おそまつり。かみのけではなく蟹の毛だった。

 12-24にSNS上に流れた、UAVの残骸フッテージ。ウクライナ軍所属のT-72戦車が叢林中の低いところの樹間にカモフラネットを水平に張り渡して、そのシーリングの下で長時間、停車をしていた。そこへ露軍の「ランセット3」が降って来たのだが、カモネットによって直撃は阻止され、ランセットは主翼とプロペラが飛散し胴体が前後に分裂(もしくは2機突入して2機ともに分裂)した状態で、ネットの上にひっかかったまま。
 ネットは破れておらず、戦車も無傷のようなので、弾頭(3kg弱)は起爆しなかったのだと想像される。

 かねて私が提言してきたように、プロペラ推進式で、着速がATGMよりも低速とならざるをえないロイタリングミュニションに対しては、四隅支柱などによってAFVの砲塔天板より上方へ高々とタープ(tarpaulin)類似の素材のカモフラ網、もしくは幕を水平に展張しておくことが、敵ドローン視察に対する我がAFVの所在秘匿にもなり、また直接的な《防弾》手段になってくれるだろう――との想像が、遂に実証されたと思う。

 今回の事例では、所在秘匿には失敗しているわけだが、これは赤外線(熱線)が網目を透かして輻射してしまったからだろう。カモネットはおそらく「国防婦人会」のハンドメイドなのだ。それで、バラクーダのようなIRマスキング機能は無かったのだろう。
 あるいは、叢林まで続く軌条痕が、ありありとしていたのかもしれん。

 着発信管を、ネットに刺さったぐらいでも起爆するような敏感なものにすると、こんどは、飛行中の突風にも感応してしまいかねないから、低速ロイタリングミュニションの開発者としては、頭が痛いだろう。着発ではない、とくべつな信管を工夫する必要がありそうだ。

 ※リトアニアは「スイッチブレード600」を米国に正式発注し、欧州NATO軍として最初にこのロイタリングミュニションで武装することになった。

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 Greg Waldron 記者による2022-12-23記事「Russia’s workhorse Orlan-10 UAV relies on western technologies」。
    「オルラン-10」があるとないとでは、露軍の砲兵のリスポンス・タイムに霄壤の差が生ずるという。
 この観測UAVと砲兵が連携しているときには、たったの3分で、正確な砲撃を始められるという。

 しかし露軍砲兵が「オルラン-10」を使えないときには、昔のロシア軍になってしまう。

 「オルラン-10」の巡航スピードは150km/時にすぎない。しかし高度は1万6400フィートを利用できる。地上からは、まず、音しか聞こえない。

 滞空16時間可能。

 単価は8万7000ドルから12万ドルというところだろうと推計されている。

 この「オルラン-10」を製造するのに不可欠な多数の西側製コンポーネンツを連中はどうやって入手しているのか。詳細な調査報道がさいきんなされており、米国、欧州(オランダ、スイス、他)、中共、韓国、香港の商社が手を貸していることが分かっている。

 ※国家・国民には「無形の防衛資産」がある。それは、長年にわたる、対外的な「信用」だ。浮きドックをソ連に輸出していたときの日本にその信用はあったかというと、ちょっと危なかった。しかし今は違う。日本人は基本的に悪いことはやらないと信用されているのだ。その基盤は、80年代以降の海外渡航邦人のふるまいが、草の根から、現地公安関係者に感銘を与えてきた、その積み重なりである。

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 2022-12-24記事「Turkey testing its own version of high-precision bomb conversion kit similar to American JDAM」。
   トルコのメーカーがJDAMの同格品の自主開発に成功した。
 双発の無人攻撃機「アキンジー」に吊下することになるであろう。

 動かない目標に対しては、水平距離18kmで誘導爆弾をリリースできるという。ジェット攻撃機がプラットフォームなら、37km手前から放出できるという。

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 Joseph Trevithick 記者による2022-12-23記事「Ukraine Asked For 100 A-10 Warthogs Just Weeks After Russia’s Invasion」。
    2-24の開戦から数週間後の3月後半、ウクライナ国防相のレズニコフは、米国のオースチン国防長官に面談した際、「A-10を100機、めぐんでくれ」と個人的に打診したが、即座に却下されたんだそうだ。

 オースティンは、100機も譲渡できるもんじゃないし、A-10は露軍のAAの前にはまったく脆弱でダメだよと答えた。

 これは『ワシントンポスト』の特だね報道で、レズニコフに直接インタビューして聞き出している。

 ラズニコフは何の考えもなく「100機」と言ったのではなく、公開情報を総合して、米国内にはサープラスのA-10がそのくらいあるはずだと見積もったのだそうだ。
 すなわち、アリゾナ砂漠のボーンヤードに捨ててあるものを再生して引渡してくれよと頼んだわけ。

 じっさい、デヴィス・モンサン空軍基地には、A-10Aが49機、C型が10機、置いてある。11月時点で。
 しかしA型はもうとても飛ばせられるコンディションじゃない。
 カニバリズム整備用に部品も取られまくっている残骸なのだ。

 いま米空軍は、現役の飛ばせるA-10C型機を281機、運用中である。A-10の製造は1984年をもって、とっくに終了している。

 オースチンの説明にラズニコフは納得し、要求を引っ込めた。

 『WP』紙によると、ウクライナは「MQ-1C グレイイーグル」も公式にリクエストし、それもまた断られたという。

 諸情報を総合すると、これからさき、ウクライナにA-10が引渡されるようなことは、ほとんどありそうにない。米空軍もあと5年で除籍したがっているような、整備に人手とカネばかりかかって、敵の空襲の阻止には役立たない、不自由な資産だからだ。

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 CNAの2022-12-24記事「TSMC to hold 3nm process mass production launch ceremony on Dec. 29」。
    台湾南部のサイエンスパークににTSMCのあらたな巨大工場の建設が始まる。そこでは3ナノメーターの回路書き込みができる。(既存工場は5ナノである。)
 12-29日に起工式典を執り行う予定だ。

 アリゾナ工場の起工式は12-6にあった。そこでは2024年から4ナノを製造し、2026年からは3ナノを製造する予定。
 台湾国内では、3ナノ技術を米国が強制強奪するのだという声あり。それを打ち消すのが、こんどの国内工場である。

 TSMCは2ナノの新工場を2025年から新竹市に建設する計画である。

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 AFP の2022-12-23記事「Critics Slam 16-Year Term for Belarus ‘Railway Partisan’」。
    ベラルーシで鉄道運行を妨害した反体制運動家に、懲役16年の判決くだる。二十代後半の青年。
 4月に逮捕されたのだが、そのさいに、両膝を銃で撃たれているという。

 この青年らはミンスク市の南東にある町で電気リレーボックスと信号ボックスに放火し、また「脱線器」も所持していたという。