Boyko Nikolov 記者による2023-4-20記事「Nizhny Tagil on the edge: Russia cannot catch up with tank losses」。
ロシア最大の戦車工場は、ニジニタギル市にある、「ウラル車両工場」である。
すくなくも過去1年以上、そこで製造している戦車は「T-90M Proriv」型だけである。
最近の月産数は、20両である。仮に、1年で250両になるとしておこうか。
クレムリンは、ロシアの軍需工業に対して、年に1600両の戦車を供給しろと命じている。
250と1600のあいだには、懸隔がある。
ウクライナ側の発表によれば、露軍は戦場で毎月、150両の各型の戦車を損耗しつつある。
昨年、ロシア政府は、「1日8時間労働」の制限を撤廃した。軍需工場は、労働者に、1日12時間でも14時間でも労働させられるようになった。夜勤シフトもありだ。
しかし、それで働きましょうという人がいない。ニジニタギル市は人口30万人である。
よその地域から人材を募集するしかない。
給料が高ければ、遠くからでも人は集められるだろう。ところがウラル車両工場が出す給料は、今次戦争開始以後、労働市場の相場より低いのである。
必然の結果として、工員の仕事の質は悪くなっている。低賃金で長時間労働しろと迫ってくる工場に労働者たちが応える方法は、自己防衛としての手抜きだろう。
ロシア政府は、ウラル車両工場に修理の仕事までさせると非効率だというので、AFV修理を専用にする小規模な新工場を、2箇所に設定しているところである。
じつはウラル車両工場は、民需用の鉄道車両の工場でもあって、それが大ジレンマを生むのである。電気機関車や無蓋貨車、地下鉄車両も、ウラル車両工場が製造しているのだ。いくらプーチンの命令でも、ロシア政府の経済部門の役人としては、鉄道車両の供給を止めさせるわけには絶対にいかない。ロシア経済は鉄道に極度に依存した経済構造だからだ。軍隊もまた、鉄道だけが頼りなのである。
もし鉄道車両の生産ペースを落とすようなことをすると、関係先のたくさんの大企業から、ウラル車両工場は裁判を起こされてしまう。賠償に直面するのだ。というか、昨年からすでに、違約金の支払いに追われているのである。特に大都市の地下鉄会社がうるさい。
1件の契約不履行が30万米ドルに満たないとしても、それが多数積もったらどうなるか? いつかは債務を弁済しなければならない。「倒産」の文字が経営者の脳裏にチカチカしているはずだ。
「BulgarianMilitary.com」は昨年から、ウラル車両工場が如何程のT-90Mを出荷するか、モニターしてきた。マスコミ・アナウンスは、しきりに、T-90が送り出されていると報道するが、けっしてその数量には言及しない。ふつう、戦車の「1バッチ」は20両だが、T-90のニュースの場合、それは3両くらいを意味している。
ロシアがこれまで何両の戦車を喪失したかの推定には、研究者によって幅がある。低い数値で1845両。高い数値で3511両。なかをとれば2670両だ。それを月で割ると、毎月222両。
※線路に無人機で磁気地雷を撒くことにより、機関車や貨車の車軸を損壊させて、ニジニタギルのボールベアリング不足を加速させてやることができるはず。気の利いた軍政家がNATO内にいれば、とうぜんそのような装備がとっくに準備されていたはず。とにかく気の利く人材が乏しい。気が利かないくせになんでも秘密にするから他者の知恵を借りられない。バッド・ループ。
次。
AFPの2023-4-21記事「Blast Rocks Russian City as Fighter Jet Loses Ammunition」。
ベルゴロド市内で火曜日の22時15分に大爆発が起き、クレーターが生じたが、その原因は、ロシア空軍のスホイ34が知らぬうちに爆弾を落としてしまったからだという。
次。
Defense Express の2023-4-21記事「What Fell on Belgorod: Video Shows How the russian Bunker Busters Work」。
ベルゴロド市街に誤って落としてしまった特殊爆弾は「BetAB-500ShP」という、ロケットで着速を倍化する徹甲爆弾で、頑丈なコンクリート天井を貫通してから爆発するモノ。
ほんらいは、もっと高いところからリリースし、重力加速も利用するのであるが、こんかいの事故は低空からのリリースだったので、浅く広いクレーターができた。
知られているスペック。厚さ55センチの強化コンクリート層を貫徹したのち、深さ3m弱のところで轟爆する。炸薬は45kgである。2020年に、スホイ34用として登場した。
次。
2023-4-20記事「Russian Soldier Jailed for 10 Years Over Revenge Shooting」。
セバストポリ軍法会議は、北コーカサスの少数民族出身の29歳の兵隊に禁錮10年を言い渡した。
2022-3、マリウポリの戦闘中にこの兵隊の弟(20)が死んだのは、小隊長だった曹長のせいだというので、曹長の頭に銃弾を撃ち込んだという。曹長は重傷。
判決では、この兵隊は曹長に対して40万ルーブルの治療費も支払わなければならない。
次。
Sakshi Tiwari 記者による2023-4-21記事「US Deployed RQ-170 Stealth UAV To Spy On Russian Military Positions In Crimea; Mirage-2000s Also Used For Covert Ops」。
リーク文書によると米軍はステルス無人機の「RQ-170 センチネル」を2022-9以降、すくなくも9ソーティ、クリミア上空に飛ばしているという。
次。
Howard Altman 記者による2023-4-20記事「Bizarre Plot To Steal Russian Jets Ends In Ukrainians Charged With Treason」。
ウクライナは今次戦争にさいして、装備を持って投降するロシア兵に褒賞金を与えることができる新法をつくっている。
これを適用して、ロシア空軍のパイロットがロシアを裏切り、ウクライナを空襲するとみせかけて亡命着陸し、その機体の褒賞金として1機につき100万ドルもらうという話が、じつは進行していたという。
なんとその機体には Tu-22M3 バックファイアーC も含まれていた。
ところが露軍のパイロットになりすましていたのはFSB職員であったという。