敵を困らせる兵器の発明もあれば、味方を困らせる兵器の発明もある。

 Ashish Dangwal 記者による2023-1-23記事「Australia To Buy ‘Smart Sea Mines’ In Billion Dollar Deal That Can Differentiate Between Military & Civilian Ships」。
    オーストラリアは、ハイテク機雷を大量に調達する。これは、商船とシナ軍艦を自律的に識別できるという。
 ベトナム戦争いらい、豪州が機雷に巨額投資をするのは初めて。総額は10億ドル規模だという。

 ※スマート機雷は、確実に中共を困らせる兵器だ。これは間違いない。しかし、防衛省が計画している三種弾頭とりかえ式の巡航ミサイルとやらは、味方を困らせる兵器じゃないか? そんな匂いがプンプンする。
 戦争は田植えや稲刈りとは違う。不完全情報状況下で、敵司令官よりも一歩早い決断を次々に下していかない限り、イニシアチブとアドバンテージは敵側に握られ、それを決断のノロマな軍隊の側は、二度と奪い返すことはできない。
 偵察キットを弾頭にとりつけて放った初弾が、もし調子が悪かったらどうする? ある海面の偵察だけに失敗したら? あるいは、飛んだは飛んだが、鮮明な映像を送ってこなかったら? 海警か海上民兵か第三国漁船か、画像からは判断し辛かったら? 東京の政府に許可を得るためにあらためて2発目を送り出すのか? そんなことをやっているあいだ、攻撃判断はず~っと保留しておくのかい? 敵はすでにこっちの出方を察知してしまった。時間はどんどん過ぎる。その間に敵が作戦の帰趨を決定的にしてしまう。

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 Andrew Chuter 記者による2023-1-21記事「British naval forces get specialized vessel for seabed operations」。
   「多機能海洋調査船」――略してMROS。いま、リヴァプールの造船所で改造工事が仕上がりつつあるが、これが英国政府にとっての最初の、大陸棚の通信ケーブルや石油ガスパイプラインを、ゲリラ攻撃から保守する専用船になる。ぜんぶで2隻、発注されている。国防省の予算。

 1隻が6000トン。1号船はこの夏から活動を開始できる。

 所属は、英海軍の補給艦などと同じ、「補助艦艦隊」。

 MROSは、ヘリパッド、クレーン、広大な作業デッキ、そして「ムーン・プール」を備える。艦の中央の底部に、下方に貫通した大穴があって、そこから小型潜航艇を出し入れできるのだ。

 艦固有の乗員は24名ほど。加えて、水中作業のスペシャリスト等が60人くらい、臨時に同乗できる。

 ※ムーン・プールの構造を、陸戦用の装甲車に応用する新案について、ご提案をしたい。81ミリ迫撃砲を装甲車内から発射するのは、特別な緩衝装置を介さないかぎりは、車両の床構造を傷めてしまう。しかし、床が絞首台のように観音開きに開いて、そこから地面へ迫撃砲(床板付き)を「吊り下ろす」簡易な滑車機構でもあれば、発射反動は地面が受け止めることになるから、搭載する装甲車じたいの床構造は、ヘナヘナのぺらぺらでも問題がなくなる。たとえばFFのロングボディの四輪民間荷物配送車を改造しても、「自走迫撃砲」にできるわけである。車内の、装填手の立ち位置は、地面より数十センチ高いところにある。ということは、迫撃砲の砲身を尋常でなく長くしても、装填動作に苦労はしない。長砲身の迫撃砲とすることで、弱装薬でも大射程が実現するだろう。「2022ウクライナ型」の戦場では、このタイプの安価に量産できる「簡易SP」を移動火力として大量に投入した側が、少ない犠牲で勝利するであろうと思う。ドローン観測と連携すれば、照準のための「神業」も求められない。素人兵でも、おそるべき戦力となってくれるはずだ。

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 Seth Robson 記者による2023-1-23記事「Amphibious warship constitutes a key piece of Taiwan’s defense against invasion」。
   1万500トンのLPD艦『玉山』。台湾海軍最大の軍艦である。
 2021-4に進水していたが、艤装が進み、マスコミに艦内が公開された。

 機能としては、いま佐世保にいる米海軍の『USS グリーンベイ』に類似する。

 下層にはAAV-7を収め、洋上でウェルデッキから発進させられる。
 ヘリコプターは「S-70C」を予定するらしい。

 ※ミサイル時代に、この巨大軍艦は特に敵を困らせはしない。むしろ台湾は機雷敷設艦やUUV母艦を増やすべきなのだ。しかし中華圏には独特の文法もある。見得の競争があるのだ。その政治的な機能を果たしてくれることは間違いない。

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 2023-1-23記事「Sharing better than keeping: Poland will send up to 40 T-72 tanks and up to 100 BMP-1 vehicles to Ukraine」。
   ポーランドは、1個旅団をまかなうに足るAFVを追加でウクライナに提供する。国防大臣が語った。これは、T-72が30~40両、BMP-1が80~100両という規模を意味する。

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 Defense Express の2023-1-23記事「Russian Defense Industry Has Faced Lack of Qualified Personnel」。
   今年のロシアの軍需工業界は、5万人の技能労働力が不足するだろうとの予測値が出た。

 昨年9月、ロシア政府はウラル戦車工場に24時間操業を命じた。しかるにそれに必要な労務者が足らず、工場ではけっきょく250人の囚人を刑務所から借り出してくるしかなかった。

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 Defense Express の2023-1-23記事「Estonia Becomes The First NATO Country to Give All Its 155mm Howitzers to Ukraine」。
   キーウにあるエストニアの大使館は声明した。エストニア軍が保有しているすべての牽引式155ミリ野砲をウクライナ軍に引渡すと。

 数十門のFH-70、ならびに122粍榴弾砲の「D-30」のほか、数千発の155㎜砲弾、砲兵隊の支援車両、などなど1億1300億ドル相当の援助がエストニアからなされる。

 ミリバラの2022年版によれば、エストニア軍には60門の牽引砲がある。36門がD-30で、24門がFH-70だ。この中にはしかし、2022-4にエストニアからウクライナへ早々と寄付してしまったD-30は、含まれていないだろう。

 エストニアは韓国からK9自走砲を36両、輸入することになっており、自軍の十五榴がゼロになるわけではない。※122粍系=ソ連系の野砲をゼロにするのだろう。

 すでに2022-12には、18両のK9が届いている。

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 2023-1-18記事「Latest war news round-up: Border-area residents start locking their doors」。
    ロシア国境沿いのノルウェー領内に住む人々は、毎朝、玄関前を慎重に確かめる。露領から逃亡してきた兵隊や民間人が隠れているかもしれないからだ。

 川ひとつ隔てた向こう岸で、深夜に、照明の光が動き、スノーモビルの走り回る音が響くこともあるという。何かを捜索しているのだ。

 大物の亡命。ワグネルの犯罪を証言する者が、オスロに保護されている。これに続く者が続出してはロシアも困る。

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 ERR News の2023-1-23記事「Around 20,000 Russian citizens of military call-up age resident in Estonia」。
    エストニア国内に居住している約2万人のロシア人。多くは一生をエストニアで過ごす。しかしこのうちのわずかな人びとはその年齢が徴兵適齢であるため、いつ本国の兵営への出頭命令が来るか、わからない。

 内務省によれば、ウクライナ軍に投ずるためにエストニアを出国した人が、二桁人数、かぞえられているという。

 もしロシアから招集がかかった人がいたら、電話番号1247にかけて欲しい。内務省が、相談に乗るので。


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 Vahur Lauri 記者による2023-1-23記事「RKIK: Estonian tank purchase would need 3 percent of GDP defense spend」。
    もしエストニアが西側製の重戦車を調達しようと思うのなら、国防予算はGDPの3%に達するであろうという。

 戦車兵のトレーニングにはシミュレーターも欠かせない。たとえば「レオパルト2」が100km自走するためには軽油が500リッター必要である。実車を走らせて訓練していたら、破産する。

 2016年のワルシャワ・サミットでNATOは決めた。エストニア領内に重戦車を事前展開しておこうじゃないかと。

 そこで、米、英、仏、独、デンマーク軍が、エストニア領内に重戦車を置いている。英軍はチャレンジャー2、仏軍はルクレールである。

 エストニアのウクライナ支援金額は、GDPの1%に達している。

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 Defense Express の2023-1-23記事「Europe’s Defense Industry Depends On Chinese Tungsten, Which Is Transported Through the Territory of russia」。
   『ブルームズバーグ』が指摘した。欧州の軍需メーカーが必要とするタングステンは、すべて中共で掘られており、その輸送経路はロシアを通ってくる。
 このタングステン供給が途中で阻止されると、どうなるか。

 2022年の9ヵ月間のうちに、中共から欧州に輸送されるタングステンは、2倍に増えた。3万6100トン。
 ちなみに2020年では1万トン未満だった。

 鉄道輸送の起点は武漢で、終点はドイツのデュイスバーグ。毎日、15両編成の貨物列車が、16日かけて到着している。

 もし露領を通さずに中共から欧州までレアアースを運搬しようとすると、日数が2倍になる。
 それで欧州は、経済制裁をかけるにしても、ロシア領内の鉄道輸送商売についてはお目こぼししなければならないというジレンマに陥っている。

 ダボス会議では、ノルウェーにあるヴァナジウムとチタニウムの鉱山を各国合同で大開発しようという話も出ている。中共やロシアのレアアースや鉄道への依存をすこしでも減らすためだ。

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 Moskva News の2023-1-23記事「Telegram Surpasses WhatsApp Traffic Volume in Russia」。
    ロシア国内のトラフィック・ボリュームの比較で、「テレグラム」の信号量が、はじめて「ワッツアップ」の信号量を凌駕した。

 トラフィックボリュームが大きいということは、メッセンジャーアプリとして人気が高いことを意味するだけではなく、ビデオ動画の投稿や閲覧が多いことも示唆する。

 2022前半に、ロシアの裁判所は、ワッツアップの親企業である「メタ」を禁止している。「メタ」はフェイスブックとインスタグラムも所有している。しかしワッツアップについては禁止が実効的ではないようだ。

 2023-1月の比較。ロシア国内で毎日4880万人(インターネットユーザーの4割)がテレグラムを使用。他方、ワッツアップの1日の使用者は7600万人。

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 2023-1-23記事「Russian Military Intelligence Linked to Spanish Letter Bomb Campaign ―― NYT」。
    サンクトペテルスブルグに白人至上主義の民兵集団がいる。そやつらが先のスペインの手紙爆弾の実行犯だという報道。背後でけしかけているのはGRUであると。

 6通の手紙爆弾が、昨年11~12月にスペイン高官宛てに配達された。

 ロシア人は、《ロシアは全欧でテロできるんだぞ》ということを示したいらしい。それが動機。

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 John Haltiwanger 記者による2023-1-23記事「Ukraine’s battlefields look like World War I but with a new and terrifying addition that leaves troops with almost nowhere to hide」。
    シンクタンクのピーター・シンガーは言う。ドローンが将来の通常戦争でユビキタスに使われる一般的な道具に昇格することはあるのかという議論は、今次ウクライナ戦争の現実によって、おわった。

 ※昔の砲兵に双眼鏡が必要だったように、これからの砲兵と歩兵の重火器には、ドローンが不可欠である。またそれ以外の兵科にとっても、ドローンの役割は増すばかりで、減ることは考えられないだろう。

 クリストファー・ミラーは言う。ドローンのスウォーム運用はいつ戦争で見られるのだろうかと皆、関心をもっていた。なんとそれを最初に実行したのはロシア軍で、システムはイラン製の「シャヘド136」であった。
 シンガーが着目するのは、露軍が、自爆型ドローンを、意図的に、平気で《都市の民間住民殺害》に投入することである。これは盲点だった。西側では誰もそんなことは考えなかったので。

 しかし考えてみれば、自爆型ドローンは、ロンドンを無差別空襲した「V-1」号と同じなのだ。それがニューテクノロジーによって安価に復活したと思えばよい。

 末端部隊の偵察手段として、DJIの「Mavic 3」は定番に昇格した。オンラインだと3000ドルしないで入手できる市販品である。

 戦術偵察の流儀は、根本から変わってしまった。ロンドンのキングズカレジの研究者マリナ・ミロンは言う。かつては敵部隊の位置を確かめるために長距離偵察小隊や潜入斥候を陸上から派遣する必要があった。その偵察人員が無事に戻って来られる保証はないので、偵察隊を出すか出さないかも指揮する部隊長の悩み所であった。しかし今日、偵察ドローンが撃墜されても誰も死なない。長距離偵察をするべきか控えるべきかの判断は、悩む所ではなくなったのである。すぐに飛ばせるドローンがあるかないかだけが問題になった。ドローンがなければ偵察情報はあつまらず、その部隊は敵よりも単純に不利に陥る。敵は常続的に偵察ドローンを送り出してくるので。

 地上部隊はまた、常に敵のドローンから見られていると意識しなければならなくなった。これを忘れた者は、単純に、生き残れない。

 ドローンは「キルチェーン」を劇的に短くした。敵の高価値目標を遠くで発見し、その座標を特定し、味方砲兵に射撃して命中弾を与えて片付けてもらうまでの時間が、極端に短縮されつつあるのだ。

 シンガーは言う。大砲や戦車と同列に、いまやドローンが、軍隊の必須兵器に昇格したのである。