ドイツが供与したゲパルトが実戦で巡航ミサイルを撃墜する動画が初めて撮影され、SNSに上がった。

 Thomas Newdick 記者による2022-10-5記事「Ukraine Modified Soviet-Era Jet Drones To Hit Bomber Bases, Russia Claims」。
  ロシアの航空基地×2箇所が同時に巡航ミサイルで攻撃された。エンゲルス基地とデャギレヴォ基地。

 ロシア側は認める。ウクライナが使ったのはソ連時代のジェットエンジン付きの無人機だと。
 例によって、《それをすべて撃墜したのだが落ちてきた破片で人が死んだのだ》と嘘宣伝している。

 ウクライナ内務相は、2箇所の航空基地のうち1箇所については、われわれがやったと認めた。

 注意。エンゲルス基地は、「エンゲルス2」とも表記される。まぎらわしいが、同じ飛行場のことである
 この基地は、ウクライナ国境から300マイル離れている。
 爆発音は、月曜日の早朝に、数マイルの半径で聞かれた。現地の朝6時過ぎに。ブラストを遠くから撮影したビデオ証言もあり。

 もうひとつの地元民証言ビデオ。エンゲルス空港のあるサラトフ地区で、爆発音がする少し前に、ジェット・エンジンの航過音が、同時に録音されている。これは特攻自爆ドローンのエンジンだろう。

 ロシア・メディアは、エンゲルス空港で2機の「ツポレフ95MS-H」重爆撃機が損壊したと伝えている。
 直後の「センチネル2」衛星の画像を見たが、解像度が低いせいもあって、大破している飛行機は確認ができなかった。小破なのかもしれない。

 エンゲルス基地には「ツポレフ95MSベア」と「ツポレフ160ブラックジャック」が展開しており、専ら、対宇の空対地巡航ミサイル発射に使われている。

 デャギレフ航空基地は、別名リャザン空港。ウクライナ国境からは280マイル。
 ここでも死傷者が発生していることを露国防省は認めている。

 ここでは「ツポレフ22M3」(バックファイアーC)の水平尾翼とエンジンノズルが損壊したようである。

 ディヤギレフ基地は戦略爆撃機など大型機のクルーを育てるセンターである。
 空中給油機の部隊も所在。

 ウクライナの大統領補佐官はSNSに書き込んだ。ロシアがじぶんが発射したミサイルが地球を一周して落ちたんだろ、と。

 どうも特攻機は「ツポレフ141」無人偵察機を改造したものらしい。この謎の機体は3月にクロアチアのザグレブに墜落している。そこはウクライナ国境から350マイル離れていた。

 ※『WSJ』によると米国はウクライナに与えたHIMARSのソフトを書き換えて、長射程のATACMSを発射しようとしてもできないようにしているという。ATACMSのレンジは190マイルだ。米国が供与してくれないなら、自国で工夫するしかない。それを半年強でなんとかやりとげた。

 ソ連時代に製造された「ツポレフ141」は、全長47フィート強、幅12フィート強。エンジンはターボジェット。

 6月には、ウクライナ軍の「ツポレフ143」がロシア領内で撃墜されている。これは「ツポレフ141」の親類の無人ジェット偵察機。ただし小型なのでレンジは125マイルしかない。「ツポレフ141」は650マイルだが。

 ※毎度、しつこく繰り返して恐縮なのだが、正しいことなので繰り返す。わが海自が「拡大しらね型」を保有していたならば、退役戦闘機や練習機をこのような「改造巡航ミサイル」に仕立てたものを随意随時に格納し、、それを洋上からロケットアシストで打ち出して、敵基地を内陸奥深くまで攻撃できるのである。ウクライナはたった半年の時間で今回の改造をやりとげている。日本にそれができないはずがあるか? 日本の防衛体制に足りないのは、カネでもなければ技術でもない。物事を「早くやる」という「機転の利いた人材」が致命的に不在なのだ。核戦争が1年以内に起きるかもしれないのに、10年後の話をしていることがそもそも「無責任」だとは思わないのだろうか?

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 Matthew Roscoe 記者による2022-12-5記事「BREAKING: Reported drone strike hits Saratov airfield in Russia」。
   ロシアのサラトフ飛行場に無人特攻機×2が突入し、戦略爆撃機×2機を破壊した模様。
 場所はエンゲルス空軍基地で、破壊された2機は「ツポレフ95」だったとも。

 リャザン地方のデャギレヴォ軍用滑走路にも1機の無人機が突入自爆し、燃料トラックが吹き飛び、3人死亡し、航空機×2が損傷したと。
  ※これは燃料トラックではなく、エンジン始動車であった由。

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 Anna Commander 記者による2022-12-3記事「Russian Official Wanted to Use Dogs as Suicide Bombers in Ukraine: Report」。
    オリヨールの共産党の第二書記がよびかけた。野良犬を集め、対戦車自爆犬として訓練し、ウクライナで使おう、と。

 この報道について、前の在欧米軍司令官のマーク・ハートリング大将がSNSに書き込み。なぜわざわざ犬を自爆肉攻隊として訓練しなきゃならないのか、よくわからない。だって露軍は部下兵隊に同じことを既に命じているところじゃないか。

 ※軍工廠があるツーラ地方では、戦時中の食糧配給切符(クーポン)が復活した。肉・牛乳・魚は、今後は、現金では買えなくなる。しかしまさか文字通りの羊頭狗肉じゃあるまいね? 昔の「クーポン」について知りたい人は、旧著『兵頭二十八の農業安保論』を読むとわかるよ。

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 Chris King 記者による2022-12-2記事「Switzerland plans to ban electric cars from its roads」。
   金曜日にスイス政府は声明。冬に向け、電力事情がもっと悪くなるようなら、国道を電気自動車が走ることを禁止するであろう、と。

 不要不急の自動車旅行は、禁止されるであろう。?

 スイスの電力の60%は水力発電でまかなわれている。
 30%は原子力であるがこれは閉鎖する。
 あとは輸入化石燃料頼みの火力発電か、風力発電しかない。

 冬は河川の水量が減るので、水力発電量も減る。その分、輸入しなければならない。

 さいわいスイスはロシア産のガスには依存していない。

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 Maria Varenikova 記者による2022-12-4記事「In Forests Full of Mines, Ukrainians Find Mushrooms and Resilience」。
   ウクライナの都市郊外では秋から降雪前までがキノコ狩りのシーズン。セミプロのキノコハンターが森に入って採集しまくって市場で売れば1000ドルになることもある。問題は地雷と不発弾。各都市圏で数名ずつの死傷が報告されている。

 例年、市民の気晴らしイベントだったのだが、今シーズンは、きのこ狩りのために森に入る人はさすがに減った。死体や墓と頻繁に遭遇して不気味だからだ。

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 Irina Scherbakova & Jonas Walzberg 記者による2022-12-5記事「’No Diplomatic Solution’ to Ukraine War: Nobel Winner」。
    人権活動でノーベル平和賞を与えられたロシアのNGO「メモリアル」の代表の一人が言う。今はウクライナ戦争に「外交的解決」などありえない、と。相手がプーチン体制である限り、そんなのは無意味である。

 ※コンラッド・ヒルトンいわく。《荒っぽい人間とビジネスすることは可能だ。しかし嘘つきと取引をすることは、誰にも不可能だ》。

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 Boyko Nikolov 記者による2022-12-5記事「Russian BMPs will not fire accurately with 30x165mm ammunition」。
    旧ソ連製の「BMP-2」戦闘装甲車から発射される30ミリ機関砲弾にはいろいろある。新鋭の徹甲弾としては「3UBR8」とよばれるAPDS-T(サボ分離高速徹甲曳光弾、ただし旋転安定式)と、それより進歩した「3UBR11」とよばれるAPFSDS-T(サボ分離高速徹甲曳光弾、ただし羽根安定式)がある。

 前者は初速1120mで、距離1500m先の傾斜圧延鋼鈑25粍厚を貫徹できる。後者はもっと行く。

 確認されている大問題。前者の散らばりが酷くて、対APC戦闘に使い難い。なんと距離100mで、照準点から1m以上、ずれてしまうという。この原因は、サボ(砲口直後で分離するプラスチック製の送り包み)が、砲身の前端部のマズルブレーキの穴列に当たるためらしい。となると、やはりサボを用いている後者のタマも、対装甲戦闘には使いものにならないおそれがある。

 マズルブレーキの穴を1~2ミリ、拡大したら、問題は改善されたという。
 ※ウクライナ側の話である。

 この改造によって、サボを使わないいちばん古い徹甲弾である「3UBR6」の精度には影響はなかったという。このタマの初速は970m/秒で、700m先の傾斜圧延鋼を2センチ、貫徹できる。

 なおまた、30ミリ砲身の古い型だと、マズルブレーキがないので、このトラブルから免れているそうだ。



兵頭二十八の農業安保論