「ひし形編み」の金網は、やっぱり「ランセット」からAFVを防禦してくれるのだと実証された!

 2023-1-22記事「The Russian Lancet kamikaze drone stuck in a metal net placed over the AHS Krab of the Ukrainian military」。
   ウクライナ軍がポーランドから貰った「AHS クラブ」という十五榴の自走砲の頭上を、支柱付きの金網ネットで、キッチンパラソル(蝿帳)のように覆った防空装置。これが最前線で奏功し、「ランセット」が1発命中&爆発したが、SPの機能は無傷であった。

 ロシア側では無効攻撃だったとはわからず、「見よこの大戦果」とSNSで動画を流して自画自賛していた。(露軍はかならず2機1組で特攻攻撃させ、1機は上空からビデオで戦果確認に任ずる)。

 この金網そのものは市販品で、どこでも手に入る材料であった。はりがねが「菱形編み」になっているので、何かが衝突したときは、クッションのように少し延び縮みしてくれる。

 X翼が特徴であるランセットの弾頭重量は、1kgもしくは3kg。
 自重5kgの「ランセット1」は滞空30分。自重12kgの「ランセット2」は滞空40分。どちらも速力は110km/時。

 メーカーのZALAはカラシニコフ財閥の子会社。

 ランセットは2022-12にも1機、AFVの頭上ネットに阻止されており、その画像もSNSに出ていた。

 牽引野砲にしろSPにしろ、頭上ネットは、側方まで隙なく覆うものでなくてはいけない。ランセットは横から突っ込んでくるので。げんざいの宇軍は、それを実践している。

 ※昨年11月3日にこの欄で注目を促した対処法だ。12月の網は金網ではなかった。今回はまぎれもない菱形金網である。「対ドローン」の工夫も日進月歩している。

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 2023-1-22記事「Germany could transfer 19 Leopard 2A5 tanks to Ukraine ? Spiegel」。
   独『シュピーゲル』によると、独国防相のボリス・ピストリウスは、すでに「レオ2」の「2A5」型を19両、ウクライナに与える準備をさせているようである。
 ポテンシャルとしては、レオ2の各タイプ、総計312両の供与が、できる模様。昨年5月から、99両について、メンテナンス作業が始められていると。

 レオ2のいちばん新しいバージョンは「2A7V」で、ドイツ連邦軍はこれを53両、装備している。
 「2A5」は逆に、独軍が装備中のモデルとしてはいちばん古い型である。独軍では、演習時の「仮装ロシア軍戦車」として、この「2A5」を使っている。つまりほとんど「予備品」の扱い。

 ちなみにポーランド軍は「2A4」を保有している。

 整備上のひとつの懸念。独軍装備のレオ2のターレット駆動は、電動である。しかし他の欧州軍が装備しているレオ2のターレットは、油圧駆動だという。仕様がバラバラなものが一斉にウクライナ軍に与えられると、ちょっと面倒なことになる。

 ※「レオパルト2」は、13の欧州国家によって合計2000両は保有されているはずだという。

 ※ポーランドが宇軍へ大量に寄贈した面白兵器「MT-12」の活躍動画がさっそくSNSにUpされている。ペラペラの装甲しかないMT-LBの装軌シャシの上に、露天式に、ソ連製の100粍対戦車砲を背負わせたもの。貰った宇軍は、それを自走野砲として使っている。もし、旧日本陸軍の「ナト車」(四式中型装軌貨車+ボフォース7.5糎高射砲。伊良湖で技官が試射している写真だけが残る)が仕上がっていたなら、こんな感じだったのだろうな。

 ※ポルトガルが14両寄贈すると表明した古い「M113」の写真を見ていると、次のような想像を禁じ得ない。これは西側世界に千両以上、残存している可能性があり、もっと活用余地があるはずだ。天板の後半を溶断して切り欠いてしまって、これまた、世界のあらゆる地域から余剰品をかき集めることが可能な中古の81ミリ迫撃砲を、ガレージ改造式に据え付けるのだ。現地改造だから、初弾の命中精度こそ悪いだろうが、今はドローン観測との連動が可能だから、修正射でカタがつく。

 ※雑報によると、フィンランド国境に2022-1時点で集結していた露軍は今、当時の25%にまで減少しているという。あきらかに露軍は人手が足らず、もはや、あらゆる国境からウクライナへ戦力を抽出転用しているのだ。だからバルト沿海諸国はここぞとばかりに手持ちの全重装備をウクライナへ供給しはじめたのか。

 ※英国人によると、「チャレンジャー2」にウクライナ兵が習熟するまでには6週間かかる、とのこと。すでに教練は始まっているようだ。おそらく単車訓練にとどまらず、3~4両の小隊で交互躍進したり、IFVと連携して進退する訓練も含むのだろう。

 ※ウォリアーIFVをウクライナ人に操縦させる訓練もすでにスタートしている。

 ※さいきんウクライナ国内で撮影された「PzH 2000」は、塗装からしてどうもイタリア軍からの寄贈らしい。

 ※キプロスはT-80Uを手放すかわりに、ギリシャが手持ちの「レオ2」を寄越すことを欲している。これはできるわけがない。ギリシャはトルコ軍(レオ2+M60)ときびしく対峙中だからだ。最初からできるわけがないことをアナウンスしているのだ。不誠実な連中だ。

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 2023-1-22記事「Fortifications in the Belgorod region」。
   ベラルーシのゴメルという町の工場で、1ヵ月前から、「龍の歯」が量産されている。露軍はこのコンクリート製の対戦車障害物を、ウクライナの北東国境に置き並べるつもり。

 竜の歯は、あちこちの工場で生産されているはずだが、他の工場はまだ、特定されていない。

 完成した竜の歯は、ロシアナンバーやベラルーシナンバーの「KamAZ」トラックに10個から15個ずつ乗せられて、どこかへ搬出されて行くという。住民による目撃情報。

 既報によると、ワグネルグループはその担当戦線であるベルゴロド戦区に、竜の歯を敷設している。
 また、メリトポリやクリミアでも、竜の歯が並べられている。

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 Zoe Strozewski 記者による2023-1-20記事「U.S. General Warns ‘Ejecting’ Russia From Ukraine Will Be ‘Very Difficult’」。
   統合参謀本部議長のミレー大将は、露兵を2023年中にウクライナの本来の領土から完全に追い出すことはすこぶる困難だろうと私見を述べた。ラムシュタイン基地にてマスコミに対し。

 今次戦争は、戦場では決着は付かず、交渉で停戦になるだろう、と。

 これから重要なのは、ウクライナ軍の訓練。小部隊の戦術行動にとどまらず、一方面の大作戦ができるようにならねばならないが、それは現実的に可能だ。そうなった暁に、事態は好転する。

 金曜日、退役中将のベン・ホッジズは、『ニューズウィーク』に対して、2023-8-31にはクリミア半島は奪回されているだろうとの予想を語った。

 ※2010年代のシリアとイラクで、IS等が住民を盾に立て籠もった諸都市(アレッポ、モスル、ラッカ……etc.)からジハーディストを追い出すのに、米軍が航空CASを提供し、エイブラムスで遠巻きにしても、数ヵ月もかかっていたものである。露軍はシリアで包囲都市に対して塩素ガスを使わせ、投下爆弾は敢て無誘導にして住民まるごと吹き飛ばす戦法を好んだが、それでも攻囲期間は特段、縮まってはいない。いわんやコラテラルダメジを厭う米軍式となれば……。今次戦争では露軍戦車は堂々と現住アパートを砲撃して崩壊させたが、同じ戦法をウクライナ軍がドンバスの諸都市で採用できるかといったら、偵察ドローンやスマホカメラだらけの今日、それは不可能だろう。ということは、モスルやラッカのような市街戦になる。しかもCAS無しだ。

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 Boyko Nikolov 記者による2023-1-22記事「T-62M tanks repair in Russia: $295 salary and a six-day workweek」。
    チタ市にある「第103装甲兵器工場」。ウクライナで損傷した戦車が鉄道でここに搬入され、修理されている。いま、工場では「T-62M」をウクライナ戦線へ送り出すために、週6日、働きつつある。3交替制で、その6日間は昼夜操業。

 いま、この工場では、月給2万ルーブル(295米ドル相当)で従業員を募集している。連日、10名~15名の面接がされている。電気工の経験者は大歓迎だ。

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 ストラテジーペイジの2023-1-22記事。
   プー之介はロシア連邦の人口構成が「非ロシア化」することを気にしており、それもまたウクライナ併合の動機である。
 2020の統計によると、2010年には連邦内のロシア系住民は77.78%だったのが、71.7%に減っている。
 この2020の数字には、2014に占領したクリミアの露系が加算されているのにもかかわらず。

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 Eric Cheung 記者による2023-1-20記事「‘If war breaks out … I will just become cannon fodder:’ In Taiwan, ex-conscripts feel unprepared for potential China conflict」。
   CNNは6人の台湾人青年に、近過去の義務兵役はどんな感じなのかを尋ねた。

 ある者は、カリキュラムで銃剣術が非常に重視されていたのに違和感を覚えたという。
 市街戦の教育は皆無。ドローンの用法もスルー。

 小銃すら不足気味で、全般に、兵器はとても古いものが多いという。
 砲兵部隊には訓練用の砲弾が皆無。迫撃砲部隊には訓練用の迫撃砲弾が皆無だったという。

 台湾政府は、2005年以降に生まれた青年男子には、1年の兵役を義務付ける。現行は4ヵ月間で、みじかすぎるので。

 韓国では兵役は18~21ヵ月、シンガポールは24ヵ月、イスラエルは24~30ヵ月である。それらと比べたら12ヵ月はまだ短い方だ。

 26歳の会計監査員氏。彼は2021年に軍事義務教練をうけたが、中隊に自動小銃が100梃以上あるのに、実弾射撃用として使用ができたのはそのうちの十数梃にすぎなかったと証言する。その中隊ではいちどに140人の徴兵が教練を受けていた。

 それ以外のアサルトライフルは、数十年前に製造されたものでとっくにガタガタで、教習用には向かない状態になっていた。だから、コンディションのまともな小銃を、皆で使いまわす必要があったという。

 台北出身で、2018年に義務訓練を受けた、今は工場長をやっている人の証言。
 「T65」というライフルだった。 ※65式歩槍。外観はM16そっくりなのだが、中味はAR-18なので、古くなってもM16ほどは汚れないはずだ。5.56㎜。

 その射撃訓練で、実弾は40発しか、使わせてくれなかった。4ヵ月間のトータルで。

 現行制度では、4ヵ月は前段と後段に分割されている。前段5週間で基礎教練。それにつづく11週間が陸戦訓練となる。この後段では、兵科が細かく分かれる。歩兵、砲兵……等々。

 昨年、義務兵役をすませたばかりの、台中市の25歳のエンジニアの証言。
 彼は後段で砲兵になったのだが、どのようにして大砲を発射すればいいのかについては、ついに教えてもらえなかったという。理由は、教官が、徴兵が怪我をするのを心配したからだという。

 後段の訓練期間のほとんどの時間は、「砲車」を磨くのに費やされたという。

 なおこのエンジニア君は「予備役」にすすんで登録をしている。しかし大砲について何も知らないわけだから、実戦になったら犬死にすることは覚悟しているという。

 基隆市の27歳のデザイナー氏は、2018年に義務教練を受けた。後段では歩兵の重火器(迫撃砲と擲弾発射機)の担当になった。しかし教官は、重火器の仕組みを教えてくれただけ。ついに、重火器の実弾を発射する機会は一度も与えられなかったという。「訓練弾」すら、無かった。

 28歳のセールスマン。彼は2015に義務教練を受け、空軍の「データ・プロセッシング」を担任させられた。
 教官たちは、まるで真剣に教えるつもりがないようだったと彼は回顧する。すなわち、たった11週間、何かを教えたところで、除隊するとそんなのはすぐ忘れてしまうから、教えるだけ無駄であると考えていたようだった。

 2022年に台湾は、16万2000人の志願兵軍隊を擁している。その上に加算して、7万人の青年に、4ヵ月間の義務軍事教練を課した。

 2024年からの台湾の新システムでは、義務教練兵は、すくなくも800発の実弾を射撃し、対戦車ミサイルやドローンについても教わる。

 銃剣動作も、他の近接戦闘と組み合わせて教わる。
 さらに、志願兵の本チャン部隊との合同戦闘訓練も。

 初年兵の入営直後の体力練成期間は、今の5週間から、8週間に延ばされる。

 米軍の場合、ジャヴェリンの訓練は、シミュレーターを主用する。1発7万ドルの実弾をぽんぽん消費していいわけがない。全員がシミュレーターで慣熟したところで、部隊長が数名の新兵を指名して、その者たちだけが、実物の〔ただし訓練弾頭付きで再使用できる?〕ジャヴェリン・ミサイルを発射するのである。