ゼレンスキーの宣伝は、改善を要す。

 「この報いを受けさせる」という、ブチャ虐殺の判明時に公けにしたインパクトあるコメントを、継続的に幾度でも、毎回々々、ひとつおぼえに繰り返さなくてはいけない。コロコロと表現を変えて訴えてはいけない。同じ単純な表現を執拗に何百遍も繰り返すことで、庶民の頭にやっとそれが刷り込まれてくれるのだ。
 「酬いをうけさせる」と繰り返すことで、ロシアとの中途半端な妥協など水面下でも進行していないことが外国人にも確かに理解される。それどころか、ロシア国民すらも、「じぶんたちが犯罪者だ」と意識するようになるのである。

 ウクライナ軍部隊がSNSにUpしている戦果動画。すぐに本編から表示すべきである。OPアニメ(メインタイトル動画)に、数秒も時間を割いているのはとても悪い。最初の2秒で、みんな、次の動画を探しに出てしまう。みんな、忙しいのだから。こんな基本中の基本も分かってないということは、彼らには、プロフェッショナルな広告アドバイザーはついていないということだ。開戦から10箇月以上も、誰も指摘しないのかよ?

 次。
 Sergio Miller 記者による2023-1-18記事「A tank is not a howitzer」。
    ウクライナ陸軍の戦術諸兵種連合グループ「アダム」の指揮官メゼウィキン。彼は2022-2にはキーウ北郊で戦い、ついでそこからザポリッジアに転戦してマリウポリを救援せんとした。さらに4月にはハルキウ前線へ。セヴェルドネツクを経て、今はバフムトにいる。最新の最前線の知見が十分すぎるほどにある。

 ロシア軍の機甲部隊の使い方について、メゼウィキンいわく。
 最も多量にAFVを集めたのは、リシチャンスキー石油精製工場の近傍だった。そのAFVはほとんど灰にしてやった。
 今はバフムトにAFVが集まっている。MTLBは弾薬運搬車として使われている。
 われわれがAFVを破壊しまくったものだから、露軍はさまざまな民間車をかきあつめている。

 ロシアの軍事雑誌『軍事評論』によると、彼らは侵攻開始前夜に戦車を2600台、展開したそうだ。
 2022-12時点でオリックスが調査した結論として1579両のロシア戦車は戦力外になった。こっちが鹵獲したのは534両で、そこには40両のT-90が含まれている。

 露軍の戦車損耗はなぜ多い? 理由の一つ。連中は戦車を「代用野砲」として使いたがる。
 記者はここを批判したい。

 すべてのロシア戦車は、「OFS」と呼ぶHE砲弾を発射する。T-72であれば、「3VOF36」という榴弾だ。
 その弾丸部分だけのことは「3OF26」と称する。フィンスタビライズドで、破片を生ずる榴弾である。

 これを露戦車は、宇軍の塹壕陣地に向けて発射する。すると弾丸は、浅い落角で、目標地面へ到達して信管が作動する。そのさい、ほとんどの破片は、弾丸の軸線と垂直の方向へ飛散するから、半分近くはすぐ下の地面に向けて吹きつけられる。そして残りの半分以上の破片は、何も無い空中に向かって吹き上げられる。

 125ミリ榴弾の破片の毀害距離は最大60mだ。弾丸軸の前後方向への破片飛散は、せいぜい20mだろう。
 つまり、砲弾を低伸させるしかないT-72の戦車砲を、野砲の代わりに用いようとしても、破壊殺傷効果は、甚だ低くなってしまう。

 ロシアの軍事寄稿家のエドワルド・ペロフは言う。詳しい統計報告を得ているわけではないけれども、露軍の戦車部隊は、今次戦争で、対人榴弾ばかりを発射しており、その消費量は、他の弾種に十倍すると。

 露軍のこの流儀は最近の現象ではない。1980年代のアフガニスタンでもそうだったし、その後のチェチェンでもそうなのだ。戦車から、対人榴弾ばかりを撃っている。

 効率としてはよくないのに、その流儀をずっと続けているのだ。

 WWII中のスターリングラード攻防の地であったヴォルゴグラードの西郊には、戦車の訓練射場「プルドボイ」がある。そこで2018-3に、競試会があった。

 その結果を分析したリポートが、ロシア国防省の部内雑誌『軍事思想』の2020-8月号に載った。「近距離から戦車砲を発射することの利点および難点」という論題。エデムスキーという工学系の士官学生が書いている。

 エデムスキーいわく。WWII中の露軍戦車は、味方野砲の火力を増強するため、野砲といっしょになって、戦車砲で敵陣地を砲撃したものだった。攻撃前進する前の準備砲撃として。

 そして戦後、1958年に露軍の野戦教範は、戦車砲による間接照準射撃を正規の運用法として規定した。
 1970にはその教令が独立の野戦教範となり、1974にはさらに改訂された。

 ※中東戦争でイスラエルが試した「オール・タンク・ドクトリン」に刺激されていたのか。イスラエルはすぐにその誤りに気が付いたのに。

 どういうわけかアフガンでもチェチェンでも露軍は現実の経験をドクトリンに反映させることなく、野砲の定数を徐々に減らし、間接照準の支援火力をますます戦車砲に担任させる方向へ突き進んだ。

 プルディボイで実験されたのは、自走十五榴である「2S19」の1個バッテリーと、「T-90A」の1個小隊が、それぞれ榴弾で間接射撃を加えた場合に、敵陣地におよぼす破壊殺傷効果にはどのくらいの差があるものなのか。それを、じっさいに確かめようとしたのだ。

 砲撃状況は4種、付与された。2種は、固定した敵目標を砲撃する。2種は、流動的なシナリオである。

 ソ連の戦車砲の弾着は、中距離(おそらく5km以上先)の標的に対しては、「1750m×500m」の範囲に散った。最も標的に近い弾着でも、誤差100mであった。

 エデムスキーは総括している。戦車砲に間接照準射撃をさせるのは大いなる無駄であると。

 エデムスキーのもうひとつの有り難い忠告。ソ連製の戦車砲は、そこから破片榴弾を発射すると、1000発にして砲身の寿命に達してしまう、と。それに対して、現代の正規の野砲であったならば、5000~7000発を発射しないかぎり、砲身の焼蝕は酷くならないのである。

 ウクライナでは過去10ヵ月間、露軍戦車は10万発ほどの破片榴弾を発射したであろう。それは直接照準している近距離でのケースを除いて、狙った標的には命中していないであろう。たんに、彼らの戦車砲の砲身寿命を縮めただけだと推断していいのである。

 ※砲身が焼蝕していても、タマは出る。しかしそれは散らばりが酷いので、もはや直接照準しても当てられなくなる。また、届かせようと思った距離まで、タマが飛んでくれぬということにもなる。

 イゴール・ストレルコフは、さいきんドンバスを2ヵ月間視察して、ロシアに帰国後、実態を痛罵している。
 スムースボアの戦車砲は、施条の野砲よりも砲身の寿命は短い。その短命の滑腔戦車砲から榴弾ばかり発射させた結果、ドンバスの民兵軍はいまや、寿命切れの主砲を有する「なんちゃって戦車」しか保有していない。
 特に「2A46」という製造年代が古い戦車砲を備えたT-64/72/80 において、焼蝕が著しい。
 工場で砲塔をまるごと取り外さないと、それらの古い戦車の砲身交換はできない。とても砲身交換は追いつかない。

 2022夏に、ドンバスの露系民兵は野砲をとりあげられている。正規軍が使うために抽出されてしまったのだ。だから支援火力としては、彼らにはもはや戦車砲しかなくなっている。その戦車砲の寿命が切れている。狙っても当たらない支援火力なのである。

 ベラルーシは、122両の「T-72A」を露軍にくれてやることにした。なぜか? ベラルーシ軍の戦車の大砲は、まだ、焼蝕していないからだ。そこが、露軍にとっては、他の何を措いても貴重なのである。

 ロシア国防省は、800両の「T-62M」をレストアするよう、工場に発注した。なぜT-62Mなのか? その砲身が、まだ焼蝕していないからであろう。

 ロシアには7500両もの、野ざらしT-72がある。なぜそっちをレストアして使わない? 理由は、新品の125粍砲身が、もはや無くなっているからだ。車体があっても、主砲の交換バレルが手に入らないことが確実であるからだ。

 ロシア国内の戦車工場では、125粍戦車砲の交換バレルの急速増産ができないようだ。だから、別口径ゆえに、焼蝕し切っていない古いストックが豊富にある、T-62が再注目されたのだろう。

 ロシアの主力戦車は、最前線で砲身だけ交換できるような設計にはなっていない。貨物列車を使って本国の工場まで戻し、そこで砲塔を外さないと、新品砲身と取り換えられない。ここでも、最大のネックは鉄道なのである。鉄道結節点であるバフムトを、彼らは必要としている。

 ※この記事はもう一段階、掘り下げる価値がある。なぜロシアは工業資源をもっと野砲の量産のために回さないのか? 理由は明白だろう。もうロシアには兵隊の人手が無いのだ。戦車は3人で125粍の大砲を発射できる。いや、自動装填で間接射撃するならば、車長が砲手の役を引き受けていいから、実質、たった1人で発射できる。122粍野砲や120㎜迫撃砲では、とてもそんな芸当は不可能だ。122粍多連装ロケット砲は、おそらく発射は1人でもなんとかできようが、もし敵の歩兵が小銃間合いにまで接近してきたら、できることは「退却」のみ。よって、戦車に資源を回すか、122粍多連装に資源を回すかの2者択1となれば、戦車を選ぶのがまず合理的だ。限られた少ないマンパワーを、攻防の両局面で、最大の持続的ファイアパワーに変換してくれるシステムが、とりあえず今のところ、T-72なのだ。「オール・タンク・ドクトリン」は、冷戦後のロシアにおいてこそリバイバルし信奉される必然があったと思われる。

 次。
 Boyko Nikolov 記者による2023-1-19記事「Macron asked for an instruction to transfer Leclerc tanks to Ukraine」。
   マクロンは、「ルクレール」主力戦車の対宇供与に動き始めた。

 仏政府内で、相談が進行中である。
 やはり大問題は、メンテナンスのようだ。
 というのは、仏軍が保管しているルクレールのうち相当の数は、2030年まで「部品取り」用として仏軍自身が必要とするのである。
 それを他国にくれてやってしまうと、仏軍の戦車の整備にさしつかえが生じかねない。そういう懸念がある。

 ちなみに仏軍は406両、すでに持っており、これに加えて「XLR」型という最新バージョンをこれから200両、調達する計画がある。ウクライナに渡すとしたらその古い406両の中からだ。

 ルクレールの主砲は「GIAT CN120-26」といい、52口径長の120ミリ砲だ。
 エンジンは「V8X SACM」という8気筒ディーゼルで1500馬力。

 ※ドイツのショルツは、米軍がM1をウクライナに供給しないうちは、ドイツからはレオ2を送らない、と踏ん張っている。このもたつきの隙を衝いて、フランスが名を売ろうとしている。マクロンは、国際的スタンドプレイのチャンスがあれば、絶対に逃さない。

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 Vassiliy Vesselovski, Daniil Melnychenko and Alexander Khromov 記者による2023-1-17記事「No Boxship Shortage for Russia: Turkish Carriers Pick up Liners’ Slack」。
   ロシアの海上コンテナ物流は、バルト海では欧州のハブ港に大きく依存し、黒海ではトルコのハブ港に大きく依存していた。欧州から締め出されたロシアのコンテナ船は、バルト海では輸送量が半減。黒海でも11%減。

 このたびトルコは、トルコ船籍のコンテナ船をロシアの港まで出してやるよと申し出た。

 次。
 Allison Quinn 記者による2023-1-18記事「Russia’s Shadow Army Exposed and Humiliated by Bogus ‘Recruit’」。
   ロシアのジャーナリストが身分を隠してワグネルに応募。なんの審査もなく入隊できたという。
 募集広告はバス停に貼ってあったという。

 クラスノヤルスクで貼られているワグネルのポスターは強烈だ。三つの質問によってその志願者の根性をテストする。いわく。「ケツにチ○ポを突っ込まれるくらいなら、目にフォークを刺された方がマシか?」。 またいわく。「ケツにチ○ポを突っ込まれるのと、自分の母親を売るのと、おまえはどっちを選ぶ?」。

 どうも、よほどケツにチ○ポが好きな集団らしいのだ。

 最後の質問も興味深い。「テーブルの上にある石鹸と、野外便所から拾い上げたパンと、おまえはどっちを喰うか?」。

 前科者も受けられられるが、テロ実行犯、誘拐犯、レイプ犯ではないと証明しなければいけないという。ふつうの人殺し犯はOKのようだ。

 契約は半年単位。そのあいだ、月給は3500ドルくらい。葬儀費用はワグネルが出してやる。最初の訓練期間は2~3週間だという。

 パスポートは持参せよ。軍隊手帳があるならそれも持って来い。保険証、薬物中毒ではないという証明書、精神病者ではないという証明書も必要。契約が決まったら、SNSのアカウントを全部消せ。メッセンジャーアプリも除去せよ。情報漏洩の予防のためだ。

 ロシア国防省とワグネルは無関係であり、したがってワグネルはショイグの命令は受けない。賃金もワグネルが支払うのであり、ロシア国家が支払うのではない。

 人権団体によると、ワグネルは最近、女囚の募集も始めたと。また、チェチェンで収獄している政治犯たちに、入隊を強く勧奨しているともいう。

 死傷率は高い。バシコルトスタンという自治共和国から集めてきた270人の囚人兵がいたのだが、いまも生き残っているのは30人だという。

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 2023-1-19記事「The Pentagon has asked its troops in South Korea to provide weapons to Ukraine」。
   米軍は、在韓米軍の装備品と需品を、ウクライナへ向けて転送し始めるようだ。

 北鮮軍の脅威が大したことがないので、装備品を大量に送ってしまっても、べつに平気の平左だという。

 ※雑報によると、英国は「ブリムストン」対戦車ミサイルを600基、ウクライナに与える。

 ※モスクワ市内の巨大ビルの屋上に「パンツィール」SAMが展開された。

 ※ポーランド政府は、ドイツが承認しようがすまいが、俺たちは手持のレオ2をウクライナへ送る、と言い出した。本気だ。まず1個中隊分。それとは別に、「S60」という高射火器も大量に送る。

 ※ラトビアは、FH70を10門、D30(152ミリ榴弾砲)を複数、「M2」という対戦車砲を100門、ウクライナへ引き渡す。

 ※デンマークは、手持ちの「カエサル」自走砲の全部、すなわち19両を、ウクライナへ引渡す。

 ※スウェーデンは「アーチャー」自走砲の他に「CV90」を50両、ウクライナへ渡す。