M1戦車はまずいが、ブラドリーならOKみたいだ。

 Ashish Dangwal 記者による2022-12-29記事「AUKUS A ‘Booby-Trap’; Buying Nuke Submarines From The US A Big Mistake ―― Australian Military Veteran」。
    豪州陸軍の情報将校で、すでに退役しているクリントン・フェルナンデスが、過去、スコット・モリソン政権が軽率に決定してしまった「原潜購入路線」は、豪州を破産に導くと警告している。『シドニー・モーニング・ヘラルド』紙上で。

 フェルナンデスの代案は、非核通常動力の潜水艦であるようだ。

 もと潜水艦乗りで、今は豪州連邦上院議員のレックス・パトリックも、300億ドルばかり資金を用意するなら、枯れた技術だけを使った非核動力潜水艦を20隻、国産できるだろうと示唆している。

 8隻の核動力潜水艦の予定コストは1億7100万ドルである。

 原潜ではなく、非核動力潜水艦を整備する方針にするなら、浮いた予算で空軍や水上艦隊などを増強できる。国内軍需工業基盤強化のために数百億ドルを投資する余裕も生まれる。

 いまの計画だと、最初の『ヴァジニア』級SSNは、2040年代にならないと作戦開始できず、8隻目が納入されるのは2060年である。その頃には対支戦争はすべて済んでしまっているかもしれん。

 それだけではない。もともと豪州には原潜の維持を支えるに必要な工業基盤がなにもない。それをゼロから構築しなくてはならず、そのためには、いくら必要になるかわからない。1隻35億ドルの取得費用だけでは終わらないのである。そのあとに、付帯経費が恒久的に重くかかってくる。しかもそれが完成しないうちは、修理一切、米国か英国にカネを払って頼むしかない。これはもはや、「客を一生の罠にはめる悪辣セールス契約」のたぐいではないか。

 米英型原潜の原子炉には、93.5%にも高濃縮されたウラン燃料が装載される。それは豪州が国産できない燃料だから、所有権は英米にあり、その管理人(監視人)がいつでも豪州原潜にアクセスできることにもなる。いったいどこの国の軍艦なのかわからない。しかもそれを維持するカネは豪州国民の税金なのだ。

 スコット・モリソンは、船殻だけは豪州国内で製造するから雇用が生まれると宣伝したが、たぶんそうはなるまい。その路線にこだわれば、最初の1隻目の就役はさらに遠い未来の話となり、カネもますます余計にかかるだけだ。

 核保有国は、IAEAに対して、原潜の核燃料について、いっさい秘密にしていいことになっている。ところが豪州は核武装国ではないから、この特権は適用されない。すると、どういうことになるんだ? まさか原潜の燃料について米英が秘密にしていることを、豪州役人の口から逐一IAEAにリークできるわけがあろうか。この問題をどうするのかも、何も決まっていない。

 イラン、ブラジル、韓国は、ひそかに核武装したがっている。もし豪州が、原潜燃料についてIAEAに対して非公開特権を認められたとなったら、イラン、ブラジル、韓国も、これさいわいとばかり、「わたしたちも原潜をつくりますので」と表向きに説明して、裏でせっせと核爆弾を製造できることになってしまう。

 ※アメリカ人の軍事史家が口が裂けても言わない「空想」があると思う。それは、フィリピン群島の中に、米軍の航空基地+軍港として存分に使える小島をひとつ、米国領土として領有していたなら、今日、対支戦略の構築問題は、どれほど単純であったか――ということだ。フィリピンの現況があまりに不安定で弱体で、内部もバラバラであるために、南シナ海の正面が、ガラ空きなのだ。比島が無力すぎるために、この広漠海面の「力の真空」を、日本と豪州とに埋めてもらわなくてはならぬ。それには日本には小型空母を持ってもらわなくてはならず、豪州には原潜を持ってもらわなくてはならんというわけなのだ。しかし、発想を転換すれば、もっといい解決方法があるぞ。それは、《日・豪・比》の三国間軍事同盟だ。ほんらいこれには米国が加わるべきだが、米政府と米議会はフィリピンの内政、殊に対麻薬戦争と対イスラムテロ戦争に、無責任に口先介入をしすぎる。こういうわずらわしい手合いを混ぜたら、なんだって機能しなくなる。日本と豪州はそんな内政には「三猿」となって目をつぶり、フィリピン群島内に、連合航空隊(主力は無人機)と、連合潜水艦隊(主力はUUV)を平時から常駐させる。これで、取得まで何十年かかるか分からぬ空母だの原潜だの、くだらぬモノは、一切、要らなくなる計算じゃ。フィリピン群島こそ不沈空母であり、不沈テンダーなのだ。コンテナサイズの軍用UUVの建造実績では、すでに豪州が日本の先を行っている。十分に国産できると証明されている。

 次。
 『The Kyiv Independent』の2022-12-30記事「Bloomberg: US considers sending Bradley fighting vehicles to Ukraine」。
  ブルームバーグの特だね報道によると、米政府は、ブラドリー歩兵戦闘車をウクライナ軍に供給することを検討中だ。最終決定は、されていない。

 ついでのニュース。露軍のAWACSである「A-50U」が1機、ベラルーシ国内に進駐していたのだが、再びベラルーシを去った。

 ※25㎜機関砲とTOWを備えるブラドリーが、今のウクライナの戦場で、どのくらいの攻撃力と防護力を発揮できるのか? 米軍は、知りたくてしょうがないだろう。この実戦テストが、西側各国の次の歩兵戦闘車の開発方向を決定付けると思う。ドローンのスウォームの前にブラドリーすらやられるようなら、将来の歩兵戦闘車はむしろシンプルなAPC化するだろう。逆に、ブラドリーが露軍のT-72を一方的に駆逐できると実証されれば、高額なISR付きの砲塔を載せることに、各国は厭でもつきあわねばならない。貧乏陣営は、そのトレンドにはついていけなくなるに違いない。

 次。
 ストラテジーペイジの2022-12-30記事。
   12-20に判明していること。
 すでに秋頃から北鮮はロシアから5億ドル相当の弾薬を受注していた。取引を加速するためにロシアは、現金ではなく、食糧や燃料の現物を先行して提供すると申し出た。それは10月のことだった。

 この食糧と燃料は、どこかの兵舎へ行くのではなく、北鮮内の弾薬製造工場の運転のために使われる。その工員たちのメシと、その工場の熱源、ならびに原料・資材や製品の輸送に使う機関車用の燃料なのだ。

 ※工場で新造された野砲弾、迫撃砲弾、RPGなどは、いったんコンテナに入れられて、貨物船でロシアに引き取られ、そこからシベリア鉄道で西送されるのではないか? 北鮮内鉄道の惨憺たる現状とゲージの違いからして、貨車による発送は不可能だろう。

 ※雑報によると、イランが本式空母をドックで新造中。航空写真がSNSに出た。

 ※韓国軍の来年度予算案の中から、「軽空母」関連の項目が消えた。これは米国からの強力な「指導」があったと考えるべきだろう。対支の分担が、各国に、割り当てられているのだ。韓国はむしろ陸上基地から発進する攻撃機を充実させなさい、と言われたのに違いない。ということは空母の負担は日本に来る。今は発表されていないだけだろうが、新年あたりに、どこかの大手マスコミから、特だね報道があると予想しておく。しかし正規空母はかんべんしてほしい。絶対に時代遅れです。

 次。
 Howard Altman 記者による2022-12-28記事「Ukraine Situation Report: Pentagon May Give Kyiv Advanced HIMARS Fire Control System」。
  IFATDSとは何か。「国際野砲戦術データシステム」の略号である。これは台湾やラトヴィアに便宜供与される予定だが、いよいよウクライナにも供与されようとしている。

 HIMARSを使う他国軍と、米軍の戦場情報システムが一体化し、しかも、敵に対しては通信情報が秘匿される。そういうシステム。特防秘だから、この環境を提供する前に、一筆、書いてもらわなくてはならない。その署名は、米陸軍の「契約コマンド」が所在するアバディーンでなされる。

 次。
 『キーウ・インディペンデント』の2022-12-30記事「In Finland, a record number of women joined voluntary military service this year」。
   フィンランド軍の発表によると、本年の女子の志願入隊者は1211人で過去最高。軍隊もしくは国境警備隊に入る。

 フィンランドは2021年にユニークな制度を開始している。女子だけからなる「猟兵連隊」を編成させたのだ。
 これも一種の「特殊部隊」だと言える。教練を最も合理化できる。

  ※セクハラの心配もなくなるし、これは陸自も導入するべきじゃないか?

 除隊者は「予備役」に登録することができる。予備役には毎年、リフレッシュ訓練の機会がある。

 ちなみに男子には義務徴兵制度がある。毎年2万人が入隊する。フィンランド軍は総勢2万5000人。フィンランドの総人口は550万人だ。

 次。
 Niamh Ni Hoireabhaird 記者による2022-12-26記事「This tiny Dutch vehicle for people with disabilities is taking off」
   オランダは自転車大国だが、では、自転車に乗れなくなってしまった衰弱老人たちはどうすればいいのか?

 その回答が「カンタ」である。2人乗りの超小型4輪自動車。もちろん屋根付き、ドア付きで、ガソリンと電動の両方ある。これが、老人と肢体不自由者に、都市域内のマイクロモビリティを保証する。

 速度は15マイル/時しか出せない。
 車幅は、たったの3フィート強である。これだとオランダの「自転車用の路側レーン」の中を走行できる。

 ※わたしが学生時代から一貫して提唱し続けていることを、ここでもういちど、書いておく。政府が4輪自動車に新しい税金を導入しようとするならば、それは「車幅比例税」とするべきだ。車幅が小さければ小さいほど、自動車が社会にかけてしまう迷惑も小さくなるからである。政府は、自動車が人に迷惑をかけることがすこしでもすくなくなる社会を、税制で誘導するべきなのである。当然、その税率は「ステップ式」にきりかわるものではだめだ。原付バイクの車幅を基準として、そこから1cm広くなるほどにみるみる税率が上がって行く、そういったグラジュアルな算定式を適用しなかったら、新時代にふさわしい「デザイン革新」を市場に促せないだろう。


 カンタは1995年に、オランダの零細自動車会社によって設計された。45km/時以上は出せず、したがって自動車専用道は走行できない。

 法律上、カンタは「自動車」ではないので、運転免許証が不要である。だから、運転技能がトリッキーでしょうがなくなった危険老人が操縦しても可い。

 カンタはカスタムが容易で、車椅子ユーザー向けの改造型も各種あり。
 「カンタ2」にはなんとシートがない。車椅子で後部ドアから乗り込み、その車椅子がそのまま、操縦席になるのだ。

 カンタの売価は1台が15500ユーロから23000ユーロ。