《無法の法律事務所》 略して ムホホ。

 「87式偵察警戒車」こそが、ウクライナ諸都市の防空用として日本から寄贈するのにいちばん適している自衛隊「甲類」装備である。
 その理由を述べよう。

 まずこの装備は古い。そろそろ退役が考えられている古さだ。これを全数(現有数は不明だが総調達数は111両だった由)、贈与したとしても、陸自部隊では、すぐに別の装甲車や後継の新型偵察車によって、機能の穴埋めができそうだ。

 この車体を製造した小松製作所はAFV事業から撤退しており、自社が納入した古いAFVの修理の負担からもなるだけ早く解放されたいと念じている筈。その願いも叶うだろう。

 この87偵警車は目視追随ながら25粍機関砲でヘリコプターを射撃できるような光学照準器を最初からとりつけてある。この機能は、低速低空飛翔体である「シャヘド136」自爆ドローンの近距離迎撃に役立つ。今、最もウクライナの都市民が欲している機能なので、これを寄贈することにより日本政府は大いに感謝されるであろう。数を数十両もまとめて送れるというところも、政治メッセージとしてのインパクトが十分だ。

 同軸の7.62ミリMGは、外すこと。あんなものを外国人に見せては日本の恥だ。代わりに、自車に向かってくる特攻ドローンを強烈な光芒によって幻惑してやれる、グリーンレーザー/可視光サーチライトを砲塔に取り付けるべし。赤外線レーザーと交互にパルス状に点滅する方式が、夜間には特に有効かもしれない。

 最前線で敵地上部隊と交戦させるための装備ではないから、固有MGがなくても、なんらさしつかえない。むしろ、それがないことによって、都市防空専用という限定用途をおのずから守ってもらえることになり、日本の今のイメージ上、好都合。

 弾薬はエリコンのKBAの25㎜×137 だろう。ということはM2ブラドリーのブッシュマスターと実包が共用だから、弾薬補給の面倒は米軍がみてくれるので、陸自はそれについてはまったく悩まなくて可い。

 都市部での対空射撃のみに使ってもらうようにするなら、車体とエンジンの故障は起こり難いから、現地で整備の世話を焼く負担もほとんど無し。リモートのアドバイスで現地人に直してもらえば済む。

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 2023-1-3記事「First Vietnam-China-Kazakhstan route opens」。
   ベトナム産の電子部品をカザフスタンまで鉄道列車で運搬。2022-12-31からあらためて。

 貨車は、南支の「萍【くさかんむりにサンズイに平】郷」市駅を始発。
 西安のドライポート(コンテナ載せ換え拠点)を経由して、カザフに入る。 ※旧ロシア圏とのゲージ差の都合?

 積荷は、ベトナムの工場で製造された電子部品である。

 従来、ベトナム製の電子部品は、海送によって、中央アジア諸国(スタン国家群)へ搬入されていたものだった。これには50日を要してしまう。

 鉄道を使えば、25日間で製品を輸送できる。

 じつは2022-3から、ダナン駅を発した貨物列車が時々このルートでヨーロッパまで製品を運んでた。行き先は、ベルギーのリェージユ、ドイツのハンブルク、イタリアのメルツォ。

 それが再注目されているのは、じつは中共の企業は、安い労働力を求めて、どんどんベトナムに工場を移転させているから。

 大問題がある。ベトナムの鉄道ゲージは、「メートル・ゲージ」といって、中共の国際標準ゲージ(日本の新幹線と同じ)と異なっているのだ。これは大ネックである。

 昨年10月末、これを相談するためベトナム共産党の大物が訪支して、ベトナム鉄道のゲージを標準ゲージに改軌する手伝いを中共がしようじゃないかということになった。

 ※あらためてベトナム戦争を振り返ると、ソ連の援助物資を貨物列車で北ベトナムまで届けようとしたときに、とほうもない面倒に直面したと理解できる。ゲージが2回、変わるのだから。それでいっそのこと、中越国境で当初は「自転車」、のちにはソ連製「トラック」に物資を載せ換えて、ホーチミンルートを南下させることにしたのだ。ちなみに米軍が南ベトナムの鉄道網を無視していたのは、任意の海岸から荷揚げすれば、あとは短い距離のトラック輸送でおおかた用が済んでしまう地勢だったから。またハイフォン港の機雷封鎖がどうして有効だったのかも分かる。支那鉄道など使わせていただくよりも、自国の貨物船で直接に搬入した方が、ソ連にとっては百倍気が楽だったのだ。

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 Ashish Dangwal 記者による2023-1-7記事「Chinese Soldiers Conduct Drills With PLA’s ‘Most Powerful’ Tank, Type 99A, In Xinjiang Region At -20° Celsius」。
   1月5日の新疆の演習場では気温がマイナス20度だったそうだ。その寒さの中で中共軍の「99式A型」主力戦車が訓練初め。なにしろチベットやヒマラヤの高地でインド軍と戦わねばならないので、寒いのに慣れておく必要があるのだ。

 「99A」は自重57トン。これは米軍のエイブラムズの70トンにはかなわないが、48トンのロシアのT-90よりは、防護力があると考えられる。

 エンジンは「150HB」という1500馬力ディーゼル。これはドイツの「MT883」(ユーロパワーパック)のパクリだと考えられる。サスはトーションバー式である。

 ※露軍を強化してやった真犯人がドイツ企業だという話はカミル・グリーフ氏がよく暴いてくれているけれども、中共軍だって同じだろう。そこを調べて告発するマスメディアが日本国内には存在しないのだから情けないじゃないか。

 ※サンクトペテルスブルグ在の中国人留学生のアパートに郵便が投函され、徴兵事務所へ出頭せよと書いてあるというので、本人が焦りのSNS投稿。あしたはどっちだ?

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 Sergio Miller 記者による2023-1-7記事「Russian oil and gas industry: the impact of sanctions」。
    今次ウクライナ戦争前、ロシアの国庫歳入のうち45%は、石油と天然ガスの輸出の儲けに依拠していた。これがロシア戦費のベースだから、戦争勃発と同時に欧米は、この部門に経済制裁を加えた。

 2021年の統計によると、ロシアは470万バレル/日の原油を国外へ輸出していた。それは世界の石油供給量全体の14%を占めていた。

 戦争前、欧州は、ロシア原油を240万バレル/日、輸入していた。

 そのうち、全長5500kmの「ドルジバ・パイプライン」によって欧州の精油所まで圧送されていたのが、75万バレル/日。
 残りは、タンカーによって、欧州の諸港まで運ばれていた。

 ロシアは天然ガスでは米国に次ぐ世界第二の生産国である。

 2021年に欧州が輸入した天然ガスのうちほぼ4割は、ロシア産天然ガスだった。
 最大の買い手は、ドイツ、トルコ、イタリアだった。

 2021年にロシアが中共に「シベリア・パイプライン」を通じて売った天然ガス量は、欧州向けの輸出量の6%ちょいである。

 LNGの形態でロシアが輸出した天然ガスは、2021年において、世界のLNG取引量の8%だった。LNG輸出国の中では、ロシアは輸出量が第四位であった。

 今次戦争前、米国はロシアからも原油と石油製品を輸入していた。それは総輸入量の8%だったが、2022-3に、天然ガスとともに全面禁輸。(ロシアからの天然ガス輸入量は、ほぼ無視できるレベルだった。)

 2022-12初旬、EUはタンカーで運ばれるロシア産の石油の輸入を停止した。またロシア産石油製品の全面禁輸は2023-2からスタートする。これは、スロヴェニアやハンガリーがドルジバ・パイプラインにものすごく依存してしまっているための遅れである。

 米国とEUと同盟諸国は、2022-12から、ロシア産原油をバレルあたり60ドルを超えた値段では買わないことを申し合わせた。これに対してプー之介は、2023-2から5ヵ月間、石油をそれら諸国に売ることを禁ずるという正式命令を国内に出している。

 このキャップ規制、ロシア産の天然ガスには、かけられていない。
 しかしEUは、ロシアからの天然ガス輸入を「三分の二」減らすことで合意している。
 英国は、もともとロシア産天然ガスをわずかしか輸入していなかったので、2022末に全面禁輸とした。

 ロシアは「ノルドストリーム1&2」をわざわざ水中爆破したことで、EUの努力目標「三分の二」削減のオーバー達成を助けてしまった。
 すなわち、戦争前はEUは全天然ガスの40%をロシアから買っていたのに、いっきょにそれが4%に落ち込んだ。
 おそらくロシアはEUという最上のガス市場を永久に失ったと見ていいだろう。

 EUも、これからはロシアに天然ガスをほとんど依存しないようになるであろう。

 石油に関する対露経済制裁は2022-12-5に発動されたばかりだが、すでにロシアはタンカーによる石油輸出量を22%減らしている。

 この制裁にともなって、インド、中国、トルコの3国が、ロシア産原油のタンカー輸出全体の70%を買いつけるようになった。

 どのくらい買い叩いているか。2022-12中旬のウラル原油は、バレルあたり30ドル以下で買い取られた。これは世界ベンチマークであるブレント原油よりも安い。

 インドが最も得をした。戦争前は全石油輸入の2%しかロシアから買っていなかったのだが、いまやロシア石油の最大の買い手である。ただし、ディスカウント価格で。

 中共は、買い増したようでも、全需要の7%にあたる石油しか、ロシアからは買っていない。ロシアの必死の売り込み努力にもかかわらず。

 ※深入りすると弱みを握られるとよく分かっている。

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 The Maritime Executive の2023-1-6記事「Senators Demand Navy Reforms for Sailors on Dry-Docked Ships」。
   ニューポートニューズの造船所に核空母『ジョージワシントン』が長期入渠していた昨22年4月、わずか1週間のうちに立て続けに水兵が3人も自殺した件について、連邦上院議員2名が海軍長官に書簡を送り、ドライドック周辺の施策改革等を求めている。

 この連続自殺についての海軍内部の調査報告書が先月、公表されたことを承けて。

 空母が入渠工事中、水兵たちはひきつづいて艦内で生活している。しかし夜も昼もすごい騒音だという。
 静寂の時間というものが持てない。
 艦内の居住区では、電源、暖房、エアコン、給湯が、頻繁に使えなくなる。ときには数週間も。
 艦内にはテレビがない。
 また乗員がくつろいで休憩できるスペースも無いという。

 自殺した兵曹のひとりは、造船所から1マイル以上離れた駐車場の私有車の中で寝泊まりしていたという。

 事件後、海軍は、入渠中の空母内に拘束され続ける400人の乗員のうち260人を、「オフサイト」の借り上げ住宅で寝泊りさせるように、方針を変えた。

 『GW』は核燃料棒の交換をするため2017から2021までの予定で長期入渠していた。ところが新コロが流行したためにスケジュールが延び、これが水兵の心理を打ちのめした。もっかのところ、ニューポートニューズの乾ドックを出て行けるのは、今年の後半になると見られている。

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 Loveday Morris 記者による2023-1-7記事「Germany built LNG terminals in months. Wind turbines still take years.」。
   2022-12-31に運開した2基のドイツの風力発電塔は、建設に7年間かかった。

 ところがそこから60マイルのところにある、ドイツが初めて建設した、液化天然ガスのタンカーを受け入れるターミナル(浮体構造)は、突貫工事のおかげでなんと10ヵ月で完成した。

 米国やカタールから、LNGタンカーをここに迎え入れるのだ。

 ウクライナ戦争は、欧州における風力発電事業の追い風にはなっていない。工費が爆上がりして、ぎゃくに事業者は窮地に追い詰められている。

 ※ここ数日、モスクワはマイナス25度まで冷えているそうだ。ロシアは寒波に包まれており、西欧は暖冬なのである。

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 AFPの2023-1-6記事「Wikimedia disputes activist claims of Saudi ‘infiltration’」。
   ベイルートを拠点にするデジタル人権グループのSMEXと、ワシントンDC拠点の「アラブ世界にいますぐ民主主義を」という団体(2018に殺されたカショギ記者が創設)が、サウジアラビア政府機関がウィキメディア組織の内部に工作員として入り込んで、ウィキペディアの内容をサウジの都合のよいように加工し維持する仕事にいそしんでいると糾弾。

 中東方面担当のウィキメディア組織の幹部級にサウジから人員を送り込んでいるという。

 ウィキメディアは昨年、16人のユーザーに対して「終身書き込み禁止」としていたのを撤回した。この16人は中東地域で〔サウジ政府などに一方的に都合のよい〕ウィキペディアの内容編集に従事し、それに対する異論を書き込もうとする者を脅迫していたとされていた。そうした活動は組織的な流儀であったと。

 糾弾団体によれば、サウジ政府は、一人のアドミニストレーター(ボランティア編集員で、ウィキペディアの保護されたページの内容を変更できる特権あり)に対して懲役32年を宣告して刑務所に閉じ込めたという。また別な一人のアドミニストレーターに対しては懲役8年を申し渡したという。いずれも、サウジ政府の言うとおりにウィキペディアを書き変えなかったので。

 この2人は2020年9月の同じ日に、サウジ国内で逮捕されたらしい。

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 Tanmay Kadam 記者による2023-1-8記事「Catastrophic Impact! US Experts Flag The Threat Of EMP Attack By China But Biden Administration Reluctant To Act」。
    EMPは、水爆を高度40km以上で炸裂させると、地上に電磁波が強烈にふりそそぐ、その現象をいう。

 米国政府が心配しているのは、これを敵からやられると、広域停電が発生するため、原発が外部電源を喪失してしまい、そのために原発の施設内部で冷却不能などのまずい事故が起きると考えられるから。
 そうなれば、全米で410万人もの住民が、原発から遠く離れた場所への避難を余儀なくされてしまう。

 ※もし近隣のキチガイ国家からEMP攻撃されると、自国内のすべての原発のメルトダウンが避けられないと分かっているのならば、有事のさいの国内住民に対する危害を防ぐという観点からは、「火力発電所 > 原子力発電所」という価値の不等式が、公共政策学上、明瞭に成り立つことになる。これは火発の新設を政府が推進しなければならない理由の、立派な対外説明になるから、どんどん推進しよう。

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 Thomas Gibbons-Neff and Natalia Yermak 記者による2023-1-7記事「In a Ukraine Workshop, the Quest to Build the Perfect Grenade」。
   ドイツ製の「DM51」破片手榴弾を改造して、ドローンから投下する爆弾に変える工場。ウクライナ東部の秘密アジトにあり。

 ※ウィキによると、破片ジャケットを着脱できる手榴弾で、炸薬は154グラムだそうだ。破片は、小さな鉄球を無数に飛散させるようになっている。

 ※このNYTの記者氏は、破片手榴弾をガレージ工作によって対戦車用に改造できるかのような錯覚を犯していると思しい。そのためところどころわけのわからぬ話になってしまっている。銅板コーンが必要なHEAT弾を手作業でスクラッチビルドできるわけがないだろう。最初からHEATになっている特別な擲弾をもとにして、投下爆弾に改造するしかないはずだ。

 髯面のウクライナ兵は言う。戦争は経済だよ。ドローンは3000ドル。手榴弾は200ドル。これで300万ドルのロシア戦車を破壊できれば、おもしろいだろう。おれたちはそれに挑みたい。

 DJIの「Mavic 3」で不自由なく運搬できる爆弾の重量上限は、1.1ポンドだと男は言う。※おそらく「500グラム」と発言したはず。

 DM51はジャケット付きで450グラムくらいなので、3Dプリンターで空力フィンをつけても500グラム未満に収まってくれる。
 だがそのままだと、対人用としては十分でも、対AFV用にはならない。

 中国製の「マヴィック3」は今や、宇軍でも露軍でも、手榴弾投下用ドローンの主軸機になっている。バッテリー寿命の長いのがすばらしい。

 ウクライナ軍は、たくさんの小チームが前線の各地でドローンやその兵装の改造にいそしんでいるが、互いに情報と知見をオンラインの「チャット」で交換し合っており、あるチームが良い改善をなしとげると、それが全軍に普及する。

 ロシア軍の方は、そういう体制になっていないようだ。独自の進歩は遅い。
 しかし、宇軍がある進歩を見せると、それにじきに追随してくる。そういう模倣の能力はある。

 対装甲貫徹力があってしかも500グラム未満におさまる弾薬としては、米国から供給される「M433」がある。手持ちのグレネードランチャーから発射するHEAT弾で、「金色の卵」のような外見。
 これを、ドローンから投下する爆弾に改造している。

 この弾薬は弾丸と薬莢が一体だが、薬莢は不要なので、まずそれを慎重に分離する作業から始めねばならない。
 次に、弾丸のノーズ部分のアルミニウム・キャップを剥がす。

 さらに弾丸に組み込まれている安全メカを外し、着発式に改造せねばならない。
 安全装置をあらかじめはずしてしまうのだから、これを保管・運搬・ドローンに取り付けるときにもし下手をやれば、その場で爆発してしまう。

 ※洗練された専用の弾薬の開発が待たれている。対戦車能力があって、しかも400グラム台の、投下用擲弾だ。もちろん、投下の直前までは安全装置が働いてくれるものが……。

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 2023-1-6記事「Rheinmetall to Build Explosives Factory in Hungary Amid Ammunition Shortage」。
   ラインメタル社は、ハンガリー国内に、砲弾工場を建設する。ハンガリー国有企業の「N7」との合弁事業。
 製造開始は2027年からの予定だ。
 完成後は工場はハンガリー政府が完全所有する工廠となる。そしてドイツはその製品の上客となる。

 ※新年早々の大量爆死事件の原因は、プー之介の大晦日メッセージを全員でリモート謹聴するように、という連隊長の命令で、兵隊どもが集会所(大ホール)に集められていたせいだった――という真相を、生き残った兵隊がSNSで暴露している。かたやロシア国防省はますます子供じみ、「ウクライナ軍の宿舎ビルをミサイル攻撃し、600人を殺して仇を取った」といった体の嘘ニュースを真顔で流し始めている。てことはやっぱり600人くらい殺されていたのか。ノモンハンのときと同様に、自軍損害の発表値は実数の十分の一か?