重さ7.5kgの「TM-62」という対戦車地雷を地面に置いて戻ってこられる力自慢のクォッドコプターを昨年10月から宇軍が駆使していることが分かった。

 雑報による。
 82ミリ迫撃砲弾ならば6発たてつづけに投下できるという。
 82ミリ迫撃砲弾は、NATO某国内の工場にて、ウクライナ企業が量産を開始している。

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 Michael Slavin 記者による2023-2-2記事「Army cavalry exercise in Germany puts novel navigation to the test」。
   米陸軍が導入した最新の、末端兵がアクセスできるウェアラブルな情報システム。「統合戦術ネットワーク」という。
 地図の中に、自分の部隊の位置がリアルタイムで表示される。斥候兵は、それを通じて味方砲兵に、砲撃を要請することができる。キルチェーンが短縮される。

 わかりやすくたとえると、グーグルマップとワッツアップが統合されたようなもの。同じ地図を参照しながらチャットができる。

 南部ドイツで先日実施した「ドラゴンレディ」演習にて、試した。

 このシステムを使えば、偵察部隊は、未知の土地を、いままでの三倍のスピードで前進できる。
 分隊長の胸に、この通信システムは、縛着される。重い電池は背中で支える。電池は17時間以上、もつ。

 その土地の携帯電話の中継塔が、利用される。この場合、マップデータはクラウドでいい。
 もし既存の商用の中継塔が破壊されたりして使えなくなったときは、兵隊の端末が相互に中継局に化ける。
 それもうまくいかぬときは、各端末内にも最小限のマップデータがあるので、それとGPSを組み合わせる。


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 James Lariviere記者による2023-2-2記事「The Unchanging Nature of Russian Combat Methods」。
    記者は退役海兵隊少将。統合参謀本部で「戦略計画・政策立案」担当だった。

 『ジャーマン・リポート(GERMAN REPORT SERIES)』を知っているか?
 膨大な冊数の大部の報告書で、全巻の出版完結は1950年代までかかっている。

 WWII終了時、米陸軍の欧州コマンドと、米陸軍の軍事史センターが合同で、独軍の歴戦将校に、東部戦線のソ連軍について、インタビューしまくった。その貴重なまとめ資料である。

 もちろん米陸軍は、次の相手がソ連軍だと予想したから、下調べに励んだのだ。

 そのシリーズの1冊に『WWIIにおける露軍の戦闘メソッド』というのがある。
 この内容は、今日のウクライナでもまったくあてはまっているように思われる。連中は75年間、進化なんかしていなかったのだ。

 ロシア兵は、個人で考えることもできないし、判断することもできない。人間的なことは一切無視する。死すらも無視する。

 民間人がいてもまったく関係なくふつうに攻撃する。民間人被害についてなんら顧慮することがない。

 下級部隊がイニシアチブを発揮することは政治将校によって禁じられているので、相手軍のより小さな部隊のイニシアチブによって、してやられる。

 自軍の兵隊の命も、顧慮しない。未訓練兵を、支援を与えずに、戦闘に加入させてしまえる。

 1942まで独参謀総長だったフランツ・ハルダー大将の観察はするどい。
 ロシア兵は、森林や沼地の通過能力が、超人的だった。ところがソ連政府が、都市の工場に農民を集中させるようになった結果、かつてのロシア兵のその能力は、低下しつつある、と。

 ※1945の満洲侵攻のスピードとコースがいまだに未解明すぎると私は思っています。機械力があっても越えられない東部の湿地帯をどうやって歩兵が越えてきたのか? 燃料は空輸で届けたことはマリノフスキーが書いているが、鉄道が使えなかったはずなのにどうやって弾薬を補給したのか? 要するに関東軍が弱すぎたのか。それはともかく、ウクライナ政府がとっとと鉄道のゲージを西欧標準軌に改築しておいたなら、露軍参本はもっと侵攻をためらったはずだと思う。たかが鉄道じゃないのだ。

 今日のウクライナ戦線では、戦前ソ連軍の唯一の長所であった超人的な不整地浸透能力のかけらも見られない。ロシア住民の野生の能力は戦後、ロシア全土において、とっくに消失したのだ。ハルダーの予想は、当たった。

 ジャーマンリポートは指摘する。ソ連軍は偵察を1回しただけでどんどん深く進行してくる。追加偵察を省略する癖がある。だから火力ポケットに誘い込んで殲滅させやすい。
 ウクライナでも先遣の前衛が各所で全滅している。同じパターンだ。

 ジャーマンリポートいわく。ソ連軍砲兵は、砲撃目標を1箇所に絞ることがない。広い面積を、ひたすら、等しい密度で砲撃し続ける。
 そんなやりかたでもなんとかなかったわけは、WWIIの末期には、1km正面あたり、250門から300門の野砲と迫撃砲を並べられたからであった。

 ※今は下部条件の逆転により、ウクライナ軍がこの方式を採用できるのである。その条件は揃っているのに、最高指導部に愚か者が多いため、「戦車をくれ」だとか「F-16をくれ」だとか、迂遠な要求ばかりしているのである。プロはいないのかと思う。迫撃砲を増やすのが先だ。それはすぐに増やせるのだから。1kmに300門くらい、西側の工業力をもってすれば、わけはないのだ。そして露軍にはその同質対抗はもはや不可能なのだから。

 英国のシンクタンクは指摘する。「シャヘド136」を都市に対して漫然と突入させた2022-10月の流儀は、WWII中のソ連軍砲兵の流儀そのものだ。プライマリー・ターゲットを決めないで、漫然と、弾薬を射耗してしまうのだ。

 ジャーマンリポートいわく。ソ連戦車のドライバー教育は酷いレベル。窪地や反対斜面を縫って動くことを考えずに、操縦が楽そうに見える、高乾地や稜線を進もうとする。自殺行為である。

 今日の露軍はもっと酷い。戦車が、道路からほとんど離れたがらない。
 これでは、戦車の「数量」を自軍の強みに変換できない。防禦軍の火力によって戦車が漸減させられるばかりである。総数が多くても、意味がないのだ。

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 Boyko Nikolov 記者による2023-2-2記事「UK was left without 155mm serviceable self-propelled artillery」。
    英紙『デイリー・メイル』が伝えるところでは、英国は155ミリ自走榴弾砲の「AC90」を30両、ウクライナにくれてやることに決めており、その結果として、英国陸軍にはすぐに使える自走十五榴がなくなってしまうという。

 しかし英軍には考えがあり、これを装備一新の機会にするのだという。
 穴埋めには、韓国製の「K9」や、スウェーデン製の「アーチャー」を考えているらしい。

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 2023-2-2記事「Switzerland is considering the possibility of transferring tanks to Ukraine」。
   『ブルームバーグ』によると、スイス軍は300両の「レオパルト2A4」を「Pz87」の名で保有している。
 そのうち35両はドイツから輸入したが、残りはスイス国内でライセンス生産したものである。

 そして、山岳地帯のトンネルの中に、100両がモスボールされている。かれこれ10年も。

 ポーランド政府がこれに注目した。そしてリクエストした。
 スイスがポーランドにそれを委譲せよ。さすればポーランドから同量の別なAFVをウクライナへ与えられる、と。
 しかしスイス政府は断ったという。なにしろ連邦国家なので、いろいろな決定は、複数の議会や住民投票でいちいち賛成を得ないと、前に進まない。とても、そんなところに政治体力を注入できない。それが理由。

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 Defense Express の2023-2-2記事「Russia Transfers Iskander Missiles to Belarus Violating Two Fundamental International Agreements At Once」。
   ベラルーシの国防省は、ロシアから「イスカンデル」の弾道弾タイプと巡航ミサイルタイプの両方を受領したと画像付きで公表した。
 これはロシアが2つの国際取り決めを破ったことを意味する。

 ひとつはMTCR。300km以上飛ぶミサイルを、その国産技術を持っていない国に譲渡してはいけない。これは多国間協定。

 また、巡航ミサイル型のイスカンデルの委譲は、2019年の米露間の中距離ミサイル全廃条約違反である。

 そもそも「カリブル」「R-500」が、1989年の米ソINF条約違反なのだ。INF条約によって廃棄したはずのミサイルを、プーチンが条約を蹂躙して復活させたのである。

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 Defense Express の2023-2-2記事「How russians Offered to Repair Soviet “Varshavyanka” for Romania in Exchange For Grain, and What Came Out of This Story」。
   2022年にルーマニアはフランスのメーカーからスコルペン型の潜水艦を2隻、5億ユーロで買う契約を結んだ。たぶんもう1隻、追加で必要になるだろう。

 ルーマニア海軍は、1985年に調達したソ連製の古い潜水艦を1隻、捨てずにドライドックで保管している。それは1996年からいちども動かしていない。

 バッテリーが寿命で、充電できなくなっている。バッテリー交換費用は2000万ドル。ルーマニアの財務省は、そんなカネは出せんという。

 ロシアはこれに目をつけて、石油や穀物とひきかえにその動かない潜水艦『デルフィヌル』を売ってくれ、と呼びかけているそうだ。ルーマニア政府は、応ずるつもりはない。

 ちなみにクリミアのドックには『アルロサ』という潜水艦が、やはり、入れっ放し。修理もできずに8年間
放置されているという。

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 Tim Close 記者による2023-2-2記事「Australia must boost investment to ensure strategic fuel security」。
   豪州はエネルギー輸出国であるが、同時に、石油については、輸入にまったく依存している。
 これは国家安全保障上の大弱点だと、10年前ジョン・ブラックバーン空軍少将(退役)が指摘したものだ。

 いま、豪州には、有事に使える68日分のエネルギー備蓄がある。

 米空軍は、最近、ダーウィンに、航空燃料を3億リッター貯油する設備の建設に着手した。2億7000万ドルかける。