ロシアは休戦のイメージとして「1939~40冬戦争」のパターンを狙っているのではないか?

 1939年11月末にフィンランドに宣戦布告して開戦し、激しい抵抗に遭っていったんモタつくが、1940年2月1日から全線でさぐりの攻撃を加えて弱点を把握し、最も気温が下がる2月中旬から猛攻。同時に和平会談もよびかけ、3月12日おそくに即日停戦を合意させた。

 プー之介はこのイメージを呼び起こしているところだろうと思う。

 そこで以下、「ttps://www.feldgrau.com/WW2-German-Finnish-Winter-War」を参照し抜粋しておこう。

 フィンランド国軍は1918-1-16に創設された。
 それ以前には「ホームガード(郷土防衛軍)」しかなかった。

 共和国上院はマンネルハイム中将をその総司令官に任命した。

 フィンランド国内は白色地域と赤色地域に分裂していた。赤色地域はフィンランドがロシア帝国支配下の自治共和国であったときにロシア色がついたのである。

 白色地域は自由主義圏で、マンネルハイムはそこから新生国軍を構築した。

 内戦では1万8000人が死んだ。

 このときドイツからフォンデルゴルツ将軍が率いる1万2000人のバルチック師団が、白軍の応援としてハンコに上陸している。
 赤色地区には露軍がいた。4000人前後が戦闘に参加している。

 激戦5ヵ月、フィンランドからロシアは駆逐された。

  ※分裂の下地があるから侵略された。ここが最も重要なポイントである。下地がなければそもそも侵略は受けない。

 ソ連のフィンランドに対する宣戦布告は1939-11-30。

 「冬戦争」が始まったとき、多くのフィンランド兵が古いフランス製のライフル〔ベルダン銃〕しか持っていなかった。小銃弾は絶望的に足りなかった。

 将校と下士官の中核は、WWI中にドイツ軍の一翼の「猟兵大隊」だった者たちだった。

 マンネルハイムは、戦前は正式にはロシア軍将校であった。

 大砲不足は深刻だった。砲兵の訓練では露軍を凌ぐ自負があったのだが、物量が足りなかった。

 1個師団あたり、野砲が36門だった。

 露軍の方は、各師団に78門もの野砲があった。
 そのうえ露軍には、攻撃のたびに増強してもらえる予備の砲兵もあったのだ。

 冬戦争の緒戦の時点でフィン軍は野砲用砲弾が20万発、野戦榴弾砲の弾薬が7万発しかなかった。

 対する露軍は、たとえば「第2師団」が2月の攻勢をかけたときには6時間で20万発以上を砲撃した。

 ぎゃくに、連隊と大隊は、フィン軍の方が大勢だった。

 この結果、小競り合いではフィン軍は優勢になり得た。東部カレリアやラップランドの森林帯では。

 露軍が本気を出したように見えたのは2月からだった。CASも重厚になった。

 まず探り攻めを全線で仕掛けてきた。弱点を探し当てようというのだ。2月1日から2月10日まで。

 10日連続で激戦すると、どんな部隊もくたびれる。交替予備がある側が勝つ。
 過労のため精神崩壊する将官続出。フィン軍は、規模の大きい部隊を指揮できる高級将校を育てていなかった。

 2月12日から13日にかけての夜間は、気温がマイナス30度に下がった。防備軍に地下壕がない場合、これは大ピンチである。
 1940-3月-12日と13日のあいだに、和平合意が成った。於・モスクワ。

 ※今日、これを再現したくとも、現実は甘くない。もっか、バフムトでは、じりじりと露軍は占領域を明け渡しつつある。ここに大量の動員新兵を突っ込まないとしたら、この地点に努力を集中させてきたプー之介の面目は潰れる。しかしバフムトにありったけの予備軍を投入すれば、他戦線での圧力は消えてしまい、次の大攻勢につながらない。そもそも、攻勢が進捗していない地点に後ろから予備軍を増援してやるという流儀はまったくソ連伝統のドクトリンには反するのだ。停滞している戦線は見捨てるというのがソ連流なのである。

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 John Varga 記者による2022-12-25記事「Putin scuppered as Ukraine unleashes ‘revolutionary’ new weapon to outgun Russia in battle」。
    英国防省の推計では露軍は開戦前に90万人の現役兵力を擁していた。そのうち20万人がウクライナ征服戦争に振り向けられていると。

 また2-24開戦時点で使えた戦車は1万3000両、砲兵は6000門、装甲車は2万両というところであったと。

 それをウクライナ軍は、19万6000人の現役総兵力で迎え討った。戦車は2000両、砲兵は1960門、装甲車は2870両が手持ちのすべてであった。

 米国のハイテク企業「Palantir」社が、ウクライナ軍に一種のAIソフトを提供し、これが宇軍の善戦を支えたという。
 砲兵の間接射撃が、このうえもなく合理化され、迅速に正確に敵部隊や補給線を潰せるようになるソフト。こいつの使い方をウクライナの砲兵部隊将校は、たちまちにして習得した。

 砲兵システムをデジタル化することにより、敵のアナログ砲兵よりも少ない門数で、侵略軍を粉砕できる。

 ソフトの名は「メタコンステレーション」という。それはまず民間衛星とドローンのIR画像によって敵部隊の陣地を把握する。潜入斥候からの無線報告も役立てられる。

 宇軍砲兵指揮官はタブレットを見れば、次の1発をどの座標に向けて発射すればいいのかが分かる。

 このソフトを活用すれば、1門の大砲が、1日のうちに、最大で300地点もの敵部隊を、次々に片付けてしまえるという。

 いま、バフムトからは、すごい臭いがするという。放置されている露兵たちの屍臭だ。一帯が「肉挽き器」のようだと表現されている。
 ※写真がWWI のヴェルダンを彷彿とさせる。

 いま、HIMARSが脚光を浴びているが、その終末誘導ロケット弾は、最近開発されたものではなく、ハードウェアとしては十数年前からあったものにすぎない。急速に進化しているのは、ソフトウェアと指揮システムなのだ。

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 Zoe Strozewski 記者による2022-12-22記事「Putin Has an Ominous Spring Strategy for Ukraine War: Four-Star General」。
    防禦ばかりしていたらいつまでも敵国の侵略行動を終らせることはできない。もっと射程が長い対地攻撃兵器をウクライナ軍に供給して、反転攻勢をかけさせるようにしなければ、このまま無限戦争になってしまう。
 このように退役陸軍大将のバリー・マカフレイは『ニューズウィーク』に語った。

 いわんやプーチンが企図している春の攻勢は、無傷のベラルーシ軍を北から投入するものだろうから、今のような「塹壕戦」をだらだらとやっている場合じゃないぞ。

 ルカシェンコは、予告なしの動員演習を今月、実施した。自軍が命令一下、動ける態勢になっているのかどうか、確かめたのだ。
 もちろん、ルカシェンコはプー之介の言うなりになって自滅するなど御免である。しかしロシアの手先はいつでもルカシェンコを暗殺できるので、表立って逆らうこともできない。

 ※雑報によるとベラルーシのマチュビシチ航空基地に展開していた露空軍のミグ31Kが、吊下していた「キンジャル」のモーターがなぜか自燃発火したために火災となり、1機まる焼けの模様。

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 Sakshi Tiwari 記者による2022-12-25記事「Viral Image Of China’s ‘Upgraded’ J-20 Stealth Fighter, J-20B, Mesmerizes Netizens; Experts Decode The Aircraft
    「殲20B」型の写真がSNSに出回っている。形がA型とはすこし違ってきた。
 艦上機の「殲35」のコクピット後方の形状の影響が見られるという。

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 ロイターの2022-12-25記事「Head of major Russian shipyard dies suddenly, no cause given」。
  非核のキロ級潜水艦を建造しているサンクトペテルスブルグ海軍工廠の長アレクサンデル・ブザコフが不審死。彼は11年間、その地位にあった。年齢は六十代とのこと。