キンジャルがペトリオットによって空中破壊された。5月4日の未明02時40分、ハイパーソニック弾が実戦で初めて阻止された。

 Jakub Palowski 記者による2023-5-5記事「Western fighters for Ukraine? Air to Air Missiles are the Key」。
   ロシア空軍に詳しいジャスティン・ブロンク教授に対するインタビュー記事。

 しつもん。ウクライナ空軍には西側は何をくれてやるのがいいんですかね?

 教授:まず「長射程の空対空ミサイル」ありき――の話となります。機体の話はその次。ただし、AMRAAMかメテオールを運用できない機体は、論外です。

 宇軍が僅かな機数の西側製戦闘機を保有しても、それで地上戦は変わりません。しかしいっぽうで、もしロシア空軍が戦場上空の航空優勢を確立するようなことがあれば、たいへん面白くないことになる。「休戦」交渉が宇側に不利になります。そうはさせないようにしなくてはならない。

 一部のマニアが好きなA-10や、練習攻撃機の「ホーク」のような機体ではダメな理由はそこです。それらの機体は空対空戦力としてはカウントできないので。

 宇軍の飛行機が低空から及び腰でHARMを発射しても、露軍のS-300やS-400を破壊できないことは、もうわかったでしょう。

 また、ウクライナ空軍は、高性能戦闘機の出撃基地を、極限まで分散する必要もあります。敵は各種のミサイルを放って、ウクライナ領内のあらゆる飛行場を空爆できるからです。

 しつもん。ペトリオットの供与では何にもなりませんか?

 教授:数が問題です。ウクライナに与えられるペトリは数が限られる。それが相手にする標的も、よくよく選ばなくてはならない。

 それに、空中から発射される弾道ミサイルである「キンジャル」などは、ペトリの防空網を突破してくるでしょう。

 もっかのところ、敵はウクライナ領内の航空基地をハイパーソニック弾では攻撃していません。が、もし西側が高性能軍用機を供給したら、かならずその配備先の飛行場をめがけてハイパーソニック弾を集中してきますよ。

 これまで宇軍の戦闘機は、飛行場を転々と変えることで、生存できています。西側から供与するにしても、やはり、それと同じ運用が可能な機材でなくてはいけない。田舎の、設備の悪い、短い滑走路や道路上からでも運用できる戦闘機でなくては、ダメです。

 しつもん。するとオプションは何になるのですか?

 教授:巷間、言われているのはF-16とグリペンですよね。

 F-16は、近年、AMRAAMを発射できるようになったので、露空軍のあらゆる戦闘機と、視界外の遠距離からわたりあえる、有力オプションです。その場合、こっちは低空から発射しますので、敵のレーダーからは終始、見えません。ただし、AMRAAMにもバージョンがある。理想的には最新型の「AIM-120D」が米国から供給される必要があるんですよ。でも、その供給余裕や供給意思が、米国にはあるかどうか……。

 というのはですね、米軍戦闘機が中共戦闘機とわたりあう予定のAAMも、「AIM-120D」にほかなりません。とっておきの秘密兵器のようなものです。それを今、ウクライナへくれてやっては、米軍じしんの対支戦備にさしつかえる可能性があるわけです。

 AMRAAMの最新型を宇空軍に供給すれば、それはまず確実にロシア本土上空まで到達し、いくつかは外れて地上に落下します。ロシアはそれを回収し、性能を解析すると同時に、中共やイランにも現物をプレゼントして、技術情報を漏洩させるでしょう。米軍としてはこの点を重視しないわけにいきますまい。

 ロシア製のSAMは、まったく、あなどれません。たとい最新のステルス戦闘機でも、ロシア製SAMから撃たれない用心として、戦場では低空を飛ぶ必要があるし、そうなればますます、AAMとしても、最低でもAMRAAMクラスのレンジのポテンシャルがどうしても必要になるのです。さもないと空対空戦闘中のこっちの戦闘機がロシア製SAMに近づきすぎることになり、SAMにやられてしまうんですよ。

 ウクライナという戦場にかぎれば、短射程のドッグファイト用のAAMなどまったく無価値で、AMRAAMとその同格品――たとえば「メテオール」――だけが、空対空兵装として意味があるのです。その価値は「プライスレス」です。あるかないかで、天と地の差になる。

 初期型のAMRAAMは、高空から高速で発射することを前提にしていました。その前提が、今のウクライナ戦線では、ありえない。敵のS-400/300が、有効だからです。そうなると、低空から低速で発射しても遠くまで届いてくれる、AMRAAMの最新型だけが、使えるAAMだと言えるわけです。

 そのAAMは、自機よりも高いところを飛んでいる高速目標を捕捉する必要がある。空気の濃いところからスタートさせて、その空気抵抗を排除しつつ、重力にさからって高空まで駆け上る、超高性能のロケットモーターが不可欠です。そんな無理をしても、ある程度の射程は達成してくれるのが、AMRAAMの最新バージョン。

 ロシア軍戦闘機はR-77-1という中射程のAAMを運用します。同じモノをウクライナ空軍ももっている。しかし実戦場では、射程は3倍も、違ってくるんですよ。露軍機は、それを高空から高速で発射して、低空のこっちの戦闘機を狙う。こっちは、低空から低速で発射して、高空の敵機を狙わねばならない。その違いから、同じAAMでも、レンジは3倍、違ってしまうのです。それほどの不利を、こっちは克服しなければならない。それができるのは、AMRAAMの最新型しかありません。

 しつもん。グリペンは「メテオール」を運用できますよね?

 教授:グリペンはF-16より重い。ぎゃくに言うと、F-16は、軽すぎるのです。華奢に造られている。グリペンは、荒れた滑走路で乱暴に離発着させても壊れないように、重くなったのです。エアインテイクも、F-16のは、滑走路面上にデブリが存在することをまったく想定していません。

 F-16を運用するためには、航空基地に、複雑な支援設備が必要です。グリペンには、それは必要ありません。

 ウクライナ空軍は、開戦からこのかた、「ミグ29」と「スホイ27」を、全滅させずに、しぶとく運用し続けて来られています。この2機種も、粗末な滑走路で運用できる機体だからです。もし宇軍の装備機がF-16だったなら、いまごろ、1機も飛んでいないでしょう。ウクライナの田舎の飛行場からは、F-16を持続的に運用することは、不可能なのです。

 スウェーデン空軍の地上整備兵は、徴兵なんですよ。彼らはたったの3ヵ月しか整備教育を受けていないのに、グリペンをメンテできる。F-16だったなら、とてもそうはいきません。

 「メテオール」をウクライナに供給するためには、フランス、ドイツ、イタリー、スペイン、スウェーデン、英国がぜんぶそれを承認する必要があります。ただし、AMRAAMと違い、米国の承認は要らない。

 しつもん。グリペンは数が少ないじゃないですか?

 教授:少なさも、ちょうどいいんですよ。というのは、ウクライナ空軍の整備兵で、英語が分かって技術教養があるという人材のプールは、小さいからです。

 もしF-16が供給されるとした場合でも、機数は、2個スコードロン分くらいになるんじゃないでしょうか。
 タイムフレームを考えると、グリペンに決めた場合と、大差なくなるはずですよ。
 つまり、どちらにしても、ことしじゅうに戦力化するわけがないんですから。来年以降の話となります。

 しつもん。英国にできることはありますか?

 教授:こういう可能性は考えられましょう。RAFがもっているユーロファイターを、スペイン空軍に渡す。そしてスペイン空軍は、その保有機である「F/A-18 ホーネット」を、ウクライナ空軍に渡す。そんなトレードが。ホーネットはグリペンより古いですが、短い滑走路で運用できますのでね。整備も、F-16よりは容易です。ただしネックが……。それは、果たして米国政府が、最新バージョンのAMRAAMを、そのF-18用として、供給してくれるかどうか、です。そこは、誰にもわかりません。しかし、もしもAMRAAM抜きとなったら、F-18には何の意味もなくなります。

 念のため、申し添えましょう。もし米国政府が、最新バージョンのAMRAAMの対宇供与を渋ったとしても、それは非難されるべきじゃない。この最新ミサイルなしでは、米軍の対支戦争準備は、根底から揺らいでしまうのですからね。不発弾がロシアに拾われ、技術情報が中共へ漏洩した場合でも、米軍の優位は台無しです。そんなおそれが確実にある以上、「供与しない」という判断を米政府がしたとしても、誰も文句は言えません。

 次。
 Neil MacFarquhar and Anton Troianovski 記者による2023-5-6記事「Car Bombing Injures Prominent Russian Nationalist Writer, State Media Reports」。
    2014年のウクライナ切り取り工作作戦での活動歴があり、その体験をもとに《プーチン作戦よいしょ》の小説も書いて政府から表彰されているザハール・プリレピンは、モスクワでは有名人である。
 土曜日、彼の乗った「アウディ」のSUVに爆弾が仕掛けられ、雇われ運転手が即死。プリレピンは片足を粉砕された。命に別状は無い。
 現場は、ロシア本土のニジニノヴゴロド市。

 アウディはまっぷたつになり、車体前半部分はどこかに消し飛び、後半部分は裏返った。地面にはクレーター。
 ※こんなIEDをアマチュアが準備できるかっての。

 運転手は、やはりウクライナ従軍歴のある男だった由。

 プリレピン自身が数々のテロの黒幕になってきたとウクライナの公安局は見ていて、2017年に指名手配している。

 プーチンに気に入られたプリレピンは2021にロシア議会の議員に選ばれたが、すぐに辞めてしまった。プー之介の言うなりに、法案に賛成するだけの、超退屈で誰でもできる仕事だからだ。そんな数百人もの馬鹿議員とは俺は違うんだというプライドがあって、より高い役職を求めていた。

 「テレグラム」というSNSの中では、彼のフォロアーは30万人もいるそうである。

 彼の本性は反政府だ。2006年に書いている『サンキャ』という小説は、不満だらけのギャングのボスが、政府警察の機動隊と戦争するという内容だ。

 この小説が2013年に英訳されたとき、序文を寄せたのはナワリヌイである。したがってプリレピンが今、爆死したとしても、それでプーチンが腹を立てることはないであろう。

 ちなみにナワリヌイはこう持ち上げた。共産主義を知らない世代、そして、腐敗し切った現今のロシア経済システムには未来など無いと肌で感じているわれわれ世代の、代表選手の作家であると。

 ※このテロは、プリゴジンに向けて《いつでもお前なんか殺れるんだぞ》と釘を刺すための、ショイグ配下のGRUによる汚れ仕事ではないのか? プリゴジンによる糾弾ビデオの公開の後、露軍は、申し訳程度に、クラスター型焼夷弾の雨をバフムト市街に降らせた。それは《絵的》には派手なのだが、塹壕を守備しているウクライナ兵に対しては、ほぼ、何の効果も無い。すなわち「露軍にはほんとうに普通の砲弾が無い」のだという傍証が世界へ提出された形。ショイグはこのようにして、ワグネルからのリクエストにしぶしぶ、応えてみせた。と同時に、プリゴジン個人を脅迫しておかなければならないとも感じた。ロシアには、国家公安系機関が「ファルスフラッグ」を演出する多彩な伝統がある。プー之介自身が、FSBに都市部で爆弾テロをやらせて、「チェチェンの仕業だ」と叫び、自国の無辜市民の死体の上に、独裁権力を築いてきた鬼畜なのだ。

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 Sakshi Tiwari 記者による2023-5-6記事「Russia’s ‘On-Point Jamming’ Has Made Life Miserable For HIMARS, EW Attacks Cause It To Miss Its Target」。
    CNN報道によると、露軍はGPSスプーフィングの能力を向上させており、そのため宇軍のHIMARSが当たらなくなってきたという。終末誘導をGPS電波信号に依存する兵器だから、とうぜん、そこを逆手に取られるわけだ。

 先のリーク文書でも、露軍のGPS信号攪乱戦術によって、米軍が供与したJDAMが、ただの無誘導爆弾になってしまったという話が漏れていた。

 また露軍は、S-300によって、GMLRSを途中迎撃することが、しばしばあるという。
 ※これは価格的には同じくらいか? どちらにとっても持続不可能では?

 次。
 2023-5-6記事「Ukrainian air defense shoots down a Russian Kartograph UAV」。
    土曜日に宇軍のAA部隊は、めずらしいロシアの「マップ撮影用」無人機を撃墜した。
 場所は、ドニプロペトロウスク地区。

 1回の航過でパノラマ写真を撮影するために、多数の望遠レンズを腹の中に詰め込んでいる。またそれとは別にビデオ映像もリアルタイムで送信するようになっている。

 機体は「オルラン10」の一部流用かもしれぬ。

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 2023-5-5記事「Russia Restores Rail Traffic on Controversial Crimean Bridge」。
   クリミア大橋の鉄道線路の修復が完了したと金曜日にロシアがアナウンスした。昨年10月から修理にかかっていた。7ヶ月かかったわけだ。

 ※ここを追加でミサイル攻撃しないのも、スプーフィングが特濃だからか?

 次。
 Boyko Nikolov 記者による2023-5-5記事「MQ-9 drone ‘shot down’ by Su-27 recovered from seabed by Russians」。
    ロシアのツァーリグラードのネット報道によると、露軍は海中から「MQ-9 リーパー」の残骸を引き上げたそうである。

 ※なぜその作業を魚雷で妨害しない? 黒海における両軍の作戦は、謎すぎる。