「これをやられたら厭だな」と思っていることを、敵よりも先手に実行しようとするのが、露人の習癖。

 ノルドストリームの水中爆破も、ウクライナ上空でのリフレクター付バルーン飛ばしも、この動物的習癖にもとづいている。
 NATO上層はあれだけ雁首を揃えていながら、敵のこんな基礎心理が分かってない。
 分かっていればただちに民間バルーン調達とウクライナからの放流に動いたはず。偏西風を変えられぬ以上、これこそ露側には「対抗不能」の手なんだから。

 ※カメラ付きバルーンで露軍陣地を上から覗いているかのようなAI合成動画……を、今のAIを使えば大量生産できるはずである。これは相当の心理的攪乱力になるはずだ。カネがなくても人材次第ですぐにできるはずのこういう仕掛けを演出できないでいるのは、要するに最上層の指揮官に見識が無い。軍人と政治家の頭が古すぎるんだろう。

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 Parth Satam 記者による2023-2-16記事「Ukraine ‘Nervous’ As Russia’s Energy Giant Gazprom Announces New Private Military ‘Staff Center’ To Protect Assets」。
    ガスプロムが、自社のパイプラインを警備するための「PMC(傭兵企業)」を設立しようとしている。その名も「スタッフ・センター」。

 ※ロシア国防省の西方軍管区の経理・調達担当の文官の長であったヤンキナ氏。2-15にサンクトペテルスブルグの高いビルの窓から転落して死んでいるのが発見された。

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 2023-2-16記事「Pantsir-S1 SAM in the Krasnodar region of the Russian Federation」。
   プーチンの隠れ家があるクラスノダールに近いスキー場に、パンツィリSAMが布陣。
 ガスプロムのツーリストセンターが運営する「ポリヤナ1389ホテル」。そこに通じるハイウェイ沿いがSAM陣地だという。

 プーチンは冬はよくそこでスキーをするそうだ。

 1月にパンツィリ-S1はモスクワ郊外「ルブレフスキー公路」の近くにも展開された。そこはロシアのエリート層の私邸が集中しているところだという。

 ※総攻撃の前に居所をくらますのか。

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 Howard Altman, Joseph Trevithick 記者による2023-2-15記事「Balloons Shot Down Over Ukraine Point To New Russian Tactics」。
   キーウ空域に、6個の、コーナーリフレクターを吊るした気球が漂ってきたので、すべて撃墜したとウクライナ軍は発表している。

 ※どう考えてもSAMの方が数百倍高額。SAMをタダで貰っているのをいいことにこんな目標相手に乱射されたんじゃ、援助している方はたまったものじゃない。

 気球の横幅は1.5mほどであった。

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 Zeyi Yang 記者による2023-2-15記事「Inside the ChatGPT race in China」。

  中共では複数の大資本が競ってチャットGPT開発に鎬を削っている。
 これを傍観していたら、米国は危うかった。

 Nvidia社製の「A100」や「H100」というGPUチップが対支向けに禁輸されただけでも、中共のチャットGPT開発には大打撃である。

 ※『スポーツイラストレイテド』誌が17人のライターをクビにした。AIが記事を書けるようになったので、スポーツ記者の必要がなくなりつつあるらしい。

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 Giedrius Pakalka and Alius Noreika 記者による2023-2-15記事「Altay main battle tank from Turkey ―― is it related to South Korean K2 Black Panther?」。
   トルコの「アルタイ」MBTは今年、戦列化する予定だ。

 外見はことなるが、韓国製の「K2」戦車の主用コンポーネントを流用している。

 主砲は120ミリ、55口径長の滑腔砲。K2の「CN08」という備砲をトルコがライセンス生産している。

 エンジンは1500馬力の「DV27K」。これは「ヒュンダイ・Doosan・インフラコア」社と、同じく韓国の「SNTダイナミクス」社が設計した。V形12気筒。
 その最新バッチを、トルコの「BMCパワー」社が、「BATUエンジン」の名で製造しているように見える。
 未確認情報では、BMC社は、1800馬力の「BATUエンジン」も供給可能だと。※できるわけねえだろ。

 BATUエンジンは、シリンダーの燃焼室容積が27.3リッター。
 クロスドライブトランスミッションは、前進6段、後進2段。やはりBMCパワーが製造するらしい。

 相違点。K2は自重が55トンだが、アルタイは外観からしてどうも65トンはある感じ。

 また、K2が乗員3名なのに、アルタイは4人乗りである。トルコ陸軍は、韓国製の自動装填装置を信用しなかったのだ。

 この結果、1分間の射撃速度で比較すると、K2戦車が10発なのに対し、アルタイは6発にとどまる。

 K2は理論上は1分間に15発は射てると宣伝している。

 しかし実戦場では自動装填装置が故障することはよくあり、その場合、K2はいざというときに1発も発射できなくなる。トルコ陸軍は、そこを軽視しなかった。

 アルタイの装甲について公式の発表は何もない。しかしルーモアがあり、それによると、現有の世界のあらゆるMBTよりも装甲を厚くしたそうである。

 エンジンが同じで、自重が10トンも違うなら、アルタイの機動力はK2より悪くなる。
 それを補償するために「1800馬力エンジン」などというフカシが飛び出すことになる。

 ※エンジン容積を変更しないでそう簡単に馬力をアップできるのならロシアも誰も苦労はしない。かりに出力を300馬力増やせたとして、こんどはトランスミッションの設計耐久限度を越える負荷がかかるから、急加速時にギアが壊れて立ち往生だろう。パワートレインをあらためて設計し直さねばならない。1年や2年でそれができてたまるものかい。

 K2の航続力は430kmと公表されている。アルタイは450kmだそうである。

 アルタイについては、カタール、サウジ、パキスタン軍なども購入に関心を示している。

 ※ウクライナ政府は全欧の自動車市場から中古のタンクローリーをありったけ調達しようとしている。大量のAFVを貰った場合、それを後方支援する部隊をどれだけぶあつくしなければならないか、ようやく気が付いたようだ。それでここへきて急に「レオ2」の整備数はちょっと減らそうという話になっている。キーウ政府の頭のレベルは、小学生かよ?

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 Defense Express の2023-2-13記事「Pakistan Will Help Ukraine’s Military to Send 10 Thousand BM-21 Grad MLRS Missiles At the Invaders」。
   パキスタンは10万発以上もの「BM-21」地対地ロケット弾をウクライナへ提供する。カラチ港から貨物船でドイツのエムデン港に揚げられ、そこから陸送でポーランド経由、納品される。

 ※この122㎜ロケット弾にたとえばイラン製のVT信管をつけたら、露兵にとってはかなりの脅威になるはず。こういう、後方支援を考えなくてもいいようなシンプルな兵器を、直感的に選び取れるようでないと、「武器援助外交」の指揮は執れません。戦車とか戦闘機とか、ガキじゃねえんだから……。

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 Defense Express の2023-2-14記事「How Much a Cartridge Costs: the Definitive Shattering of the Illusion About Small Arms Armament Price」。
   兵器のコスト。
 F-16は1機が1億5000万ドルというところ。
 レオ2は、1両が2736万ドル。

 高性能な歩兵戦闘車は1000万ドル。
 装輪式AFVは500万ドル。

 155ミリ砲弾は、普通弾だと1発が3300ユーロ。
 エクスカリバーだと1万3000ユーロ。

 AK/AKM小銃用の「7.62×39」㎜実包は、さいきんマケドニアの会社のATSグループが受注した例では、1発が0.36ユーロする。ただし出荷輸送代は含まれず。かつ、納品は2024年の第2四半期になる。 

 ウクライナの通貨である「フリヴニャ(UAH)」(いま3.63円)に換算すると、AKMの中味入り弾倉は420UAH。それを全自動なら3秒で撃ち尽くしてしまう。

 小銃用よりちょっと強力な「7.62mm×54R」実包(PK/PKM機関銃用)は、ポーランドの「AMMOGROM」社に発注すると、1発0.415ユーロで、キーウまで届けてくれる。

 NATO規格のタマである「7.62mm×51」実包は、狙撃銃用だと品質にうるさいことになり、それだけ高額。「ウクロプ」社で国産すれば、1発65UAHだという。チェコの「AKMグループCZ」に発注すると、1発2.4ユーロで、さらに高くつく。

 12.7ミリの狙撃銃である「バレット」が用いる「.50 BMG」実包は、1発が464UAHもする。ただし徹甲弾仕様。

 ※雑報によるとロシアは固定翼でVTOLの無人機を戦場に投入してきた。それを宇軍が撃墜したところ、艦載の76ミリ砲弾「OF-62」を改造した爆弾が吊るされていることがわかった。信管はPD(point detonating =着発)にしてあったという。 速い! 進化速度が、自衛隊の千倍速い。

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 ストラテジーペイジの2023-2-16記事。
     イラン西部にジャスクという港があり、そこからオマーン湾へ偽装船を出して、武器弾薬をイエメンゲリラまで届けている。

 1月にフランス軍艦が臨検した密輸船の中には過塩素酸アンモニウム70トンなどが隠されていた。これはロケット弾の推進薬の原料である。IRGC(イラン革命防衛隊)はフーシに原材料を与えて、現地で武器を製造させているのだ。

 ※沙漠ゲリラのフーシやヒズボラですら内製できる地対地ロケット弾を、どうしてウクライナの工場は量産できない?