ロシアは、イラクへ輸出されるはずだった「パンツィール S1」を、自国内の飛行場防空用に展開しはじめた。

 Tanmay Kadam 記者による2022-12-27記事「Shooting Down A $14,000 Geran-2 UAV With A Million Dollar Missile Cannot Win That War For Ukraine – Experts」。
    ロシア軍は、特攻ドローン攻撃をしかける際には、1目標に対して12機をスウォーム殺到させるようにするのが良いと考えている。ただ、じっさいには「シャヘド136」の輸入量が追いつかず、5~6機のスウォームになってしまっているが……。

 また露軍は、特攻ドローンを低空と高空の2機ペアで飛ばす戦法も使う。もし低空を先行するドローンがAAで撃墜されてしまったら、高空を続行するドローンが目標を引き継いで狙う。もし先行機が目標突入に成功したら、それを見届けた後続機は別目標へ向かうわけだ。

 これまでのところ、ウクライナ軍は、襲来した特攻ドローンの6割を墜としている。調子の良い日には8割を阻止できている。

 だが問題は、それは金銭的・物質的に持続可能なのか? ――ということ。

 「シャヘド136」の単価は2万ドルだ(1万4000ドルだとしている論者もあり)。ドイツが援助したSAMシステムの「IRIS-T」はミサイル1発が43万ドルするであろう。

 ※この記事に、車載の「IRIS-T SLM」の写真が添えられているのだが、前後重連の装軌車体の前車に操作員を乗せ(おそらくキャビンは軽装甲)、後車は非装甲で、ミサイルをむき出しに搭載する。これは沼地の多い国土ではとても合理的なレイアウトだ。沼地では、たとい浮航能力を有する車両でも、単車では横倒しになるのを止められない。浮力が左右不均衡に働くためだ。重連とすることにより、前車が傾きかけたときに、後車の力によって後退脱出を図れるのである。ちなみに1939~1940の冬戦争でソ連軍は2月に大攻勢を計画した。1年のうちで最も寒いとき、湿地や泥沼だけでなく、河川と海面までが固く凍結してくれるので、車両の迂回機動コースは無限化し、敵の防備陣地の背後へかんたんに廻り込めるようになるからである。

 「Molfar」というNGOによる試算では、ウクライナは9月13日から10月17日までのあいだ、露軍の無人特攻機を阻止するために2814万ドルを使ったはずだという(この中に各種のSAM代が含まれる)。

 それに対して、攻撃を発起したロシア側では、1166万ドル~1790万ドルの攻撃コストしかかかっていない(この中に「シャヘド136」の代金が含まれる)。

 ※大手メディアからの確たる報道がなく、SNS動画だけが出回っているのだが、ロシア各地の銀行で年金を引き出そうとした老人たちが、「現金がありません」と言われて門前払いされている。

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 ストラテジーペイジの2022-12-27記事。
    台湾がSEAD用のロイタリングミュニションとしてこしらえた「剣翔(Chien Hsiang)」は、イスラエルから昔買った「ハーピィ」を参考にしている。

 プロペラ駆動。1.2m×2m。自重6kg。
 巡航185km/時で、5時間滞空可能。

 最大航続距離は900kmという。

 敵のレーダー波をパッシヴで捉えてそこに向って突っ込んで行くのだが、機載のビデオカメラを通じた操縦もできる。※甚だ疑わしい。パッシヴだけなら衛星リンクなしでも長射程化可能だが、画像操縦するとなったら衛星リンクが不可欠である。ぜんぜん違うシステムになってしまう。価格も数倍、高くなる。

 ダイブ突入時の終速が600km/時くらいになるので、敵のレーダーの破壊にはこのエネルギーだけでも十分である。

 トレーラーに乗るコンテナ内部に3段×4列に格納され、そこから打ち出す。

 量産はしかし2024にならないと始まらないという。この遅れは、自律誘導のためのソフトウェア開発が未熟段階であるため。

 台湾は1990年代にイスラエルから「ハーピィ」を買った。敵のレーダー波を自律探索させて自律突入する。画像操縦しないからスウォームにしても安い。

 イスラエルは「ハーピィ」の次に「ハロプ」を完成したが、画像を通じてリモコンもできるようにしたために単価が跳ね上がった。重さも135kgに増えた。
 「ハロプ」は、インド、トルコ、ドイツに輸出されている。

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 Marc Santora 記者による2022-12-26記事「Ukraine is offering Russian soldiers detailed instructions on how to surrender to its drones」。
    今月、ウクライナ軍は、ドローンによって露兵に投降をうながす作戦を開始した。

 これは11月後半に、じっさいにマルチコプタードローンに向かって両手をあげた露兵があらわれたため。有効だと確信した。

 ウクライナ軍参謀本部がビデオを製作した。ロシア語で、どのようにすれば投降できるかを教えるものだ。

 ※雑報によると、ドローン爆撃によって受傷した露兵が、予後を悲観し、手榴弾で自決するシーンが撮影されたそうである。ニューギニア戦線の日本兵かよ!

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 Defense Express の2022-12-25記事「The russians Found a Radical Solution to the russian AK-12 Rifle’s Flaw, and It’s Hilarious」。
    今次戦役で露兵が持たされた「AK-12」が欠陥品だいうことを露軍とカラシニコフ社は認め、2023年からは改良型の「AK-12M1」を製作するそうである。

 兵隊が不便を感じたのは、マズルブレーキを外せないこと(銃身に熔接されている)。そしてこれが外せぬかぎり、倉庫に露軍歩兵装備の標準品として存在するサイレンサーも取り付けることができないのである。
 ならばAK-12専用のサイレンサーが作られているのかといえば、それは無い。ふざけるなという話。

 「米軍のM4カービンよりすぐれている」とさんざん自慢していた「2点バースト射撃」のセレクターは、M1型では、なくされる。

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 Mun Dong Hui 記者による2022-12-26記事「Some N. Korean military units shorten training periods due to food shortages」。
 平壌の南の地区。例年、12月1日から、郷土防衛部隊(ミリシャ)の訓練年度が始まる。
 稽古をつけるのは、正規軍である。

 北鮮では、12月から翌年3月までが「冬の訓練期」で、7月から8月までは「夏の訓練期」ということになっている。
 ※どちらも農閑期を選んでいる。

 12月にはまず中隊規模の訓練をするのが普通である。

 この集合訓練のために国家から郷土防衛組織に対してコメの支給があるのだが、今年はいつもの半分の量だという。そのため、集合訓練の日数は、半減するそうである。

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 Defense Express の2022-12-27記事「How Much Time Would Need Ukrainian Tank Crews to Master Abrams」。
    ポーランドは米国製のM1戦車を導入する予定なので、それにあわせて15万人もの将兵に、その取り扱い法を教育する施設が、2022-8から立ち上がっている。場所はドイツ国境に近いポズナニ。スペアパーツはドイツの飛行場から届くのでそれが都合がよい。

 先に米政府は、ポーランドが手持ちのT-72をウクライナに援助するなら、その穴埋めに116両の中古品のM1をポーランド軍に供与すると約束していた。

 それとは別に、訓練用として米陸軍が、28両の「M1A2 SEPv2」をポーランド軍にリースする。
 ポーランド軍は新品の「M1A2 SEPv2」×250両を購入するつもりである。

 最初にひきわたされる中古116両に必要なクルーは「×4」で400人以上。
 それをポーランドの訓練施設では3ヵ月で育てるつもりであるようだ。

 ここからの推定。もしウクライナ軍がM1を貰える日が来るとした場合、やはり教育訓練には最低3ヵ月必要なのだ。

 しかしポーランド軍は平時のNATO演習でM1を間近に観察できる機会がふんだんにある。ウクライナ兵はそのチャンスには恵まれていない。

 米政府がM1戦車をウクライナに提供する可能性は、低い。それが現実だ。

 ※中型の農業トラクターには「カウンターウェイト」が付属している。車体の前方もしくは後方で重い物を持ち上げる作業の時に、車体が軽すぎると重力バランスでひっくりかえってしまうから、反対端に「おもり」を吊るすことで前後バランスを整えるための備品だ。ジョンディーア社の鉄製ウエイトは、簡単に増減できるように板状のものを何枚か重ねて吊るす。このほど、それを1枚ずつ車体側面に貼り付けて「増加装甲」としている露軍のT-72戦車が撮影された。