援助武器としては、「垂直梯子」はダメ。かならず「鳶口」にすべき事。――独政府は何故「レオパルト2」をおいそれと提供し得ないか……の理由を説明する。

 消防出初め式における「梯子乗り」の妙技を思い出して欲しい。
 あのパフォーミングが、主役の「乗り手」1名では完結していないことは、日本人なら誰しも知っているであろう。

 乗り手は、垂直に聳立した竹梯子の先頭へ登り、人びとから注目される。

 而してその垂直梯子は、おおぜいの《支え役》が、下から支えているのだ。
 三種類の長さの鳶口を、上段、中段、下段に四方八方からひっかけて、集団で引っ張ることで、梯子の垂直を小揺るぎもさせずに保持しているのである。

 西側最先端の「主力戦車」や「マルチロール戦闘機」を機能させるためには、この、手練の鳶口係のような後方支援体制が、それこそピラミッド状に、ぶ厚く備わっている必要があるのだ。

 もしドイツ政府が、欧州諸国軍の装備品である「レオパルト2」の一部のウクライナ軍への供与を認めたとする。
 いったい、その整備は、誰がするのか?

 ウクライナ人には、どうにもならない。その専門教育を受けた整備兵が1人もおらず、スペアパーツもないのである。

 けっきょく、「ドイツが面倒を見ろ。近いんだから」という話になってしまう。蔵相を経験しているショルツには、迷惑だ。(ショルツは若いときにはINFの西独内配備に反対した。しかし2022-2-27には独国防費をGDPの2%超にすると声明。何度も要職に落選した経験のおかげで、風見鶏の才能はある。)

 1個大隊分のMBTを最前線で動かすためには、まるまる1個小隊の、整備専従の兵隊が、毎日、ガレージで働いている必要がある。
 それをドイツで負担しなければならない。果てしのない負担になる。専門技倆のある整備兵の人手は、不足することはあっても、余っている軍隊など、どこにもない。

 とうぜん、スペアパーツもドイツが自腹を切れという話になるだろう。
 エンジン部品くらいなら、しのぶこともできる。

 だが、サーマルセンサーやデジタル無線機やFCSとなると、軽量ではあってもバカ高い。えてしてタダで高性能兵器を貰ったユーザーは、そうした電装品を丁寧に扱わない。簡単に壊してしまう。

 電装品が壊れると、ハイテク兵器はパフォーミングが半減する。それはすべてウクライナ人の責任なのだが、けっきょく「ドイツ製戦車はダメだ」という責任転嫁の宣伝をされてしまうだろうことも、今からありありと目に見える。ドイツ人にとってはこれも大迷惑だ。

 「レオ2」のようなMBTを、垂直梯子の上の「梯子乗り」だとするならば、たとえば「パンツァーファウスト」のような使い捨ての対戦車ロケット弾は、「短い鳶口」に相当するだろう。そしてまた、カミカゼドローンのようなアセットは、「長い鳶口」だ。

 鳶口は、歩兵が一人でふりまわして操作ができる。
 長い梯子=後方支援体制は、まったく無用である。

 鳶口は、他者からの支援を必要としない。しかしみずからは他者を支援することができる。

 まず、多層的な「鳶口」の集団から形成させるのがよいのだ。
 ハイテク軍備先進国が、ハイテク軍備後進国に武器弾薬を援助するときは、「鳶口」だけを送れ。

 「長い鳶口」が今、足りてないのである。
 敵地、特に鉄道線路を片道攻撃できるカミカゼドローンが、必要とされている。

 その準備が、まったく、NATOには無かった。
 ウクライナにも準備はなかった。これほど効率的な対露戦備はないのに……。

 ウクライナ人は、NATOに文句を言うのを止め、露領の鉄道線路を攻撃できるカミカゼドローンを総力を挙げて国産するのが、筋だろう。ターボシャフトエンジンで定評のあるモトルシチ社は、それ専用のエンジンくらい、すぐに設計・製造ができるはずだよな? 都市民は、軍需工場に勤労奉仕の動員もされずに、何をやっているんだ?

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 ディフェンスエクスプレスの2023-1-23記事「Poles Will Train Ukrainian Crews of German Leopard 2 Tanks」。
   ポーランドは、同国内で、ウクライナ兵に「レオパルト2」の取り扱い法を練習させる。

 ※今まで3人乗りの戦車で慣れてきた軍隊に、自動装填装置の無い4人乗りの流儀を教えるのだから、道は遠い。これはM1でも同じだ。

 ※キプロスは、保有する「T-80U」×82両をウクライナに供与してやってもいいそうだ。その代わりにドイツが「レオパルト2」をくれるのならば。

 ※ポルトガルは、同国軍が保有する「M113」APCの1割にあたる14両を、ウクライナ軍へ寄贈する。

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 2023-1-20記事「Chechen Leader Calls Rumored Ban on Beards in Russian Army ‘Provocation’」。
    ロシア国会の副議長ヴィクトル・ソボレフ(現役中将)が、もじゃもじゃのみっともない顎鬚をロシア軍隊は許してはいかんだろうと水曜日に発言。
 これに、チェチェン軍閥のもじゃもじゃ髯頭目カディロフが、猛反発している。

 ネットメディアの「テレグラム」にも、ウクライナ戦線の露軍正規兵は必ず髯を剃って身だしなみを良くしろという主張が、今週になって、広報されている。

 カディロフいわく。わが部隊の99.9%は髯を生やしている。それはスンナに書いてある戒律だからである。

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 ストラテジーペイジの2023-1-21記事。
  ロシア政府は、101万3628人だった露軍の現役定員を、115万628人に増やした。しかしこの定員が埋まることは、将来も無いだろう。

 2021末時点でロシア陸軍は40万人ほどである。

 2021年末時点で、ロシア海軍とロシア空軍は、それぞれ定員が15万人であった。空軍の15万人のうち、三分の一は「落下傘降下兵」または「空中機動歩兵」である。

 ※露軍の中でいちばん頼られている空挺部隊は空軍の所属だった。ここにも空軍の制服トップがウクライナ戦区を任された理由があったのか。しかし、その損耗が甚大で、神通力も消えてしまった。

 海軍の15万人のうち、1万2000人は、陸戦隊である。平時には、海軍基地内に駐屯している。やはり、今次戦役で、損耗が甚大。

 露軍の輸送トラックのドライバーは、すべて、戦時の臨時動員兵である。平時に民間のトラックドライバーをなりわいとしている者たちが、駆り出される。とうぜん、それによって民間経済の物流は止まってしまう。ロシア国家が侵略戦争を仕掛ける場合、プロイセン流の短期決戦主義だから、それでいいと考えられていたわけだが、プー之介のような素人が戦争をいたずらに長引かせれば、じわじわと、国内経済を自死に向かわせる。

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 Alia Shoaib 記者による2023-1-21記事「A Ukrainian soldier died on the battlefield in Bakhmut. His death has sparked a fierce dispute between some American veterans and a volunteer trainer」。
    35歳のブライアン・ワン〔この姓はシナ系を示唆する〕はピッツバーグ育ちの米国市民。民間の銃器インストラクターを本職とし、加州で射撃教習所を経営している。
 2022に彼はウクライナにやってきて義勇兵を志願し、教官役を任されていた。

 2022-6、激戦のさなかのバフムト。ふたりのウクライナ兵が、1軒の家屋内に突入したところ、そこで待ち構えていた露兵たちによって射ち倒された。

 1名はその場で即死したが、もう1名は胴体に数発をくらいながらもまだ息があり、救急車に収容された。

 ウクライナ語で、衛生兵はいるかという声が聞こえたので、ワンは、自分が衛生兵だと詐称してそのアンビュランスに乗り込んだという。

 ワンは、瀕死の負傷兵の胸部に溜まった空気を、カテーテルを穿刺して抜く術を施し、それをポエマーのように自分のブログに書き込んだ。イカレている。この兵隊は死んだ。

 米軍の「戦術戦闘負傷治療」の訓練マニュアルは、CPR術を前線でやってはいけないと教えている。ワンは、そんなことは知らない。

 米国とカナダの実戦経験のある元軍人たちを登録している「SOLI(国際・自由の息子たち)」というNPOは、それら登録者を、ウクライナの郷土防衛隊の教官役として送り出している。

 SOLIは真面目な団体であり、ウクライナ人の迷惑にならないように考えている。ワンはSOLIのメンバーではない。
 SOLIのメンバーがワンと同じ戦区にいて、ワンを非難している。

 ワンのような米人は「ウォー・ツーリスト」、つまり戦場を面白半分でひやかして行き過ぎる、無責任野郎だ。

 ある証言。ワンはウクライナ兵の小火器の銃口を常に上に向けて保持させていたと。

 ワンはROTCを大学で受講したことがある。部隊に入って従軍した経験は無い。

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 By J.P. Lawrence 記者による2023-1-20記事「Drone strikes coalition base in Syria as part of multi-drone attack」。
   金曜日、シリアにある米軍の駐屯地、「アル・タンフ」基地に、3機の自爆ドローンが襲来。1機は兵舎に命中した。
 「シリア自由軍」に属するシリア兵×2名が負傷。米兵は無被害だった。

 セントコムによると、のこりの2機は撃墜したのだという。
 セントコムは、ドローンの型については一切公表していない。※ということはイラン製の「シャヘド136」か。

 10月にもアルタンフ基地をドローンが空襲していた。そのときの米軍は、イランが犯人だと名指し非難した。
 いま、シリア全土に900名の米軍が所在する。IS狩り作戦を展開しつつ、「シリア自由軍」に稽古をつけてやっている。

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 ディフェンスエクスプレスの2023-1-21記事「Ukraine’s Scouts Receives EW-Resistant Drones From Volunteers」。
   ウクライナ国産の「ライダー」というヘクサコプター。4kgの爆弾を抱えて片道8kmを往復できる。もちろんサーマルビデオカメラ付き。航法用電波を電子的に妨害されても墜落しないという。

 同じ名前の固定翼偵察機もある。こちらはレンジ30km。