2022-8-27記事「Pentagon expands use of seas to send weapons to Ukraine」。
    2-24開戦いらい米国は、対ウクライナの緊急武器支援を、スピードを重視して空輸中心で実施してきたが、さすがに「榴弾砲のタマ」はマスがありすぎて輸送機ではどうしようもない。そこで、船舶補給を強化する。

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 2022-8-28にアクセスした英文ウィキの項目「Zaporizhzhia Nuclear Power Plant」より。
    ザポリッジア原発は、欧州では最大。世界では第10番目の出力を誇る。
 冷却水は、ドニエプル水系の「カホウカ」貯水池から取っている。

 軽水を使う加圧水型原発が6基。電気出力はトータルで5700メガワット。
 最初の炉は1985運開。6番目の炉は1995運開。

 露兵がここを占領したのは、2022-3-4。
 3-12には国営「ロスアトム」のロシア人技師たちが乗り込んできて運営の支配開始。部下技師はウクライナ人がひきつづいて従事させられている。

 2017の延命工事によって、3号炉は2027年までは機能すると期待されている。また5号炉は2021工事により、2031年まで延命されている。

 2014のプーチンによるドンバス切り取り作戦開始で、「戦線」から200kmに位置するこの原発が砲撃される心配が生じた。

 2014-12-3に「短絡」事故があり、6基全部がシャットダウンした。ウクライナは、火発用の石炭の不足もあいまって、12月後半まで全国がブラックアウトしている。

 2022-2-24の侵略に応じて「エネルゴアトム」社は、5号炉と6号炉をシャットダウンした。
 すなわち1号炉~4号炉だけを運転するようにした。

 2022-7-5に『WSJ』は報じた。露軍はこの原発敷地内に「BM-30 スメルチ」多連装ロケット砲を配備したと。

 その後、そこから近隣市街を自由に砲撃。

 2022-7-19にウクライナ軍は、特攻自爆無人機×3機を使い、この敷地内の露軍兵器ならびに天幕を攻撃した。露兵3人死亡。原子炉が無被害であることは、ロスアトムが認めた。

 8-6にIAEAいわく。前日に砲撃の影響で稼動中の1基が外部グリッドから切り離され、自動的にシャットダウンしたと。

 8-8、ゼレンスキーは、露軍がこの原発の放射線計測装置を砲撃して破壊し、従業員を負傷させたとし、連中は放射能テロ事態に持ち込もうとしていると非難。

 8-9、エネルゴアトムいわく。ロシアはこの発電所の電力をぜんぶロシアのグリッド専用につなぎ替えるつもりだと。

 ジュネーヴ会議プロトコルIのアーティクル56は、原発に対する攻撃を禁じている。

 8-11、露軍が構内の核燃料棒の貯蔵プールを狙って砲撃した可能性あり。調査はできていない。

 タービン建屋内部にロシアの軍用トラックが多数、集結している動画は、8月後半にリークされた。

 英国防衛委員会のトビアス・エルウッドは8-19に警告した。ザポリッジアを砲撃して意図的に放射性物質を漏洩させた場合、それはNATOの「アーティクル5」事態である。すなわちその放射能被害は周囲のNATO加盟国に及ぶのだから、NATOの加盟国が軍事的に攻撃されたと認定でき、よって、全NATOはその攻撃者と開戦する。

 翌20日、米連邦議員のアダム・キンジンガーはそれに同意。ロシアが放射能を漏洩させたら、米国もロシアと開戦だと。※米国の宣戦布告権は議会にあって大統領にはない。

 8-25、稼動していた2基=ザポリッジアの全電力出力がウクライナの電力グリッドから切り離された。これは開所いらいの初事態。
 エネルゴアトムの説明によると、近くの石炭火力発電所の火災が干渉したのだと。

 8-26、1基についてはふたたびウクライナの電力グリッドにつながった。

 ※一般ニュースで補うと、27日、露軍は17発の砲弾を撃ち込み、4発は核燃料棒貯蔵プールがある建屋の屋根に命中したという。プーチンは、季節風が内向きから外向きに転じたところで、「フクイチ」と同じ事故を起こさせるつもりだったのだろう。どうせ敗退するのなら、奪い返される土地はぜんぶ汚染してやれ、というやけくそ焦土作戦だ。だがそれは失敗した。なぜか? 燃料建屋の構造が、沸騰水型と加圧水型とでは違うからだ。加圧水型原発では、貯蔵プールは半地下にあり、敵の砲撃に対してあるていど抗堪できる。ペラペラの薄壁のビルの最上階に、何の防弾装甲も無しにプールが据えられている「沸騰水型/改善沸騰水型」の燃料建屋とは、防弾力が段違いなのだ。これを破壊するには本格的な地対地ミサイルか、航空機からの誘導爆弾投下が必要だが、それをやると、残骸調査でロシアの仕業と確実にバレてしまう。だから、無誘導の砲弾で破壊するしかない。それがうまくいってないのだ。現地の砲兵将校も、あとで戦犯にされるのが怖いから、なるだけ外そうとしているのだろう。原発の型式選択については、三菱重工(民間軍事企業)が賢明であり、電源開発(=日本政府の戦前統制官僚ども)は不明であった。そしていまだに反省を回避している。「改善沸騰水型」とやらは、プールの防弾性に関しては、1ミリも改善されていない。露軍や支那軍や韓国軍のひょろひょろ砲弾でも、「フクイチ」事故がすぐに再現されるように、設計が決まっているのである。

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 Francesca Edwards, Tara Fair, Matthew Dooley, Catherine Meyer-Funnell 記者による2022-8-27記事「Ukraine: Furious Putin fires 6 of his generals for tactical failure – invasion stalls」。
   げんざいまでのところ、すくなくも6人の将官がプーチンによって馘首された。侵攻ペースが遅いというので。

 チャプリン町の駅の客車に命中させたのは「SS-26 イスカンデル」×1発であった。

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 Jake Thomas 記者による2022-8-26記事「Ukraine Strike on Russian Headquarters Kills 200 Paratroopers: Official」。
   ルハンスク州のカディイフカという町。そこのホテルにロシアの精鋭部隊が宿営していたので、ウクライナ砲兵が狙い撃ちし、将兵200名を殺したと主張されている。