「ストーム・シャドウ」が英国からウクライナ空軍に供給される可能性が出てきた。

 Natasha Bertrand, Alex Marquardt and Katie Bo Lillis 記者による2023-1-24記事「The US and its allies want Ukraine to change its battlefield tactics in the spring」。
   ウクライナを後援する西側各国政府は、東部のバフムトあたりで歩兵戦をするのではなく、南部を攻めろ、とアドバイスしているところだという。

 NATOの目から見ると、バフムトは戦略的にちっともおいしい目標じゃない。そこを占領しても、軍事的に重要なインフラは手に入らない(露軍から見れば別だが)。そんなところで膠着した歩兵の陣地戦や市街戦を延々と続けているのはよくない。砲弾資源も無駄に使いすぎている。

 バイデン政権は、3人の文民高官を先週、キーウに派遣して、この判断をハッキリとゼレンスキーに伝えたという。

 その3人とは、ジョン・ファイナー、ウェンディ・シャーマン、コリン・カールである。
  ※いずれも「デピュティ」級。旧軍で言ったら中佐の少壮エリート幕僚というところか。

 機甲戦力を使って南方で、敵にとっては意外な、機動攻撃をしなさい、というアドバイスをした。

 すなわちゼレンスキーに対しては「バフムトは諦めろ」と勧めたわけだ。
 ゼレンスキーとその幕僚は、これに同意せず。

 人命と砲弾を濫費する戦術は、露軍にとっては持続可能だが、西側にとっては持続できない。そんな補給は続けられない。これをゼレンスキーに伝えた。

 CIAのバーンズ長官は今月キーウに出張し、プー之介が何を計画しているのかについて、ゼレンスキーに教えたという。
 プー之介は次の「追加動員」を決めている。すなわち、露軍の人員はこれからも無尽蔵に繰り出されてくる。それにつきあっているのは、不利だ。

 通信傍受によると、露軍の上層では、春に大攻勢をかけてハルキウを占領する相談をしているという。

 ※ベラルーシ内で「龍の歯」を製造している6箇所の工場が判明した。

 ※部品入手難により、ロシアは、計画していた3機の衛星の組み立てを、中止したという。通信傍受衛星が1機。データ中継衛星が2機。

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 Tim Lister 他の記者による2023-1-23記事「Deadly and disposable: Wagner’s brutal tactics in Ukraine revealed by intelligence report」。
   バフムトでは、ワグネル部隊は、上級部隊からの命令なしに後退することが禁じられている。
 この禁を破った兵はその場で銃殺される。

 CNNが聞き得た証言。11月に、あるワグネル兵がウクライナ軍に投降しようと試みた。その男は罰としてワグネル部隊によって睾丸〔複数形〕を切り取られたと。

 攻撃中のワグネル部隊は、負傷兵が発生してもその場に戦友を放置したまま前進しなければならない。搬送しようとした者は罰せられる。攻撃目標の占領に成功した後で、はじめて負傷者の収容作業が許可される。

 攻撃が失敗した場合は、大概、夜になって、退却命令が伝えられる。

 最近では、ロシア正規軍がBTG戦術を放棄し、歩兵の小部隊が果敢に突撃するワグネル流に、流儀を収斂させつつあるという。

 ※これは第一次大戦でドイツが発明した「突撃隊」のスピリットそのものじゃないか。尤も、「突撃隊」は下級部隊の「イニシアチヴ」と不可分だったのに対し、ワグネル式は完全な上意下達のロボット集団という相違はある。けれども、復員後の「SA」がワイマール体制を覆すナチスの「槍先」に化けたような歴史が、ロシアの敗戦後に再演されてもおかしくない。社会混乱期には組織暴力がモノを言う。プリゴジンを闇将軍とする院外暴力団が支配するロシア社会が生まれるかもしれない。

 ワグネルの突撃隊は12名以下の歩兵で、携行する重火器としてはRPGぐらい(さいきん北鮮からもRPGを買った)。しかしかならずドローン情報はリアルタイムで受取り続ける。ワグネル兵の通信端末はモトローラ製だという。モトローラ社は今はロシアの店を閉じており、ロシア国内では何も売っていない。

 ワグネルの中でも最も経験を積んだ部隊は、優先的に暗視装置を支給されている。

 ウクライナ軍は、味方の塹壕に近寄るワグネル部隊を、上空からドローンで監視し続けている。RPGの間合いに近づく前にその接近を探知できれば、ウクライナ軍側が火力で必勝だという。

 ワグネル歩兵とロシア正規軍(の砲兵隊)の連携は悪く、時に、露軍が遠くから放った砲弾でワグネル部隊が吹き飛ばされてしまう。だから火力支援を受けるときにはワグネル兵は蛸壺を掘ってその中に入るようにしている。

 正規露軍を尻目に、東部戦線で岩塩鉱山町の奪取に成功したプリゴジンは、ワグネルこそ世界一の兵だと自慢。いまや独自に多連装ロケット砲なども装備できるまでに組織を膨張させつつある。

 ※名コーチが、軍の総司令官としても有能だとは限らない。平時のコーチには無限の準備時間が与えられている。戦時の司令官には常に時間はない。こっちがモタモタと時間を空費していれば、そのあいだに敵も準備を進めて強くなってしまうのだ。いつ全力でプッシュをかけるべきかは、最前線の空気が教えてくれる。そのタイミングを逃すようではヘボ将軍だ。ウクライナ人は今、それを感じているので、総攻撃を急ごうとしている。米国政府は、スポーツ・コーチの感覚で、それを待たせようとしている。コーチに戦争を計画させてはいけない。確かにあるいは「M2ブラドリー」は3月まで待って投入すれば有利かもしれない。2022-3に分かったことは、ソ連製AFVはエンジンが非力でウクライナの泥に飲み込まれてしまうということ。それにくらべて強力なエンジンを搭載した米国製AFVなら、露軍が予想しない泥田コースで露軍の背後に出て、各所で包囲殲滅できるだろう。しかしもし敵軍に士気崩壊の兆しがあったら、こっちに最優秀のIFVがあるかないかなんて、こだわっている場合じゃない。そういうのを「空気が読めない奴」というのだ。もうひとつ。クリミア方面は砂地なので水はけが良い。だから米軍AFVの長所は活きないおそれがある。春のドンバスなら、米軍AFVの圧倒的な機動力を活かせる。

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 George Allison 記者による2023-1-23記事「UK ‘not ruling out’ giving Ukraine missiles to reach Russia」。
  ウクライナの民間人目標に向けて発射され続けている露軍のミサイルの発射点を破壊するための長射程の対地ミサイルの供給は、べつに禁じられているわけではない――と英政府閣僚。

 露領の奥深くまで届くASMの贈与を匂わせた。

 英国の警告には迫力がある。これまでウクライナに供与した兵器やサービスの一覧表を見ればわかるだろう。
  ※長大なので略すが、その一部は以下の如し。

 英国は「重量級貨物運搬ドローン」も複数、提供している。
 RC-135W「リベットジョイント」を飛ばし、露軍情報をウクライナに伝えてやっている。

 13両の防弾仕様改装トヨタ・ランドクルーザー。市長など行政公務員や避難者を乗せて運ぶための。※UAEから搬入されたものとは別?

 ナノドローンである「ブラックホーネット」を850セット、8月24日に供与決定している。

 ※雑報によると、射程500kmの空対地巡航ミサイル「ストームシャドウ」が検討されているらしい。500kmというところがミソだ。これはINFカテゴリーに入らない。イスカンデルの対抗品と言い張れる。

 ※物故者であるデビッド・アテンボロの上手な声真似で「ドイツの黒森に棲んでいるジャーマンレパードをウクライナで解き放て」と、オラフ・ショルツを非難する説教のビデオがSNSにUpされていて、笑える。さいしょはすっかり騙された。本人の声かと……。

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 Ashish Dangwal 記者による2023-1-24記事「In A Tank-On-Tank Battle, Russian Main Battle Tank Under Cover Of Terminator BMPT ‘Terminates’ Ukrainian MBT」。
   露軍のBMPTが、見通しのまったくきかない森林内で、機関砲乱射によって宇軍歩兵(BMP乗車歩兵)の浸透接近を拒止する間に、T-72の間接射撃と合同して、宇軍のT-72を戦闘不能にした映像が、SNS上にUpされ、宣伝されている。

 動画は露軍戦車の後上方からのドローン撮影アングル。

 ※いうまでもなく、宇軍の真上をロイタリングしていた別なドローンがあったはずだ。が、そちらのアングルの映像はまったく隠されている。そのドローンによる射線修正誘導が、戦闘の最大の勝因だった。とすれば、勝利の「秘訣」をわざわざ公表してやる義理は無いわけである。ともかく、互いに相手AFVをまったく目視できない密林内で、低伸弾道の戦車砲と機関砲だけを使って、敵戦車を無力化したのである。これは「戦車有用論」よりもむしろ「ドローン万能論」をサポートする証拠映像だろう。ドローン無しでは交戦そのものが成立しなかった。そして、偵察ドローンが敵を発見した場所に、すぐに「自爆ドローン」を呼び寄せた方が、キルチェーンは短縮されたはずである。宇軍戦車は、みずからの目として駆使するドローンを飛ばしていなかったが故に、一方的にやられておしまいだった。これが「新現実」だ!

 ※今次戦争ではMT-LBの天井に連装の23ミリ機関砲をむきだしに装載した改造兵器もよく使われているのだが、用法はほとんどコレらしい。つまり森林内の近距離遭遇戦になったときに、味方戦車の隣の位置から、敵方を乱射することによって、敵歩兵が下車して森林内を浸透接近してくるのを、機関砲が有効に拒止できるのだ。ただし、MT-LBは無装甲に近いから、敵からも機関砲や榴弾を乱射されると、BMPTほどには踏ん張れない。

 ※かつて珊瑚海海戦は、水上艦同士が終始、互いの艦影を目視することなしに決着した初の海戦になったと総括された。とうとう、戦車戦も、そのようになりつつある。BMPTのようにほどほどによく装甲されたAFVが、ATGMの代わりに偵察ドローンと特攻ドローンを放つように、これから進化するのではないか? 戦車砲の時代は終る。しかし機関砲は残る。砲塔(銃塔)はもちろん無人のRWSに限られるだろう。

 ※もし上空に敵のドローンの目というものが無ければ、宇軍のBMPからATWを携帯させた歩兵を下車させて森林内を極度に散開して前進させれば、露軍の少数のAFVを仕留められるチャンスはいくらでもある。機関砲の乱射は、音響と閃光は派手だが、所詮は無駄射ちだからだ。しかし「上空から自分の動きがすべて見られている」と思ったら、もう歩兵にもその意志力がなくなってしまうのだろう。すぐ近くにいる敵歩兵をフリーズさせるパワーが、偵察ドローンには、あるのだ。

 ※81㎜迫撃砲を、地面に下ろして発射する仕様の「簡易自走砲」は、どこまでコンパクトに造れるか? RRのVWビートルのような普通乗用車の助手席(右前席)を、「迫撃砲が坐ったエレベーター」にし、助手席の床と天井は切り欠く。前2輪は、ホイールハブ内に電動モーターを入れて、パートタイム4×4としつつも、車体縦貫のトルク物理リレーは追放する。これで「たった一人で、迫撃砲1門と弾薬を抱えてすばやく前進し、陣地進入し、射撃し、避退できる」システムができる。今後、近接支援火力で露軍を圧倒するなら、これしかないと思う。

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 TOC による2023-1-24記事「Sweden is back on sub building track, it hopes to get Tomahawks」。
    スウェーデンはサーブのコクムス造船所に、次の潜水艦を発注する。
 同国海軍は、その潜水艦が、18基の垂直発射管を備え、そこから米国製のトマホーク巡航ミサイルを発射できるようにして欲しいと思っている。

 問題は、果たして米政府がトマホークの売却をスウェーデンに対して認めるかどうかが、まったく、未知数なのである。

 スウェーデンは、トマホークのような強力な米国製の兵器を調達するためにも、NATO入りをしたいと思っている。

 トマホークを発射できる『A26』型のコストは、1隻が8億1600万ドルになるだろうと試算されている。

 ※米国の学校で配られる教科書の表紙は「防弾仕様」にする必要がありはしないか? 下敷きとノートもね。あと、学校内のすべての机の中には、犯人の視力を幻惑できる、非殺傷性のレーザー拳銃を常備するしかないだろう。どうせあの国はもう狂っている。それでぜんぜんオッケーだ。