Kh-55 のカラッポの核弾頭付きが、またしてもキーウ空襲に混ぜられたようだ。残骸が回収された。

 Mike Brest 記者による2023-1-26記事「Russia launches new salvo of missiles at Ukraine after tanks announcement」。
   ウクライナ国防省発表。露軍は55発のミサイルを発射してきた。宇軍はそのうち47発を途中で撃ち落した。
 47発のうち20発はキーウ近郊で撃墜している。

 敵が狙った主たるターゲットは、あちこちにある変電所であった。

 このミサイル空襲は、米独両国が戦車をウクライナに供与すると発表した翌日になされた。

 ※別報によると今回は地上で11人くらい死んだらしいが、WWII中の「V-1」とくらべても、異常に効率が悪そうだ。

 次。
 Jon Jackson 記者による2023-1-25記事「Game-Changing Abrams Tanks Present One Glaring Problem for Ukraine」。
   カービー報道官によると、M1の燃料はジェット燃料であるため、専用のパイプラインをウクライナまで延ばして補給する必要があるという。

 退役陸軍少佐のジョン・スペンサーいわく。M1のエンジンはカタログスペック上ではマルチ・フュールということになっているけれども、自分が現役のときは、ジェット燃料(JP-8)以外の燃料が補給されたのを見たことがない。

 ウクライナ国内では露軍が絶え間なくインフラを攻撃・破壊し続けているため、長距離移動するときに、適宜の燃料が途中で手に入らない懸念は、去ることはない。それは軽油であろうと、同じである。

 M1エイブラムズの燃費はおそろしく悪い。1マイル進むために、1.5ガロンから3ガロンの「JP-8」を燃やしてしまう。

 次。
 Joseph Trevithick 記者による2023-1-25記事「M1 Abrams Tanks In U.S. Inventory Have Armor Too Secret To Send To Ukraine」。
   M1エイブラムズを米軍仕様のままで輸出または援助することは、主要な同盟国相手であってもできない。最大の難点は、装甲鈑の中に劣化ウラン(減損ウラン=depleted uranium=DU)が使われていることである。

 この劣化ウラン装甲をサンドウィッチしていない、とくべつな、他国供与向け専用のM1バージョンを用意しなくてはならないのだ。

 だから、M1がじっさいにウクライナに届けられる時期は、早くて今年の後半。おそらく来年じゃないかという。

 DU装甲はM1A2型から標準だが、A1の一部にもレトロフィットでアップデート工事されている。

 DU装甲は、その素材には特に秘密はないが、どのように加工して装甲化しているかはデザイン上の秘密。したがってこの装甲がついたバージョンを外国軍に渡すわけにはいかないのだ。

 1988にさだめられた保秘指令では、もし戦場でM1の装甲の一部が破壊されて断面が見えるような状態になったら、すぐそこにカバーをかけ、誰かに撮影されないようにし、できれば臨時に何かを熔接して塞いで、戦車は回収しなければならぬとしていた。

 豪州、エジプト、イラク、クウェート、モロッコ、サウジに輸出されているM1のバージョンには当然、DUは使われていない。代わりにセラミックが入っているはずである。それも勿論、秘密だが。

 ストック品の砲塔からDUを外してセラミックに代える工事には600万ドル弱かかるんじゃないかという。最初のバッチの28両につき。

 時間もカネもかかる話なので、米政府は、エジプトかサウジに要請して、そこにある、すでに非DU化されているM1を転送するんじゃないかという想像も可能だ。
 エジプトは1360両ものM1A1をもっている。
 サウジは370両以上。しかもサウジ軍は人手が足りないため、2016年時点で、170両はガレージに入れたまま、動かしてないという。

 しかしどちらの政府も、もし手持ちのM1をウクライナに転送させることを認めれば、ロシアが怒る。それでも許可するのかという話になる。

 次。
 Lara Jakes and Thomas Gibbons-Neff 記者による2023-1-25記事「Western Tanks Are Coming to Ukraine, but Will They Be Enough?」。
   ポルトガルはレオ2を4両、ノルウェーは8両、提供できると言っている。

 西側製戦車がすくなくも105両は、夏までに渡されそうである。だが、それでじゅうぶんか?

 ウクライナ軍は、すくなくも300両の西側戦車が必要だなどとふざけたことをぬかしている。

 T-72に慣れているウクライナの戦車兵が、たんにレオ2を扱えるようにするだけなら4週間あれば足りる。

 重厚長大兵器のウクライナ戦線への搬入は、鉄道を使うのが最も安全。重量物輸送用トレーラーは、露軍の目を惹いてしまうので、よくない。

 ※スウェーデンも手持ちのレオ2(名前は変えている)を供出するという。ながらく、スウェーデンは、引退させた「S戦車」を大量に有事用に隠し持っているのだ――と思ってきたが、どうやらそれはもはや存在しないのか…………。敵を直接照準せず、ドローンの目に弾着修正をさせる用法になるなら、「無砲塔」のコンセプトは、とても合理的だと思うのだが……。

 次。
 2023-1-26記事「Britain plans to deliver Challenger 2 tanks by the end of March」。
   英国防省の発表。チャレンジャー2は、3月末にウクライナに搬入される。
 それまでは英国内で乗員の訓練が続けられる。

 次。
 John McBeth 記者による2023-1-24記事「New Zealand bids wistful adieu to its Orion P-3s」。
   ニュージーランド空軍は、「P-3Cオライオン」を前倒しで引退させる。後継は、4機の「P-8ポセイドン」。

 55年前、米国外の軍隊として初めて「オライオン」を買ったのがNZ空軍だった。記者はそれに同乗取材を許された。そのとき機長が話してくれた。機尾のMADは、7000フィート下の海面に浮いているブリキの「4ガロン」缶を探知するほどの感度があるんだ、と。

 NZは今、GDPの1.5%を国防に使っている。世界平均は2.2%である。

 P-8には水洗トイレがついているから、10時間以上の哨戒飛行も苦にならない。P-3にはバケツがあるだけだったので、チト辛かった。

 次。
 Christian Wienberg and Frances Schwartzkopff 記者による2023-1-26記事「Denmark Calls for Mandatory Military Service for Women」。
   デンマーク国防相は、女子の義務兵役を始めると声明。
 デンマークはこれまでNATOから、軍備努力が不足じゃないかと非難されてきた。

 現状、女子は志願して国軍に入ることはできる。
 男子には徴兵があるが、現役で入営する者は、くじびきで選ばれている。しかもたったの4ヵ月。

 女子徴兵については、欧州の多数の女性団体が支持している。

 隣国のノルウェーはすでに2015年から女子徴兵を始めている。2021年時点でノルウェー兵の20%は女子である。

 スウェーデンは2017年に徴兵システムを復活させたさいに、女子も徴兵することにした。

 ※雑報によると、カエサルをぜんぶ宇軍にくれてやったデンマークは、代わりに、イスラエル製のATMOS自走砲と、多連装ロケット砲PULSを新規調達するという。つまりはカエサルの性能はよくないのか。

 次。
 The Maritime Executive の2023-1-25記事「 Study: U.S. Will Run Out of Anti-Ship Missiles in a Fight With China」。
    シンクタンクのCSISが警告。
 対支戦になったら米軍の対艦ミサイルはすぐに弾切れになるだろう、と。

 CSISの想定シナリオ。中共と3週間戦うと、米軍はどのくらいミサイルを射耗するか。
 JASSMを4000発。
 LRASMを450発。
 ハープーンを400発。
 対地攻撃用のトマホークを400発。
 プラス、かぞえきれないSM-6(駆逐艦から発射)。

 LRASMは開戦から1週間しないで、在庫が尽きてしまうだろう。
 JASSMは、開戦から9日目にして、在庫が尽きるだろう。

 大急ぎで製造させようとしても、間に合わない。それだけの数のミサイル在庫を元どおりにととのえ直すには、2年かかるであろう。

 提言のひとつ。製造能力のある同盟国と今から相談しろ。豪州、ノルウェー、日本と。
 メーカーに対しては、短期のブツ切り的な発注ではなくて、長期にわたってコンスタントにミサイルを納品させるような契約にすること。
 そうすることで、1発あたりのコストも下がるし、戦争に突入したときに工場ラインは確実に稼動中であるので、増産させやすい。

 ウクライナ戦争のおかげで、われわれは対支戦の始まる前に、こうした問題に気付くことができたのである。多謝、多謝……。

 次。
 The Maritime Executive の2023-1-25記事「Video: Two Turkish Cargo Ships Hit by Possible Missile in Ukraine」。
   ヘルソン港で、トルコの海運会社が傭船していた2隻のバヌアツ船籍の貨物船がミサイルまたは砲弾の攻撃を受けた。火災発生。

 ロイズによると、今次ウクライナ戦争の開始からこれまで、19隻の商船が近くで被弾しているという。

 ※WSJによると米政府はトルコに警告した。トルコの航空会社が米国製の旅客機をロシア線に飛ばし続けているのは制裁違反である。これを続けるなら、企業には罰金、個人には懲役を課すぞと。

 ※雑報によるとスイス軍の需品倉庫から、ウクライナの市民に対して、次の物資が贈られる。17万の手袋、4万の靴下、2000の毛布。

 次。
 Sakshi Tiwari 記者による2023-1-26記事「Russia Turns To Taliban For Weapons; Reports Claim After Iran & N.Korea, Moscow Eyes US Arms In Afghanistan」。
   ロシアは、タリバンが確保している、旧米軍の装備類を、買い取ろうとしている。
 たとえば暗視ゴーグルは1万6035個もあるはず。
 無線機は16万2043台。
 HMMWVは2万2174台。
 それ以外の各種トラックは8000台。
 M1117装甲車は634両。
 自動火器は54万9118梃。

 次。
 2023-1-26記事「Watch this person-shaped robot liquify and escape jail, all with the power of magnets」。
   海のナマコにヒントを得た、変容金属ロボット。磁性体、且つ、導電体で、液状と固形態を自在に遷移できる。

 融点が298度と低いガリウムの中に、磁性の分子を詰め込んでいるという。
 そこに外部から磁力を及ぼすと、発熱。液状化する。