下から見るとシルエットが似ている「TB2」とロシア製「コルサル」の識別点は、主脚が格納されているかどうか。「TB2」の主脚は、飛行中も出っ放しである。

 2023-5-7記事「Ukrainians are very happy with the old-fashioned M101 howitzers. Here is why」。
    M101は、1941年からある、米軍の牽引式105mm榴弾砲である。
 原型はさらに古い。

 第一次大戦中に、米軍は、複数のタイプのドイツ軍の105mm野戦榴弾砲を鹵獲した。

 それらを参考にして、米国内で1920年にこしらえてみたのが「M1920」で、それがのちに「M1」という105mm砲になった。

 そこからさらに小改良が蓄積され、「M2」の名での製造がスタートしたのが、1939年である。
 1941年にその砲架等が小改良されて「M1A1」となり、第二次大戦を通じておびただしく量産された。

 1962年に、米軍の火砲の命名法が整理され、「M1A1」の名称は「M101」にあらたまった。これが、今日でも、米海兵隊などでは愛用されているのである。

 米国内での「M101」の製造は、1953年に終了している。しかし韓国などでは今もライセンス生産が続いている。

 この砲についてウクライナ軍兵士は、こう評している。M101は、それぜんたいを、ふつうのトラックの荷台に載せて運べるので、超便利だ。信頼性も抜群で、1門が1000発以上も発射しても、特に問題が起きない。

 この大砲は射程を欲張っていないおかげで、夜間でも、砲口焔が敵の目を惹かない。発砲音も、そんなに遠くまでは届かぬ。昼間でも、発砲煙が敵方から発見され難い。
 戦場ではこうした特性が、砲兵の生残性を高めてくれる。敵にこっちの陣地の位置を気取られないことは、プライスレスにありがたい。

 ※この野砲は陸自でも絶賛されていた。各部が頑丈なので、もし敵の砲弾の爆発でひっくりかえっても、人力で起せばまた発砲できるのだと言っていた。陣地進入が人力で素早くできる野砲としてはこれが日本最大だったろう。つまりノリとして旧軍の「野・山砲」に近いところがあって、それが「日本軍の遺伝子」にはフィットしたのだと思う。あらためて、これ用の安価な「砲側員ロボット」を開発したら、現代に復活できるんじゃないか? 人手不足はのりこえられるし、「ランセット」も怖くなくなる。SPのようにシステムがインテグレートされてしまっていると、1発の特攻ドローンがどこかに当たっただけで全機能を喪失するが、牽引砲と砲側員、牽引トラクター車、指揮通信車、弾薬トレーラー車といった諸要素をわざとバラバラにしておけば、特攻ドローンが雨あられと降り注いでも、NBC環境下となっても、しぶとく戦闘を継続できる。これ、重要でしょ? ロボットにガスマスクは要らないんで……。既著にも書いたが、古い105㎜野砲をヘリで尖閣の任意の海岸に1門据えつけただけで、全島を十全に火制してしまえる。偶然にも、日本の離島戦争にあつらえむきのちょうどよさ、になっている。

 ※追加情報。英軍の105mm野砲である「L119」は、米軍の105mm砲弾「M1」をそのまま使える。豪州でも「L119」がライセンス生産された。英軍は「L119」を2005年で倉庫に仕舞った。豪州軍も、この大砲は第二線部隊用に格下げしている。しかしユーザーは今も多く、米軍も使っている。射程は、普通弾で11.4km、ロケットアシスト弾で17.5km。チューブ状の脚は開脚するようにみえるが、じつは開かない。構造機能としては「単箭」で、それなのに、大仰角で後退する砲尾にはぶつからぬ。大発明である(旧軍の「改造38式野砲」はこの発明に失敗したといえる)。しかも、1人の砲兵が人力で、この砲身を360度、旋回させられる。4名いれば、持続砲戦できるという。定員は6名だ。

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 2023-5-7記事「Military showed Western handgrenades collection」。
   ウクライナ軍が貰ったり鹵獲したりして使っている各種手榴弾をズラリと並べた映像が公表されている。

 なんか登山者用の湯沸しガスバーナー用のカセットボンベみたいな手榴弾があったら、それはロシア軍の「RG-60TB」である可能性がある。重さ240グラムで、燃料空気爆薬が詰まっている。すなわち、サーモバリック手榴弾だ。

 珍しいところでは、フィンランド製の「M/50」という破片手榴弾。50ミリの軽迫撃砲の弾丸に、フライオフレバーと信管をねじ込んで、手榴弾に改造したものだ。これをテーブルの上に立てて置けば、小さな花瓶のようにベース部が狭くて上縁が末広がりなので、見ているだけで不安になる。

 ※これからの「大消耗戦軍備競争」を考えるときに、この着眼は要注目だ。想像するといい。軽迫(もしくは擲弾筒)と、RPG弾頭と、手榴弾を、対人用に関してはぜんぶ基本要素を共通化してしまえたら? 町工場を総動員して大量生産させられるのである。このレベルなら、第三世界の工場でもじゅうぶんにそれが可能だ。径50ミリというのは、旧軍の重擲弾筒と同じだ。つまり旧日本軍の手榴弾とも同じだ。それが今でも通用するのである。またウクライナ軍は、82ミリ迫撃砲弾を、RPGに強引にとりつけて、無反動砲のようにして市街戦の近接直接支援火力としている。50ミリとか60ミリならば、もっと簡単だろう。「重擲」を現代の素材技術で再生させたら、緊急援助兵器として、こんな心強いものがあろうか? 研究すべし!

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 ウクライナ国防情報部の2023-5-7リポート。
  ロシア中央銀行が1万4000社を調査したところ、ロシア経済はもっか、1998年以来最悪の人手不足状態にあることが判明。

 直近の3年間で、ロシアの人口は200万人減少している。
 2022年には、ロシア国外へ130万人が逃散した。多くが高度教育を受けた専門職労働力である。
 ロシア逓信省いわく。2022年にロシアのIT系技能者の10%=10万人が、国外へ逃亡してしまった。

 これに、基礎人口減、社会の高齢化、そして軍隊への動員が重なっている。

 この労働力減少は、ロシア経済の潜在成長力を殺ぐ。またインフレをしのびよらせるであろう。

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 AFPの2023-5-4記事「Ukraine ‘realistic’ about not joining NATO during war: Zelensky」。
   木曜日にゼレンスキーはオランダ首相&ベルギー首相と会い、そのあとでヨーロッパ向けに語った。ロシアとの戦争中にNATOに加盟しようなんて思っちゃいませんよ、と。

 ※これでますますロシアとしては戦争状態を終らせるわけにいかなくなった。休戦すれば、ウクライナがNATOに加盟してしまうからである。

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 ストラテジーペイジの2023-5-7記事。
   ドイツ、スウェーデン、英国は、合計437両の「BV410」重連装軌車を発注した。これは「BvS10 ヴィーキング」の最新版で、全地形対応の補給車両である。もともとは、英ロイヤルマリンズがアフガニスタンで用いるために改良した。

 「ヴィーキング」は2005年から英軍に導入された。製造工場はスウェーデンにある。
 軽度に装甲されていて、自動小銃の弾丸くらいならボディで止められる。

 必要ならばさらに追加装甲を貼り付けることができ、その場合は14.5ミリ銃弾まで止められるという。
 IED/地雷から乗員を守る対策を特に講じたバージョンは「CATV」と呼ばれることもある。

 生物に関節があることをArticulateという。
 ここから、関節を有する、連結型のトラックやバスのことを「アーティキュレイテド」と呼ぶ。
 「BvS10」も、「アーティキュレイテド・ヴィークル」に属する。自重は14.2トン。荷物は5トン載せられる。その結合部によって、エンジン動力も操向動作も共有される。

 「前車」は重さ4.9トン。「後車」は3.1トン。
 唯一の不利は旋回半径で、15.2m必要である。

 「前車」には4人座れる。「後車」には8席ある。
 そのままで浮航できる。水上速力は毎時5km。
 陸上では65km/時まで出せる。

 装軌式の連結車両は、積雪シーズンが長く、湿地と山岳が重畳する、スウェーデンが最初に必要とした。
 接地圧はきょくたんに低く、おかげで普通の対戦車地雷の踏圧信管を反応させずに乗り越えることも可能なほど。

 「BvS10」および「BV410」は、オーストリーやフランスなどでも採用されている。先にウクライナにはオランダから28両の「BvS10」が寄付された。

 ※ここで雑学。スノーモビルを気温30度の夏に草地で走らせたらどうなるか? 英文ネットで調べてみたところ、低速ならオーバーヒートはしないが、車体各部は確実に傷むことになり、かつまた、そういうことをやる乗り手はつい高速を出してしまうものだから、けっきょくエンジンも壊れるという。空冷式であっても、ダメだそうだ(液冷式の場合、冬でもオーバーヒートすることがあるという。気の利いた製品は、液温82度になるとエンジンが自動停止するという)。おどろいたことに、どうやら夏冬兼用のスノーモビル型マシンは存在しないようである。えっ、なんで? 夏の保管方法も、納屋にほったらかしとかではダメで、じつに繊細な管理が必要なのである。これじゃ世界中の「非リゾート」の田舎地方では絶対に流行らんぞ。それにしてもどうも理解できぬこと。ここに有望なニッチ市場があるのに、なぜ誰も製品を開発しようとしない? オールシーズン使いまわせる、原付バイク並に軽量なモノトラック・ヴィークルを開発してくれよ! 北海道の冬の「お遣い」に使いたいから。