やっぱしタマ届いてないだよ、と、プリゴジン。

 誰も驚かん。誰も期待しとらん。自主撤退の話が一回伝わった時点で、前線兵士に、戦意のカケラももう残っているわけがない。

 だからワグネルの隣の露軍正規部隊も、勝手に持ち場を放棄したのだ。

 ちなみにプリゴジン用語で「突撃隊」とはワグネルを意味する。

 モスクワの5-9パレードには、T-34/85が戦車として唯一、1両だけ、参加した。それはどうでもいい。

 注目されたのは、戦車以外のAFVとしては、比較的に新型の6輪と4輪の装輪APC、それもMG銃塔装備型を複数両、行進させていたこと。
 その視覚効果が何を狙っていたかは明白だ。テレビを見ているロシア国民に対して、「都市で暴動を起そうとしても無駄だぞ。反乱鎮圧用の装甲車だけは、こうしてリザーブしているからな」と威圧しようとしたのだ。

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 The New Voice of Ukraine の2023-5-9記事「Russian guerrillas destroy Su-24 aircraft at aviation plant in Novosibirsk」。
    犯行声明が出された。
 シベリアのノヴォシビルスクにあるスホイ社の航空機製造工場。そこで1機の「スホイ24」が5月8日に焼失したが、これは「ゲリラ」のしわざであるという。

 『プラウダ』によると、ロシア軍占領区から、民間人の便衣に着替えて逃亡するロシア兵が相次いでおり、フェデロフはそれを取り締まるために、通行する《住民》のチェックを厳しくするつもりだと。

 クリミア半島に近いメリトポリ市からの露軍の退却の動きが特に急である。
 ザポリジア戦線が、動いている。

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 Juliusz Sabak 記者による2023-5-8記事「Russian Kh-47 Kinzhal Shot Down by Patriot」。
    キンジャルを空中で撃破したのは「PAC-3」だろう。

 ここで注意が必要なのは、キンジャルをロシアは「ハイパーソニック」と宣伝しているけれども、ロケットモーターが切れたあとは慣性落下するだけなので、レンジが伸びれば伸びるほど、空気抵抗に負けて、終速は遅くなる。したがって、ペトリで迎撃しやすくなってしまう道理。

 キンジャルの弾頭部材の実物が得られたことで、これからロシアの嘘がさらに暴かれるだろう。

 連中はキンジャルがマッハ10で飛翔するとかフカしていた。そのスピードで空気摩擦熱に耐え続けさせるには尋常でない構造の弾殻にする必要があるが、残骸を調べれば、どのていどの速度でどのくらいの時間を保たせるつもりで計画されているのか、はっきりするだろう。

 ※別記事によると、キンジャルの値段は10万ドルくらいではないかという。それに対してペトリ1発の値段は300万ドルから500万ドルするので、露側のミサイル在庫量次第では、ウクライナは苦しいことになる。

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 Sakshi Tiwari 記者による2023-5-9記事「Reserved To Obliterate ‘Significant Targets,’ Russia Hits Ukraine With ‘Kitchen Missile’ Causing Massive Damage」。
   先日、オデーサに落下したのは、露軍の「Kh-22」という、巨大な対艦ミサイルだ。
 米空母を攻撃するために冷戦時代に開発された。弾頭重量は1トンもあるので、ダムでもビルでも破壊できる。
 発射されると液体ロケットブースターを吹かし、いったん高度4万フィートまで昇り、そこから緩降下しつつ、水平距離600kmを飛翔。最高速度はマッハ3.5に達する。

 これを発射できるのは「ツポレフ22M3」で、マニュアルでは、母機をマッハ1.5まで加速させて、リリースするのだという。

 ※この古い弾薬を使い切らないうちは、バックファイアーを中共に売るわけにもいかないのだろうね。

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 The Maritime Executive の2023-5-9記事「Colombian Semi-Sub Smuggling Kingpin Sentenced to 20 Years」。
   半没の特殊密輸ボートで中米から北米海岸まで何度も往復に成功し、コカインを何十トンも密輸させることに貢献し、なかなか米コーストガードが逮捕できないでいたコロムビア人漁師が、このほど裁判所で、懲役20年と10ヶ月を言い渡された。逮捕されたのは2021-1である。

 ※米コーストガードは「セミ・サブ」(半潜航艇)の操縦手ではなく、製造職人を何人か身柄確保することに、もうすこし捜査資源を割くべきである。司法取引で放免してやる代わりに、新しいアイデンティティを与えて、ウクライナに移住させ、そこで、対露戦用の特攻自爆ボートを量産させるのが、罪ほろぼしだ。これ1隻に搭載できる爆薬量で、ケルチ大橋を幾度でも落橋させられるはずである。またクリミア軍港の機能を麻痺させることもたやすいから。

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 2023-5-9記事「Custom-made Ukrainian drones outperform commercial models in terms of efficiency」。
    NYT記事によるとウクライナ人の手作り無人機は、外国著名メーカーのラインナップ製品よりも最前線で活躍できていると。安い上に、有効なのである。

 民間人がガレージで3Dプリンターなどを駆使して改造する市販UAVは、1機が数百ドルから数千ドル。これで自由自在な攻撃ができてしまうのだ。

 かたや、それと比較して、米国供与の「スイッチブレード300」は、高額で複雑なシステムである。発射前に目標がハッキリと分かっているという場合には、それは有効な武器だが、臨機応変性という点では、ウクライナ人の手製のマルチコプター改造爆撃機/特攻機の方が、ずっと上だという。

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 Sofiia Syngaivska 記者による2023-5-9記事「Ukraine Purchases Drones from Peru Jointly Produced with China」。
    『ジェーンズ』が報ずるところでは、ウクライナ軍は、ペルーからUAVを買った。
 「CW-40D」という、固定翼&マルチコプターのハイブリッド偵察機。
 外観は、「TB2」を小さくしたような機体レイアウトだが、そこに4軸のVTOL用ローターが追加されている。だから離着陸はどこでもできる。

 買ったのは今年の1月であったが、ずっと秘密にしていたようだ。数量も非公表である。

 これは、本機のメーカーが純然たるペルー企業ではなくて、中共企業とのJVであることが、関係しているかもしれない。
 建前上、この機体をウクライナに輸出するには、中共政府の許可が必要だったはずである。その許可が出たのかどうかは、謎。

 単価は15万5000ドルほどだという。
 2.3m×4.6mの外寸で、最大離陸重量は45kg。
 エンジンは4ストロークのガソリン機関。
 最高速力は450km/時。
 13m以上の横風に耐える。
 上昇限度は6500m。
 滞空10時間可能。

 ※マルチコプターのローターを回すのは電動モーターだろう。ということはかなりの容量のバッテリーも搭載しているはず。それで垂直離陸すれば、いきなり大量の電力を消耗してしまう。その充電のために、よけいな燃料を喰う。この問題をどう改善するか? このくらいの重さだと手投げは無理だが、カタパルトを用意するというのも億劫だ。そこで提案だが、トラックの荷台に最初からミニクレーンが付いている「ユニック」のような民間車両の、そのクレーン・ブームを、うまく利用できないだろうか? 石器人の槍投げアシスト器具である「アトゥラトゥル」の要領で、加速させられはしないか? クレーンブームの先にもうひとつ、竹竿のようなエクステンデット・バーを、臨時に接続するのである。

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 Markus Garlauskas, Joseph Webster, and Emma C. Verges 記者による2023-5-8記事「China’s support may not be ‘lethal aid,’ but it’s vital to Russia’s aggression in Ukraine」。
    この3月に中共がロシアから輸入した原油の量は新記録になった。その増加の傾向は今後も続くだろう。

 この取引は、ロシアをものすごく助けている。
 というのも、もし中共が原油を買ってくれないと、ロシアの油井や精油所では、貯蔵タンクがたちまち満杯になってしまう。そうなると、油井での採掘そのものをストップしなければならない。これは容易ならざる事態で、後日に採掘を再開しようとする時に巨額の余計なコストを、掘削会社にかけるからである。

 石油とひきかえにロシアは中共から、「トラック」を大量に輸入している。
 これらのトラック類はデュアル・パーパスなので、外見が民間仕様でも、露軍の補給を支えるのに動員されている。

 特に伸びがいちじるしいのは「スーパー・ヘヴィ」クラスのトレーラートラクタートラックだ。2022-12時点で、輸入量はその1年前の11倍に爆増したという。この重輸送車で、露軍は装軌式のAFVを長距離運搬するのである。

 また、一国内にトラックがなくなってしまうと、それは経済のインフレを招く。中共が巨大トラックをどんどん輸出してくれるおかげで、ロシアの消費者物価は破滅的なインフレから免れられるのである。トラックなしでは、当局が物価統制しようとしても、無駄な努力だ。

 中共の通関統計によれば、2022年のメイドインチャイナの集積回路の対露輸出額は、1億7900万ドルになった。これは2021年の2倍以上。

 しかしこの数字は全容を示していない。2021年に中共はトルコへ7300万ドルの集積回路を輸出していたが、22年にはそれが1億2500万ドルに増えた。トルコにそれだけのチップを使う産業などない。これはロシアへの迂回輸出の増加――ほぼ1.5倍化――をあらわしているのである。

 迂回密輸に使われている国はトルコだけではあるまい。全容は闇に包まれている。

 『NYT』が報じたところでは、中共の70社に近いメーカーが、総計で26品目の「ドローン」を、2022-2-24以降にロシアに輸出しているという。

 ドローンの世界ではすでに軍用と民間用の区別の意味がなくなっている。業務用のクォッドコプターが、爆薬を投下、もしくは特攻自爆している。ペイロードに余裕のない、レジャー専用の超軽量ドローンは、そのままで、最前線の偵察監視任務に役立てられている。

 ようするに中共は、砲弾やミサイルを1発もロシアに供給しなくとも、すでに大々的にロシアの継戦能力を下支えしているのである。