Boyko Nikolov 記者による2022-11-22記事「Israel to Russia: We’ll supply ballistic missiles to Ukraine if…」。
モスクワ駐在のイスラエル大使が、ロシア外務省の次官ボグダノフと面談して、最後通告した。
もしロシア政府が、イランかからドローンやミサイルを輸入するのを止めぬなら、われわれはウクライナ政府に弾道ミサイルを提供することを考慮する――と。
※これはアメリカ向けの高等外交だ。いつまでイランを甘やかしておくんだという、アメリカに対する怒りが、このような形で出てきた。イスラエルがウクライナにSSMを提供すれば、こんどはロシアが戦争を対東欧、対北欧にエスカレートさせるであろう。米国としてはそれは困るだろう。そうなるのが厭だったら、さっさとアメリカが直接イランを空爆しろよな、とイスラエルはバイデンに強烈に要求し始めたのである。どっちも選挙が済んだからね。
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The Maritime Executive の2022-11-21記事「Chinese Forces Seize Rocket Debris From Philippine Navy」。
土曜日の朝6時45分、フィリピンが領有する「ティトゥ」島の砂洲沖500mに宇宙ロケットの金属破片と思われるものが浮いていたので、島から比島海軍の小舟を出して拾い上げた。
それにワイヤーをつけて曳航して島に戻ろうとしたら、中共のコーストガード船『Haijing 5203』号が現れ、そのデブリを比島人から強奪したという。
そのさい海警は、曳航ワイヤーを切断している。
ここ数ヵ月、フィリピン領海で発見される「長征」ロケットの破片は多い。しかもそのひとつひとつの破片のサイズが西側の宇宙ロケットの破片よりもずっと大きいのである。細かく分裂するように設計されていないのだ。
『5203』号は2019年にマレーシアの海底油田掘削を妨害しており、このあたりの南支那海では札付きである。
このデブリ強奪事件は、カマラ・ハリスがマニラに到着する直前に起きた。
カマラ・ハリスはそのあとパラワン島の比島軍基地も視察した。
※そしてどうやらカマラ・ハリスは、この強奪事件について何のコメントもしなかったようだ。役に立たねえにも程がある。下院で民主党が負けたのは、日本にとっては朗報だ。
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Chris King 記者による2022-11-22記事「Germany agrees to provide Eurofighter jets to patrol Polish airspace」。
11月21日に政府間で同意した。ドイツ空軍の「ユーロファイター」戦闘機が、ポーランド領空をパトロール飛行する。
これとは別に、独軍装備のペトリオットをポーランド領内に展開することも決まっている。
※ウクライナ軍参謀本部の月曜日発表によれば、露軍はクリミア半島内で密かに「第二次動員」を続行していると。
※雑報によると、露軍が退却した地域からは、多数の露兵の戦死者を地面のゴミ集積焼却穴の中で一緒に焼いて、そのまま骨をゴミとまぜて捨てているという証拠がみつかっている。これはぼやぼやしていればウクライナ側の仕業だとロシアから嘘宣伝されてしまうから、証拠確保と検証も急がねばならない。やれやれだ。
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新刊紹介。
『「ウクライナ戦争」から日本への警鐘 有事、国民は避難できるのか』2022-10-5国書刊行会pub.
第1部の第4章に、台湾の兵役システムの紹介があり、また巻末には戦前の日本軍の予備役システムについて専門的な紹介があり、いずれも有益な資料だ。
台湾が侵略されるかされないかを占うには、台湾が有事に「挙国一致の抵抗」をするのかどうかを占わなければならない。そのための調査報道/現地調査研究が必要である。残念だが本書にそれは載ってない。専門書なのにその掘り下げは無い。ということは、どうやらそれをしらべている人間が日本国内にはひとりもいないんじゃないかという気がしてきた。
日本の政府が安全保障政策を考えるときに判断の基礎となる「周辺現地偵察」ができていないのだ。これは深刻な情報空白だと思う。なにをやっているんだという話だ。
独特の自衛意識に燃えたひとにぎりの国民党系ではない、一般の大多数の青年たちに、台湾国軍がプロとしてどんな軍事義務教練をほどこしているのか? 台湾メディアを読む限り、現状、それはほとんど真面目に実行されていないのである。
これは、依然として台湾国内が、少数の旧国府軍系と、大多数の旧島民系に国内分裂していることを示しているのである。(CSでみかける台湾軍の宣伝番組は、一般徴兵とは無関係な旧国府系のプロパガンダ。)
唯一の救いは台湾には国政選挙があることで、この調子であと10年も待っていれば旧国府の残滓は希釈されるだろうから、挙国一致の国防体制を整える下地環境は成熟すると多少は期待できる。
ロシアや中共は、隣国のうち「挙国一致の抵抗」をしそうにないところを狙って侵略してくる。その廟算が侵略のターゲットと様態を決めるのだ。ところがその肝腎の判断材料の情報が日本にはない。そんなんでゆるされるわけがあるか? 私の最新刊の巻末附録のレベルのネット調査すら、これまで誰もしてないらしい。冗談じゃないぜ。
79年の中越戦争で【トウ】小平は、あえて挙国一致の抵抗をするとわかっているベトナムを攻撃した。だがこれは、【トウ】小平のこころづもりとしては最初から「一撃離脱」の膺懲だけを考えていたのでOKなのだ。泥沼化する心配がなかった。
一旦、挙国一致抵抗体制が台湾内にできてしまえば、もはや中共にできることは、あの中越戦争型の「一撃離脱膺懲」だけとなるだろう。
しかし台湾国内の一般青年の軍事教練が今のような不真面目なレベルのままでこれからも推移するとなると、数年後にも、2022ウクライナ型の侵略が北京政府によって企図され得る。
そうなるかならないかは、これから1、2年の台湾人の態度が決めることだ。
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Parth Satam 記者による2022-11-22記事「China Turns Its Fighters Into UAVs; Could Swarm Taiwan From Five ‘Hardened’ Forward Airfields ? Reports」。
ミッチェル航空研究所というところから、報告書が公表された。
支那大陸の5つの航空基地から、旧式戦闘機の「J-6/7/8」を無人特攻機に改造したミサイルによるスウォーム攻撃が、台湾に対してなされる可能性があるとする。
いずれも広東省にある。航空基地の名称は、「Shuimen」「Longtian」「Luocheng/Huian」「Zhangzhou」「Shantou」である。
このうち「Shantou」だけが南方戦域コマンド。他は東方戦域コマンドの支配下。
※航空専門家といってもピンキリだ。まずこの報告書の関係者は「じぶんで疑問出しできない」という点で市井の空想家と同列であろう。古い有人戦闘機を安価に巡航ミサイルに改造できるなら、べつに人さまから提案されなくたって、とっくに実行していると疑わないのか? そこにはできない理由があると思うべきだろう。維持整備のカネと人手間と土地と施設を無駄に占有し、効果のほどは疑問だからである。普通に巡航ミサイルを量産した方が、カネも人も場所も節約できて、使い勝手が好く、しかも有効性も間違いないのだ。
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Amos Chapple 記者による2022-11-17記事「The Drones Of The Ukraine War」。
ウクライナ人が国内開発した「アエロロヅヴィドィカ R18」オクトコプターは、さいしょから爆弾投下専用に考えられていた。
機体を軽量化するため、なんと「脚」はつけていない。
だから、発進させるときには、運搬用ケースの蓋裏に「支柱」を4本立てて、その先端でアームを支える。
回収するときは、オペレーターが手でキャッチせねばならない。
おかげで5kgの爆弾を吊るせる。
クォッドコプターが被弾して1軸がもし止まったらまず帰還は望み薄。しかしオクトコプターの場合、被弾しても帰投できる可能性が残る。そこが、実戦向き。
R18は、1チーム20人で飛ばしている。
ロシア軍が使っている「Kvazimachta」というテーザード・マルチコプター。大型だが4軸だ。
ケーブルによって下から給電されるので、連続3日間も浮いていられる。
ただしケーブルの重さがネックとなり、高度は70mまでだ。
最前線の指揮官が戦場を、高さ70mの高地から俯瞰できる。そのような視察プラットフォームである。同時に、通信アンテナの機能も持っている。
※何年も前から私は、有線ケーブル給電式の軽量なマルチコプターを陸自の歩兵小隊に装備させるべきだと主張してきた。このロシア軍のドローンは、有線ケーブル型を軽量化しようとするのには難点があるらしいことを示唆してくれている。
※さらに何年も前から私は、現代の歩兵はCCDの「他撮り棒」を持って、敵より数m、「頭を高く」することが、錯雑地形戦場での偉大なアドバンテージになるはずだと主張してきた。しかしこれを実現している軍隊は未だ無いようである。
DJIの「Mavic」シリーズは、軽い擲弾の投下に使える。ところがDJI社では、この会社の製品のドローンの所在を地上から探知し、さらに、その操縦者がどこにいるかも教えてくれるデバイスを、別売りしている。〔記事ではレーダーと書いてあるが、これはレーダーではなく、全商品の送受信信号の中に固有識別コードが入っているのを利用し、それをパッシブ受信して読み取るのである。位置は三角標定で推定するしかないはず。〕すでにウクライナ兵の中に、このデバイスを利用され、姿を隠していたのにいきなり露軍の砲撃を浴び、戦死した者がいるという。
※DJI社としては、これは軍用に売ったつもりはないので、勝手に軍用に改造して戦死したのは良い教訓だと、口には出さずに思っていることだろう。
「オルラン-10」も、さいきんは「爆撃」をするようになっている。その報告が複数ある。
「スイッチブレード」の完コピ製品らしきものを10月にイランが飛ばしている。まだウクライナ戦場には出てきていない。
※日本経済の調子が悪いのは、中小企業の武器開発と武器輸出がゆるされてこなかったからである。デュアルパーパス商品の解禁と、中小企業による兵器受注ビジネスの奨励が、日本経済を復活させることは疑いもないのだ。だが、その指針とルールを考えつくだけの《道徳力》が、日本の関係省庁に足りない。困ったもんだ。
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Joseph Trevithick 記者による2022-11-22記事「Navy P-8 Poseidon Can Now Drop Winged Torpedoes In Combat」。
対潜魚雷の「マーク54」に折畳式の翼をつけて、巡航高度の「P-8A」の胴体下から落下させると、空中で主翼を開いて滑空降下開始。いいところで主翼を分離し、こんどはドログシュートを開いて海面に没入。海中でその傘コードを分離すると、あとはホーミング魚雷となる。
そのようなシステムをボーイング社は完成し、海軍から量産契約を貰った。
P-8Aの巡航高度は3万3000フィートである。従来、対潜魚雷はせいぜい高度100フィートから投下するものであった。
滑空してくれる水平距離だが、米海軍では最低でも20海里、飛んでくれることを期待している。
※ちかごろでは敵の潜水艦もSAMを発射してくるおそれが生じているから、有人の対潜哨戒機としてはこのような兵装システムが不可欠になるだろう。
「ウクライナ戦争」から日本への警鐘: 有事、国民は避難できるのか