9月には送電線の近くで怪しい偵察をしていたロシア人をノルウェー警察が逮捕している。
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2022-10-15記事「Russian Air Defences Break Range Record in Combat: First Kill For the Famed 400km Range 40N6 Missile?」。
ベルゴロドに展開していた露軍の「S-300V4」が、低空襲来したウクライナ軍の「スホイ27」と「スホイ24」を、レンジ217kmで撃墜した。これは露軍が実戦で成功した長距離撃墜の新記録。それまでの最長記録は、3月にキエフ上空のウクライナ軍戦闘機を150km離れたベラルーシ国境内から撃墜したものであった。
ウクライナ空軍機は、超低空で敵地に迫り、無誘導のロケット弾複数を、ポップアップしざまに仰角45度くらいで「腰だめ」発射し、すぐにUターンして再び超低空で基地に戻るという対地砲撃を反復していた。ロケット弾は最大レンジで飛翔してくれるが、どこに落ちるかは分からない。
※同じ最短直線コースばかり飛ぶから、交信傍受とストップウォッチを組み合わせて、未来位置の見当をつけられてしまったわけだな。不規則なS字飛行で毎回、異方向からアプローチするように気をつけないとね。
S-300V4は、超地平線での巡航ミサイル迎撃を特に考えてあるもので、S-400より値段が張る。
発射車両も、装輪ではなく装軌である。
※ベルゴロド射場で露人を殺しまくったタジク人は、モスクワで強制徴兵されたのだという噂もある。そうだとすれば動機は自然に聞こえる。
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Arjun Kharpal 記者による2022-10-13記事「Globally critical chip firm tells U.S. staff to stop servicing China customers after Biden export curbs」。
オランダのASML社は、最先端集積回路を製造するのに不可欠なシステムを世界じゅうのチップ工場に提供している。
ASML社は、米国の労務者に対して、爾後、中共のチップ工場のための仕事は止めるように命じた。これは米政府の最新の輸出規制措置に合わせるためである。
この「米国の労務者」のなかには、米国籍(市民権)を有する被雇用者と、米国政府発給のグリーンカードを保有している非米国籍の被雇用者が含まれる。
中共メーカーに対して何か製品を輸出することも禁止。サポートをすることも禁止される。
ASMLは、極短紫外線による焼き付けマシンを、世界中にほぼ独占的に供給している。他社にはマネのできない技術なのである。台湾のTSMCも、このASMLの装置がないと、最先端チップは製造できない。
バイデン政権の新方針では、今後は、米国人&米国内被雇用者が中共企業のチップ開発を支援するにはいちいち米政府からの許可を必須要件とす。
日経が金曜に報じたところでは、TSMCは、あと1年だけは、中共内の工場に米国製の機械を搬入してもよいという特別許可を米政府から与えられた。
『朝鮮日報』によれば、同様の猶予期間は、韓国のサムスンとSKハイニクス社に対しても、与えられた。
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Ana Swanson and Edward Wong 記者による2022-10-13記事「With New Crackdown, Biden Wages Global Campaign on Chinese Technology」。
このたびのチップ製造技術移転禁止措置は、中共がステルス技術やハイパーソニック兵器を迅速に開発できないようにする目的がある。また、米国が使っている暗号を中共のスパコンで解読し難くしてやる効果も期待される。
米政府が今回の規制措置を打ち出す前には、オランダ、日本、韓国、イスラエル、英国の政府とも相談を重ねている。
理想的にはこれらの与国合同で新方針をブチ上げたいところだったが、さすがに支那市場を失いたくない与国が多くて話はまとまらず、米国単独での実行となった。
米国以外の諸国は、中共から「報復」され易いため、前面に出るわけにもいかないのである。〔しかし実質、同調する。〕
今後、米国企業や米国技師は、中共国内にあるチップ工場のソフトウェアをアップデートしてやることもできない。
与国のメーカーは製品としてのチップを中共に売るのは当面、かまわない。
これから「自動運転」や遺伝子改造をするときに「AI」やスパコンの性能がモノを言う。中共製のAIが米国製に追いつけないようにしないとまずい。そのために中共が最先端のチップを国産できないように、機微な技術を禁輸するのだ。
とにかくTSMCが今年すごいチップを完成したので、米政府はもうこれ以上、ぼやぼやしていられないと焦ったようだ。
日本の企業では「東京エレクトロン」が、多数の中共のチップ工場を顧客として抱えている。その売り上げは減るであろう。
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Defense Express の2022-10-16記事「Iran to Supply russia With the Fateh-110 and the Zolfaghar Ballistic Missiles (Specifications Included)」。
『ワシントンポスト』報によると、イランは9月18日に、ロシアに対して短距離型の地対地弾道ミサイルも売ることを決めた。
すなわち「Fateh-110」と「Zolfaghar」の2種類を、売り渡す。
それぞれ、レンジは、300km(最新モデル)と700kmである。
ロシアは開戦前に900発保有していたイスカンデル地対地弾道弾の残りが124発に減ってしまったので、その穴埋めが必要なのである。
「Zolfaghar」は筒体が非金属の複合素材でできていて軽い。だから射程が長い。「Fateh」は筒体が軽金属なので重い。どちらもGPS信号を参照して終末誘導されるので、命中精度は高いはずだ。
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Inder Singh Bisht 記者による2022-10-14記事「General Atomics Unveils Long-Range Projectile for 155mm Howitzers」。
ジェネラル・アトミクスの電磁システム部門は、150km飛翔する155ミリ砲弾を設計し終えたと発表した。
砲弾にラムジェットが組み込まれている。
これを発射するための58口径長の加農砲は、米陸軍が開発中である。こっちはまだ完成していない。(普通は39口径長。)
砲口を出た直後、スピンが毎秒20回転に抑制されるという。(通常は200回転/秒。)
上反角付きの展張翼と、揚力発生形状の弾体も、射程延伸に空力的に貢献する。
※雑報によるとフランスとスウェーデンは、155ミリ弾殻内から2個の弾子が分離して、空中から地上のAFVを自己鍛造弾によって破壊する「BONUS」砲弾をウクライナに供給する。
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ストラテジーペイジの2022-10-16記事。
8月にロシアはイランに2000機以上の「シャヘド131」と「シャヘド136」を発注した。あきらかに、ロシア国内でそれらをライセンス生産するという契約も結ばれた。
ロシア軍人たちは「シャヘド136」の方を好んでいる。全重200kgある。
「シャヘド131」は135kgで、やや軽い。
「シャヘド136」は連続5時間、飛び続ける。飛距離は180kmに達するだろう。弾頭重量は、15kg~25kgだと思われる。コストは1機、5万ドルする。そのうちガソリンエンジンの部分だけで3万ドルする。
シャヘドはトラックの荷台からつるべ撃ち式に射出される。小さなロケットを吹かして空中に舞い上がらせ、上空でエンジンを始動させる。
巡航姿勢になると同時に、アシスト・ロケットは投棄される。
GPS航法回路は、射出前にONにされる。
「シャヘド136」のエンジン音はとてもうるさい。それが低空を飛んでくるので、水平距離にして数キロメートル先から、音が聞こえてしまうという。12.7ミリの機関銃か、20mm以上の機関砲が、「シャヘド」を撃墜するのに向いている。
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Sean Spoonts 記者による2022-10-17記事「Sanctions Have Russia Building Frankenstein Tanks」。
チタにあるアタマノフカ戦車工場では、国家の量産要請に応じるため、車体とモデルが異なる砲塔をツギハギで載せてしまうという荒技を採用するようだ。手に入る限りの、ありあわせの戦車ストック・パーツをむりやりに結合させて、1両の兵器に仕立ててしまう。
※私見だが、3人乗りをあきらめて4人乗りにすると決めてしまえば、どんな組み合わせも可能になるだろう。鳥籠下の弾庫はとうぜん、全廃。装薬は基本的にすべて砲塔の外側に「吊るし柿」のように露天繋止しておけばいい。そこにRPGを被弾すると派手に燃え上がって、敵の目にはあたかも撃破したように見えるが、どっこい、車内は無傷で、全員、車体底の脱出口から、安全に逃げ出す時間を稼ぐことができる。煙幕を展張するようなものだから、ERAよりもよほど気が利いているはず。従来、自動装填装置が、「次弾」用の装薬を砲尾近くで保持して待機していたために、そこがまっさきにHEATの衝撃で発火したようだ。装薬の発火さえ、車内でゆるさないようにすれば、すくなくともBMPよりはマシな防護力となるだろう。
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Maya Yang 記者による2022-10-16記事「Alaska cancels snow crab season over population decline」。
アラスカの漁業者たちは、ベーリング海での今期のタラバガニ漁は、自粛禁漁と決めた。
昨年の水揚げ量が、過去40年間で最少であった。
乱獲と海水温上昇が関係しているか。
ブリストル湾では、秋のタラバガニ漁を自粛した。それに続いて、冬のズワイガニ漁も自粛となる。
スケトウダラ、ズワイガニ、オヒョウが、どんどん北の海へ逃げている。海水温の上昇を嫌っているのだ。
タラバガニは2年連続の禁漁となった。雌の成体数が激減していて、資源涸渇の趨勢が明らかなので。要するに濫獲なのである。
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Robyn Dixon 記者による2022-10-14記事「Russia’s airstrikes, intended to show force, reveal another weakness」。
露軍は金曜日に対地ミサイルを84発、火曜日には28発の巡航ミサイルを発射した。これにより36人以上の住民が死亡。
※WWII中の「V-2号」が、1発ごとに平均5~6人のロンドン住民を殺したと見積もられているのにくらべて、おどろくほど民間人殺害の効率が低い。かりに112発(=84+28)で40人が死んだとしよう。1発あたりでは0.357人殺された計算になる。いまや、1人の敵国民を殺したくば、高額な対地ミサイルを2.8発、発射する必要があるわけだ。最新刊の拙著でも書いたが、現代の不燃化した都市は、非核のミサイルを無尽蔵に吸収してしまえる。現状、軍資金に余裕ある中共ですら、台湾向けの対地ミサイルは2000発未満しか揃えることができていない。その2000発を撃てたとしても期待できる殺害人数は714人?
専門家氏いわく。ロシアはウクライナ全土の電力インフラと水道インフラを破壊しようと試みたが、いまだにそれも実現できていない。
これまでのあいだに精密誘導兵器類を都市のアパートや村落などに対してさんざん無駄撃ちしてしまったので、これからあらためて変電所などをピンポイントで狙おうとしても、それに必要なPGM兵器が涸渇してしまっているのだ。
空中発射式の巡航ミサイルの被撃墜率が高いのも注目されている。火曜日の空襲はほとんどが、航空機から発射する巡航ミサイルだったが、それはイスカンデルに比較して低速なので、途中で墜としてやりやすかった。
専門家氏いわく。露軍はこれまで、ウクライナ軍の後方兵站線の破壊妨害もできていない。すなわち、橋梁、鉄道、鉄道分岐点を、破壊することができていない。そのぎゃくにウクライナ側がHIMARSを使ってどしどしそれができている。
これは何を意味するかというと、仮に露軍に今の何倍ものPGM弾薬があったとしても、やっぱり彼らは失敗したであろう。
キングズカレジロンドンの教授氏いわく。プーチンには軍事的に合理的な目標選別ができないのだ。あたかも社会病質者が幼児的な癇癪を起こして攻撃命令を出している。都市をミサイル攻撃すれば彼の気は済むだろうが、PGMを無駄に捨てるも同然となり、ロシアは戦争に勝ちようもなくなる。
※非核のミサイルによる都市攻撃がなぜ軍事的には非合理的であるのに、政治的には「それ一択」のなりゆきとならざるを得ないかについては、拙著最新刊『ウクライナの戦訓』に書いておいたので、読んでみて欲しい。中共の台湾攻撃も、必ず同じパターンとなるだろう。それが「政治」なのだ。
西部の都市、リヴィウの変電所×6箇所にミサイルが着弾したのは、あきらかに、ウクライナから西欧へ給電されている電力を止めようとした《高等戦略》である。これから冬にかけて電力が得られないようにしてやり、西欧人の心理を動揺させようというわけだ。
民間アパートが密集する街区を攻撃してはいけないことは戦時国際法の基本。しかしロシアは過去数十年、二度のチェチェン戦争、シリア介入、そしてウクライナでもその他でも、徹底して意識的にこの戦争犯罪を反復してきたし、今もしているのである。
※そろそろ書店に『台湾有事なら全滅するしかない中国人民解放軍』が並んでいるでしょう。高くて買えないという人は、図書館に購入リクエストを出そう! お金持ちの人は、余計に買って学校の図書館に寄贈してください。

ウクライナの戦訓 台湾有事なら全滅するしかない中国人民解放軍