同じ言葉が通じる相手との関係は壊したくないと思うのは人情だ。
プーチンはドイツ語を上手に話す。ドイツ人はそいつとは特別な関係が築けるはずだと信じたがる。無理はない。
イスラエル人の多くはロシアからの移住者で、同じ言葉が通じる。
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FRANK JORDANS and KIRSTEN GRIESHABER 記者による2023-1-25記事「After US offer, Germany unleashes Leopard tanks for Ukraine」。
ショルツ首相は水曜日、ドイツからウクライナに「レオパルト2」を供給することと、他の保有国がウクライナにそれぞれ手持ちのレオ2を供与することを許認したと声明した。
ドイツからはまず、1個戦車小隊分14両が送り出される。モデルは「A6」型である。
欧州各国からのレオ2の供給は総計88両になる見込み。これは1個戦車大隊分である。
この件についての米独間の調整は火曜日に決着したようである。
戦車供給の発表は、ドイツが米国よりも先にする。ただし最初の数量は控え目に。バイデンはショルツの声明の直後に、米国もM1をウクライナへ援助すると発表する。その数量はドイツより大きくする。
ウクライナ軍がレオ2をいつ前線で運用するのかについては、まったく不明である。受領のタイミングも不明。
NATO事務総長のストルテンベルグもツイッターに書き込み、ショルツの決定を称えた。
ドイツ国防大臣のボリス・ピストリウスは注意を喚起する。供与の決定はされたが、最初の1両がウクライナ領内に展開されるのは、いまから3ヵ月後になるだろうと。なおピストリウスは、レオ2は世界最優秀の戦車だと言い切った。
レオ2に乗る予定のウクライナ人の戦車兵の訓練は、ドイツ国内でなされる。
※米国が送るM1は、リファービッシュ品ではなく、新造品らしい。だからこちらも3ヵ月以上かかる話だと。
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R. W. Zimmermann 記者による2023-1-25記事「My Military Experience In a Leopard 2 Tank」。
記者は米陸軍の将校(米国籍だが、父親はドイツ市民だったようだ)。1988年から91年まで、米陸軍第3機甲師団(通称「槍先」師団)の「指揮小隊」で小隊長、さらに隷下大隊にて「運幹」だった。
フルダ・ギャップを守れというのが師団の任務だった。
ある米独合同演習のとき、彼は「レオパルト2」に乗せてもらえた(彼は独語が話せる)。その経験を語ろう。
真っ暗闇の夜中。米軍のブラドリー偵察小隊がドイツのレオ2の大隊を先導して長駆前進だ。
しかも、かんぜんな無線封止。各車の受信機はONになっているが、送信はいっさいしてはならない。
ドイツ軍はこんなとき、オートバイ伝令を使って縦列を統制することに熟達しているようだった。
米軍は、とにかく無線でぺちゃくちゃ喋り通しの文化があったから、面食らった。
夜明けとともに実弾射撃になるわけだが、その前の長距離行軍で落伍があってはならない。レオ2部隊は、1両の故障もなく、途中の給油も素早く終らせて、射場に到達した。ちなみに、外部に響くレオ2のディーゼルエンジンの音は、M1エイブラムズのガスタービンよりもうるさい。この音が聞こえたら、敵は用心したほうがいいだろう。
戦車用のヘルメットがあるのだが、そこについているインターコムの音声が清澄なのに一驚した。このクオリティは米軍のヘッドセットに優っていた。
車長席も砲手席も、米軍AFVと比べて、狭い。しかし、すべての機材は適切に無駄なくレイアウトされていた。
昼間用の照準器のクオリティの高さにも一驚。M1より優秀だった。あまりに明瞭なので、次々と簡単に目標を照準できた。
射場での機動中、戦車の戦闘室内は、M1より静かであった。
まさにメルセデスの感覚だった。
120ミリ砲の装填は、若い徴兵の担当(人力装填)だが、何の問題もなくできていた。
唯一、これはどうかと思ったのが、ターレットの上についている7.62ミリ機関銃(MG3)。これを操作するには車長が半身を乗り出し、敵丸に暴露せねばならない。今日の狙撃手だらけの戦場では、リスクが大きいだろう。機関銃そのものは、WWII中の「MG42」の直系なので、優秀である。
※カンザス州から多数のエイブラムズが鉄道の無蓋貨車で搬出されつつあるのが目撃されている。これはしかし、対宇援助用ではなかったようだ。他報によるとまず31両だが、すぐに50両に増えると。
※オランダ軍はげんざい「レオ2」をリースで保有しているのだが、それをドイツから買い取った上でウクライナへ寄贈するという話が浮上している。
※ネタ注意報。ラオスがロシアにT-34/85を30両提供したという映像は2020年3月の古いニュースで、パレード用。引渡しが決まったのは2019-1で、それも報じられている。
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Chris Monday 記者による202-1-22記事「What’s Hiding in Putin’s Family History?」。
※やたら長いので超抄訳である。
プーチンの父親はミハイルといい、1894年生~1969年没である。
ミハイルは、スターリニストで、「社会主義者の競争」を唱える人びとの一人だった。社会主義者は、カネを目当てに競争するのではなく、社会から承認されることが報酬であるべきだという。
ミハイルはソ連時代には確かに世に知られていた。しかしソ連崩壊とともに、世間は彼を完全に忘れた。
19世紀の思想家クスタンは、ロシア人は、忘れる競争をする国民であると評した。
ジョージ・オーウェルは、「メモリーの穴だらけ」とイメージした。
ハンナ・アレントは、全体主義国家では、表に出てくる要人はじつは無権力であり、奥の院にあって誰にも知られていない者が最高実力者だ、と言った。
プーチンはじぶんのラブライフや再婚について誰かが書くことを許したくない。ナワリンもそれで投獄したという。
ミハイルの父は、ニコライフスキー鉄道のベゼツク駅の転轍手だった。
ミハイルは十代で沖中仕組合に入っている。そこで余暇時間にロシア式のレスリングの選手になり、労務者階級からはレスラーとして知られるまでになった。ミドル級で、ランキングは五輪クラスには到達しなかったが、ローカルでは有名に。
ロシア内戦中、貿易は止まる。そこで暇になったトムスクの波止場で、当時のヘビー級のレスリング王者に挑むマッチが組まれ、中量級のミハイルが7分間、リングでエキシビションの相手をさせられた。そのときのチャンピオンの教え。「怖くても、闘うしかないんだ。ビクビクと逃げ回るな」。肝に銘じたという。
ミハイルは1920-3に赤軍に入隊し、1922-5に復員。1923にレニングラードの工場で、溶鉱炉の機関夫になった。
この工場は、宣伝用の製品を受注すると、すぐにそれを仕上げるという政治的な任務を負っていた。フィンランド駅のレーニン像は、この工場で特急で鋳造された。
鋳造の現場では1日に40杯も水を飲まないと、熱に堪えられない。シフトの合間には、彼は労働者の前でレスリングの試合をしてみせた。文盲の労働者の間でミハイルは人気者になった。工場の党幹部は、ミハイルを、アジテーターに起用した。
ミハイルは社会主義競争の理想を非インテリの立場から支持し、ついで、貧農を訪ねて集団化を説得する仕事をこなした。党は1931にソ連最高のレーニン勲章を授与することで酬いた。1933にエリート専用のレニングラードの一等地のアパートを与えられた。そこはキーロフ劇場の隣で、おとぎばなしのような住まいだったと。ミハイルはそこで16歳年下の女子と婚姻する。1934にはキーロフの国葬に参列。権力者のオーラを帯びるに至った。
WWII中はレニングラードの建築監督だった。
ウラジミールが入学したレニングラード大学の法学部の国際部というところは、名士の息子しか行けないところであった。そこでは西側の書物も読める。
ウラジミールをKGBに就職させたのも、親父ミハイルの口利きであった。
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Stephen M. Carmel 記者による2023-1-24記事「Tankers for the Pacific Fight: A Crisis in Capability」。
※記者は「Maersk Line」の先任副社長。
ペンタゴンは、対支有事の備えとしては、艦船の石油製品タンカーを、各種サイズ、合計あと100隻、新造するか、拘束契約を結ぶかする必要がある。
現状では、対支有事のあかつきに米軍が確実に傭船できる石油タンカーは、10隻にも足りない。
こうした海上燃料タンカーがないとすると、核動力空母であっても、作戦は著しく制約を受ける。
石油製品タンカーの支配は米軍のTRANSCOMの担当である。
米軍にとっての理想的なサイズはMR=ミディアム・レンジの油送船だ。
軽油や灯油などの石油製品を33万バレル運べるのがMR。
このMRから、海軍の給油艦に小分けし、給油艦が、戦場海面近くで味方の軍艦に給油する。
現状、米軍の「シーリフト・コマンド」が民間のMRを臨機にチャーターしている。ほんの数隻。
MRより小型で、4万バレルを運ぶ石油製品タンカーもたくさん有事には必要になる。これらの小型タンカーは吃水が浅いので、いろいろな沿岸に近付ける。不便な島嶼で作戦する陸上部隊にも給油してやれるのだ。
作戦速度(optempo)で敵に負けるわけにはいかない。タンカーが足りずに一線部隊の燃料が切れてしまえば、そこで米軍の動きは全部止まってしまう。
合衆国は今日、毎日、140万バレルの精製石油を輸出している。行き先は主に南米。それを運ぶタンカーはすべて、外国船籍である。
またその他に、原油も輸出している。ただし原油タンカーというものは、まったく、軍隊の補給は手伝えない。
米議会は新しい法律をつくって、十分数の石油製品タンカーを平時から確保し、有事に間違いなくそれを危険海面で動かせるようにしておくべきだ。有事がやってきてから、米政府がタンカーの船主たちと自由契約しようとしても、船主たちは、戦争後のことを考えてどうするか決める。米国が確実に大勝利するという確信がない限り、船主たちは中共を気にするはずである。
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Sakshi Tiwari 記者による2023-1-25記事「Ukraine Shoots Down Three Russian Ka-52 Attack Helicopters In Just 30 Minutes; One Su-25 Fighter Also Downed」。
1月24日にウクライナ軍は、3機の「カモフ52」戦闘ヘリを撃墜したという。それとは別に、同じ日、「スホイ25」も1機、撃墜した。
3機のヘリは、30分のうちに立て続けに落とされたという。それは夜明け前の深夜で、撃墜手段はSAMである。
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Ashish Dangwal 記者による2023-1-25記事「Intercepting HIMARS, Russia Upgrades ‘360 Degree’ Pantsir-S1 Defense Systems To Shoot Down US-Origin Rockets」。
プーチンの屋敷の近くなどに「パンツィリ-S1」をやたら配置しはじめたのは、HIMARSを邀撃する目的であることが分かった。
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Defense Express の2023-1-25記事「russians Are Trying to Place GPS-Beacons on Power Supply Facilities of Ukraine」。
ロシアのGRUから雇われた工作員が、ウクライナ領内の変電所等を経巡り、その精密なGPS座標を測っていた。そのデータを、次のミサイル攻撃時の誘導に役立てようというのである。男は逮捕された。