サウジ空軍は「トーネイド」を「殲-10」でリプレイスするかもしれないという。

 Vijainder K Thakur 記者による2023-5-27記事「Storm Shadow Disappoints, Ukraine’s Counter-Offensive Sputters As Russian Jets Decimate Zelensky’s Troops」。
   ロシア空軍の手馴れた空襲流儀。デコイを飛ばしつつ、カミカゼドローンである「ゲラン2」(シャヘド)を工業エリア目標に向けて拡散的に放ち、同時に、空対地巡航ミサイルの「Kh-101」および艦対地巡航ミサイルの「カリブル」を使って特定施設をピンポイント攻撃。

 宇軍が放ったストームシャドウの確認戦果。
 2023-5-12に2発のストームシャドーがルハンスクの空軍学校に命中。数機の航空機も損壊させた。このときはデコイを飛ばすなどのSEADがうまく機能したという。宇軍による同ミサイルの初使用。

 5-14、2基のストームシャドウが同じルハンスクの空軍基地に着弾。

 5-26、複数のストームシャドウがマリウポリの弾薬貯蔵庫に命中。大爆発。

 この間、ロシア軍は、合計12基以上のストームシャドウを途中で叩き落したと主張している。

 宇軍の発射母機は「スホイ24MR」である。この機体に、ストームシャドウだけでなく「ADM-160」囮ミサイルも混載する。この囮ミサイルに露軍のSAMレーダーが反応すれば、そこに「ミグ29」からHARMを放つ。敵レーダーが沈黙したあとに、ストームシャドウが発射される。

 ADM-160は今次戦争にて、まだ使われたことがなかったので、露側は完全に釣られたようだ。

 今次戦争開戦時点で宇軍は10機の「スホイ24MR」を持っていた。そのうち4機はすでに失われている。
 プラットフォームがたった6機なので、せっかくのストームシャドウの使用頻度がやけにショボいわけである。景気の好い「反攻」を演出するには程遠いのだ。

 「スホイ24M」にストームシャドウをとりつけるために必要な機体改造は、ポーランド国内において、2022-11から開始されていた。英政府が公式に巡航ミサイルの対宇供給をアナウンスするのに半年先行していた。

 ただし全機がポーランドで改修されたのではなく、何機かはウクライナの技術者がウクライナ国内で改修した。

 ストームシャドウの戦果がパッとしないので、ウクライナの地上軍も、前進できないでいる。鳴り物入りで宣伝された「反対攻勢」は、長射程ミサイルにおける優勢を前提にしていた。しかし西側が、長射程ミサイルの供給をためらっているものだから、その前提条件が、いつまでもできないのである。

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 2023-5-27記事「Khrushch loitering munition was developed in Ukraine」。
   ロイタリングミュニションを手作りでどこまで安価に仕上げられるか。そのチャレンジがウクライナで続いているが、最新版が登場した。

 この新顔の「フルシュチ」攻撃システム は、固定翼自爆ドローンを、マルチコプターで上空まで持ち上げて、そこからリリースする。無人機から無人機を発進させるのだ。

 マルチコプターに吊るした状態で、地上の目標を捜す。敵目標が見つからないうちは、特攻機は切り離さない。
 敵目標を発見したら、ほどほどの距離までにじり寄って、そこから、特攻機をリリースする。

 こうすることで、チープな固定翼特攻機を、高性能な垂直離陸機として運用し得る自在性が生じ、しかも、特攻機の自前バッテリーは軽量化でき、その分、HEAT弾頭を大型化できる。無線信号はマルチコプター経由でよく通じるし、もし目標を発見できないときは、まったく安全に、母機も特攻機も回収して再使用できるのである。
 このシステム、無駄がない。

 特攻機の弾頭には、既存品の弾薬を使う。すなわち、82ミリ迫撃砲弾か、PG-7VL対戦車擲弾か、TBG-7Vサーモバリック擲弾を。

 「キャリアー・ドローン」は同時に、特攻の成否を見届ける戦果確認機にもなる。

 特攻機の機体部材もありあわせだ。樹脂フォーム、ベニヤ板、特殊フィルム(紙張り模型機の紙の代わり)、油砥石、塩ビ管。

 このシステム、発信地から敵目標までの距離が10km以内か、20km以内かで、弾頭を変更する。
 10kmタイプだと特攻機1機が1500ドル。20km型だと2000ドルだという。安い!

 ※宇軍の400ドルのクォッドコプターが、水平空中衝突戦法によって、露軍の「DJI Matrice 30」クォッドコプター(約1万ドル)を破壊するFPV動画が、SNSに出ている。「ESCADRONE」部隊による提供。

 ※地雷原に墜落した「オルラン-10」の残骸を回収するのに、宇軍が大型6軸マルチコプターの「DJI T30」から鉤付きロープを垂らして吊り上げてリトリーブしてきた動画がSNSに出ている。

 ※珍しい宇軍の改造兵器の動画。250cc.以上ありそうな自動二輪車の右サイドに、簡易な「荷台側車」をとりつけ、その1畳敷きくらいの簀板の上に「SPG-90」という無反動砲を、三脚架ごと乗せたもの。これに兵隊3名が無理やり乗って移動し、側車から卸さずに無反動砲を水平発射できる。地面が乾いたからこそ、こんなものが走れるわけだが、将来、60ミリ迫撃砲とその機動手段をコミで他国に援助しようと思った場合は、この方式でいいじゃないかと理解できた。ところで、さいきん学ぶことができたミニ知識。この「サイドカー」を、リアカーのような「2輪トレーラー」にして、オートバイで引っ張らせては、いかんのか? いかんのである。なぜかというと、牽引だと、不整地走行のさい、ぴょんぴょん跳ねてしまうのだ。側車方式ならば、この「過剰バウンス」を抑制できるのである。深かったぜ、側車!

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 『The Maritime Executive』の2023-5-25記事「Report: U.S. Navy Might Use Japanese Repair Yards for U.S. Warships」。
   駐日米国大使のエマニュエル氏は、化石燃料に対する民主党の一般的態度とは一線を画し、アラスカのLNGプラント事業を前進させてそれを日本の発電所が利用できるようにしてくれた。

 『ニッケイ・アジア』紙の報道によると、エマニュエルは、米海軍の艦艇を、日本国内の民間の造船所で修船できるようにしたいとも考えている。
 背景事情。米本土の修船ドックが施設の老朽化+人手不足で、米海軍が必要とする工事作業が遅れに遅れてしまっている。それは慢性的傾向で、このままではもっと悪くなる。とても、中共からの挑戦をいつでもうけて立てる「レディネス(備え万全)」だとは言い難い。それを解消したい。

 しかしこの構想を推し進めると米本土では政治的な大論争になるにちがいない。米国造船所はこれまで排他独占的に米海軍からのメンテナンス工事を受注できる慣行の上に胡坐をかいていたのだ。

 周知の事実だが、第七艦隊はこれまでも横須賀の日本の造船所と日本人工員から修理の支援をいろいろと得ている。
 だがエマニュエル構想はそんな限定的なものじゃない。

 日経の「もりやす・けん」記者によれば、エマニュエルは、米海軍は韓国やシンガポールやフィリピンのドックももっと利用できるようになるべきだと思っている。そうすることによりメンテナンスのボトルネックが解消される。

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 2023-5-27記事「Gripen flight training begins: Sweden agreed to instruct Ukrainian pilots」。
    これまでスウェーデン政府は、グリペンをくれというウクライナ空軍の要求を2度、斥けてきたのだが、いまや、複数のウクライナ人パイロットに、グリペンの操縦法を教えることに同意しているという。

 テレビ局のインタビューにスウェーデン国防大臣が答えた。
 シミュレーターだけでなく、実機操縦もさせるという。それがいつからかは非公表。場所も非公表。

 ※無償供与ではなく、多数国の醵金によって戦闘機を有償供与するビジネスの枠組みができたということか? それならばスウェーデンも乗れるわけか。